特定技能の受入見込数とは|「枠の上限」の意味
特定技能制度は2018年12月に成立した改正入管法に基づき2019年4月に創設された在留資格であり、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を持つ外国人を即戦力として受け入れる仕組みです。この制度には、無制限に外国人を受け入れるわけではなく、分野ごとに「受入見込数」という上限が設定されているという重要な特徴があります。
受入見込数は、分野ごとの人手不足や国内人材確保の取組等を踏まえて設定される、特定技能1号の在留者数の上限です。現行の見込数は2028年度末(2029年3月末)までのものです。現在の在留者数に追加して受け入れる人数でも、個々の企業への人数割当でもありません。根拠:入管FAQ Q15。
受入見込数は分野全体の上限であり、そのまま「これから採用できる残り人数」を示す数字ではありません。現在の在留者数との差だけで、自社が採用できる人数や許可時期を確約することもできません。企業は上限と在留者数を別々に確認したうえで、採用候補者に適用される申請類型の審査状況を確認してください。
制度全体の受入見込数(2028年度末まで80万5,700人)
2024年3月の設定では、2024年4月から5年間の特定技能1号の受入見込数が合計82万人とされました。その後、2026年1月23日の閣議決定で見直され、現行の2028年度末までの受入見込数は80万5,700人です。入管の現行FAQ Q15は、育成就労42万6,200人と合わせた約123万人が「在留者数の総計」で、現在の在留者数への追加人数ではないと明示しています。旧設定の「5年間」と、現在の在留者数の見込値を混同しないでください。
80万5,700人は19分野の見込数を合計した数で、どの分野でも自由に使える共通枠ではありません。上限に近い分野とそうでない分野があり、申請類型ごとの取扱いも異なります。企業の採用計画では、自社の分野と候補者に適用される審査状況を確認してください。
対象分野の拡大経緯|2024年の4分野追加と2026年の新3分野
特定技能1号の対象分野は、制度創設以降、段階的に拡大されてきました。受入見込数を理解するうえで、まず「どの分野が対象なのか」「いつ追加されたのか」を正確に押さえておく必要があります。
2024年4月の4分野追加
特定技能制度は2019年の開始当初は14分野で、2022年に製造業3分野が統合されて12分野に再編されました。その後、2024年3月の閣議決定により、同年4月以降、自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が追加されて16分野に拡大しました。さらに2026年1月23日の閣議決定で、リネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加され、現在は19分野です。2024年4月に追加されたのは以下の分野です。
あわせて、既存分野においても従事できる業務区分の追加(製造業分野への業務拡大など)が行われ、受け入れられる業務の範囲が広がりました。物流の2024年問題に対応する自動車運送業(トラック・バス・タクシー運転手)の追加は、運送業界から大きな注目を集めました。
2026年1月閣議決定の3分野追加(リネンサプライ・物流倉庫・資源循環)
特定技能1号は制度上19分野ですが、分野追加の決定と実際の受入れ開始は別です。リネンサプライでは2026年6月1日から在留資格申請が可能になりました。一方、物流倉庫は国土交通省の2026年9月時点の公表で技能評価試験の開始時期が未定、協議会も設置調整中です。新3分野を一括して「2027年から」と扱わず、採用する分野の試験・協議会・申請要件を個別に確認してください。 根拠:厚生労働省のリネンサプライ分野案内、国土交通省の物流倉庫分野案内。
新規に追加された分野は、評価試験の実施体制や分野別の受入見込数の運用が整備途上であることが少なくありません。「対象分野になった=すぐに大量採用できる」とは限らないため、試験の実施時期・受験地・受入数の枠の状況を所管省庁・業所管団体で確認したうえで計画を立てることが重要です。
支援費用は、行政書士法人Treeの現行料金・サービス内容に沿って確認します。月額9,800円(税抜)の基本支援と、義務的支援10項目のオプション見積もりは区別してください。自社で実施する支援と委託する支援を整理し、必要な支援がすべて実施できる契約内容を確認してから依頼できます。
分野別の受入見込数と充足状況
下表は入管の分野別受入見込数・在留者数の公式表から主要8分野を抜粋しています。受入見込数は2026年1月23日設定の2028年度末までの数、在留者数は2026年6月末時点の速報値です。この2つを足したり、差だけで採用できる人数を確約したりしないようにしてください。
| 分野 | 2028年度末までの受入見込数(人) | 2026年6月末の在留者数(人・速報) |
|---|---|---|
