特定技能1号の「支援」とは|受入機関に課される義務
特定技能1号の在留資格で外国人を雇用する受入機関(特定技能所属機関)は、対象者が安定的かつ円滑に就労・生活できるよう、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、これを実施する義務を負います。支援は雇用契約の付随的なサービスではなく、在留資格制度の前提となる法的義務であり、適切に行われない場合は新たな受入れができなくなるなどの不利益につながります。
支援には、必ず実施しなければならない「義務的支援」と、任意で行う「任意的支援」があります。義務的支援は出入国在留管理庁が定める基準に沿って漏れなく実施する必要があり、その実施方法として「自社(受入機関)で行う」か「登録支援機関へ委託する」かを選択します。
支援を実施する体制が整っていることは、特定技能外国人を受け入れるための要件のひとつです。自社で体制を確保できない場合、登録支援機関への委託が現実的な選択肢になります。
義務的支援の10項目
義務的支援は、来日前から在留中・転職時まで生活全般をカバーします。代表的な10項目は次のとおりです。
- 事前ガイダンス(雇用条件・活動内容・入国手続等の説明)
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援(銀行口座開設、ライフライン契約等)
- 生活オリエンテーション(日本のルール、公共機関の利用、防災等)
- 公的手続等への同行・補助(住居地の届出、社会保障、税)
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応(理解できる言語での対応)
- 日本人との交流促進
- 転職支援(受入機関側の都合で雇用契約を解除する場合等)
- 定期的な面談・行政機関への通報(3か月に1回以上の面談等)
これらは「実施すればよい」というだけでなく、対象者が十分理解できる言語で提供すること、面談や報告を継続して記録することなど、運用面でも基準が定められています。
登録支援機関の役割・登録要件・義務
登録支援機関とは、受入機関から委託を受けて1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を担う機関で、出入国在留管理庁長官の登録を受けたものをいいます。登録の有効期間は5年で、期間満了前に更新が必要です。登録を受けた機関は、出入国在留管理庁のウェブサイトに登録支援機関登録簿として公表されます。
主な登録要件
- 支援責任者および支援担当者(1名以上)を選任していること
- 過去2年間に中長期在留者(就労資格)の受入れ実績がある、または外国人に対する相談業務に従事した経験があるなど、支援を適正に実施できる体制が認められること
- 支援の費用を、支援を受ける外国人本人に直接・間接に負担させないこと
- 入管法令・労働法令に関して一定の不正・不当行為がないこと(欠格事由に該当しないこと)
登録後の主な義務
- 支援計画に基づく義務的支援を適切に実施すること
- 支援状況の定期届出・随時届出を出入国在留管理庁長官へ行うこと
- 外国人が理解できる言語での相談対応体制を確保すること(中立的な立場での支援)
- 委託された支援業務をさらに別の機関へ再委託しないこと
登録支援機関は外国人本人から支援費用を徴収できません。費用は受入機関が負担する建付けであり、求人広告等で「外国人負担」とする運用は基準違反となるおそれがあります。
委託のメリット・デメリット
登録支援機関への委託は、社内に外国人支援の知見や多言語対応の体制がない企業にとって有力な選択肢です。一方で、コストや当事者意識の希薄化といった留意点もあります。
| 観点 | 委託のメリット | 委託のデメリット・留意点 |
|---|---|---|
| 体制 | 多言語対応・支援ノウハウを即時に確保できる | 現場と支援者が分離し、日常の変化を把握しにくい |
| コンプライアンス | 義務的支援の漏れや届出ミスを防ぎやすい | 委託先任せにすると受入機関側の管理が形骸化 |
| コスト | 専任担当者の採用・育成コストを抑えられる | 月額の委託費用が継続的に発生する |
| 立ち上げ | 初めての受入れでもスムーズに開始できる | 委託先の質によって支援水準にばらつき |
逆に自社実施は、費用を抑えられ現場との距離が近い反面、支援責任者・支援担当者の確保、多言語での相談対応、記録・届出の継続といった負担を自社で背負うことになります。
委託費用の相場|月額2〜3万円程度
出入国在留管理庁の調査によると、登録支援機関に支払う支援委託費用は、特定技能外国人1人あたり月額2〜3万円程度が一般的です。実際、月額3万円未満に収まるケースが大半を占めており、概ねこの水準が市場の中心帯となっています。
ただし、月額費用のほかに、事前ガイダンスや送迎、各種手続の同行など、スポットで発生する初期費用・実費が別途必要になる場合があります。契約前に「月額費用に何が含まれるか」「別料金となる項目は何か」を必ず確認してください。
費用は安さだけで判断せず、対応言語・対応時間・トラブル時の体制まで含めた総合的なコストパフォーマンスで比較することが重要です。極端に低額な場合、義務的支援の一部が別料金になっていないかを確認しましょう。
全部委託で「支援基準を満たす」とみなされる|ただし受入機関の責任は残る
特定技能制度では、受入機関が支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合、その受入機関は支援体制に関する基準に適合しているものとみなされます。これにより、自社に専任の支援体制がなくても特定技能外国人を受け入れられるしくみになっています。
もっとも、「みなされる」のはあくまで支援体制の基準についてです。委託したからといって、受入機関自身の義務や責任がすべて消えるわけではありません。雇用契約の適正な履行、報酬の支払い、各種届出(受入れ・契約変更・支援状況等に関するもの)、関係法令の遵守といった受入機関本来の責任は引き続き受入機関に残ります。
全部委託は「丸投げで責任ゼロ」ではありません。登録支援機関が適切に支援を実施しているかを受入機関がモニタリングし、問題があれば是正する立場にある点を理解しておく必要があります。委託先の不適切な運用が、受入機関の受入れ可否に影響することもあります。
登録支援機関の選び方|契約前のチェックポイント
登録支援機関は多数存在し、対応分野・言語・サービス範囲に差があります。次の観点で比較・確認することをおすすめします。
- 登録の有無と実績:出入国在留管理庁の登録支援機関登録簿に掲載されているか、受入れ・支援の実績があるか
- 対応言語:受け入れる外国人の母国語に対応できるか(相談・苦情対応は理解できる言語で行う必要がある)
- 対応分野・地域:自社の業種・所在地に対応できるか
- サービス範囲と費用の内訳:月額費用に含まれる支援項目、別料金となる項目が明確か
- 緊急時・トラブル時の体制:夜間・休日の連絡体制、転職支援や行政対応の経験
- 届出・報告の運用:定期届出・随時届出を適切に履行しているか
支援委託契約で明確にしておくこと
委託にあたっては、受入機関と登録支援機関の間で支援委託契約を締結します。契約では、委託する支援の範囲(全部か一部か)、費用と支払条件、報告・記録の方法、契約期間と解約条件、責任分担などを明確に定めておくことがトラブル防止につながります。
ビザ・在留手続と登録支援はグループの行政書士法人Treeが担当
特定技能の受入れでは、支援の実施だけでなく、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更・更新といった出入国在留管理庁への申請手続が伴います。
これらのビザ申請・在留手続の取次・代理や登録支援に関する行政書士業務は、TreeGlobalPartners(TGP)の業務ではなく、グループの行政書士法人Treeが担当します。受入機関の体制づくりや人材活用に関するご相談はTGPが、在留手続や登録支援は行政書士法人Treeが、それぞれの役割に応じて連携して対応します。
「自社実施か委託か」の判断は、受入予定人数、対応言語、社内体制、コストを総合的に踏まえて行うのが現実的です。初めての受入れや少人数の段階では委託、体制が整った段階で一部内製化、といった段階的な設計も検討できます。
よくある質問
まとめ
- 特定技能1号の受入機関には、義務的支援10項目を含む支援計画の実施義務がある
- 支援は自社(受入機関)実施か、登録支援機関への委託かを選択できる
- 登録支援機関は出入国在留管理庁長官の登録を受けた機関で、支援責任者・支援担当者の選任や外国人本人に費用を負担させないことなどの要件・義務がある
- 委託費用の相場は、出入国在留管理庁の調査で1人あたり月額2〜3万円程度が一般的
- 支援計画の全部を委託すると支援体制の基準に適合するとみなされるが、受入機関自身の義務・責任は残る
- ビザ・在留手続や登録支援はTGPではなく、グループの行政書士法人Treeが担当する
本記事は2026年6月時点の出入国在留管理庁の公表情報等に基づく一般的な解説であり、個別事案の結論を保証するものではありません。特定技能制度の運用や費用水準は変更される可能性があるため、申請・委託の際は現時点の最新情報を出入国在留管理庁の公式情報でご確認のうえ、必要に応じて行政書士法人Treeへご相談ください。