| 介護 | 126,900 | 79,884 |
| 飲食料品製造業 | 133,500 | 100,769 |
| 外食業 | 50,000 | 49,060 |
| 建設 | 76,000 | 52,132 |
| 農業 | 73,300 | 44,050 |
| 工業製品製造業 | 199,500 | 62,033 |
| 自動車運送業 | 22,100 | 558 |
| 宿泊 | 14,800 | 2,556 |
表のとおり、製造業や飲食料品製造業のように10万人を超える大きな枠を持つ分野がある一方で、外食業や宿泊のように相対的に枠が小さい分野もあります。枠が小さい分野は、産業全体の人気が高いと早期に上限へ到達しやすく、受入れの調整(新規停止など)が生じやすい構造にあります。
受入見込数は上限で、実際の在留者数とは異なります。在留者数は採用計画の参考になりますが、申請受付済みの案件や審査方針なども関わるため、単純な差し引きだけで「残り枠」を判定しないことが大切です。外食業のように、変更・更新・認定の申請類型で取扱いが異なる場合は、入管の審査状況も併せて確認します。
外食業の受入停止が示す「枠の壁」
受入見込数が採用に直接影響した代表例が、外食業分野です。外食業は特定技能の中でも人気が高く、留学生からの移行や技能実習を経ない直接の受入れも多いことから、受入れが急速に進みました。その結果、在留者数が2026年2月末時点で約4万6千人に達し、同年5月頃に受入見込数(上限5万人)を超える見込みとなったことから、農林水産省・出入国在留管理庁は2026年4月13日以降、特定技能1号の在留資格認定証明書の交付を一時的に停止する措置を公表しました。
これは「枠の壁」が現実に企業の採用を止めうることを示す象徴的なケースです。これから採用を始めようとした企業が、いざ申請しようとした段階で「この分野は受入見込数に達したため新規受入れを停止しています」と告げられる——こうした事態は、枠の小さい人気分野ではいつでも起こりうるリスクです。
受入停止が起きても採用が完全に止まるわけではない
ただし、受入見込数への到達による停止は、すべての手続きを止めるものではありません。一般に、以下の点を理解しておくと冷静に対応できます。
- 認定・変更・更新の区別:申請の受付と、証明書の交付・許可は別です。外食業では申請類型と受付日ごとの審査状況が公表されています。
- 在留資格変更・更新:外食業分野のように上限運用が開始された分野では、在留資格変更許可申請も原則として不許可となる場合があります。一方、すでに同分野の特定技能1号で在留している方の転職や在留期間更新など、一定の例外的に継続可能な手続きがあります。
- 再開の可能性:停止は恒久ではなく、上限の見直しや次期計画への切り替え、他分野との調整によって再開されうる。
枠の小さい人気分野では、受入見込数の充足によって採用機会が突然閉ざされることがあります。採用ニーズが固まっているなら、枠が逼迫する前に手続きに着手する、あるいは技能実習からの移行ルートを並行確保するなど、複線的な調達計画を持っておくことがリスク回避につながります。
建設分野の特殊性|有料職業紹介とJAC
受入見込数の話とあわせて、建設分野には特有の制度があることを必ず理解しておく必要があります。建設分野では、特定技能外国人について有料職業紹介(民間の人材紹介会社による有料での職業あっせん)を利用することができません。これは建設労働者の雇用の安定を図る建設労働者雇用改善法等の趣旨に基づくもので、他分野との大きな違いです。
建設現場の建設業務は、一般の有料職業紹介事業の取扱対象外です。TreeGlobalPartnersは建設業務への有料職業紹介を行いません。自社募集やJACの無料職業紹介など適法な採用方法を検討してください。JACへの加入等の受入れ要件と、JACから人材の紹介を受けるかどうかは別の論点です。登録支援・在留資格申請は行政書士法人Treeが担当します。 厚生労働省:建設業務の有料職業紹介の取扱いをご確認ください。
TreeGlobalPartnersは建設業務への有料職業紹介を行いません。自社募集やJACの無料紹介などの採用方法と、受入計画・CCUS登録・在留資格申請などの手続きを分けて整理します。受入れに関する手続き・登録支援は行政書士法人Treeの担当範囲と対応内容を確認のうえご相談いただけます。
建設分野の受入見込数と分野固有要件
建設分野は受入見込数も大きく、人手不足が極めて深刻な分野の一つです。一方で、報酬を月給制とすること、CCUSへの登録、JACが定める行動規範の遵守など、他分野にはない分野固有要件が課されています。これらを満たさないと受入れ自体が認められないため、建設分野での採用は「枠の有無」だけでなく「固有要件を満たせるか」の両面で検討する必要があります。
育成就労制度(2027年施行)と受入見込数
受入見込数の今後を左右する最大の制度変更が、技能実習制度に代わって創設される育成就労制度です。育成就労制度は2024年6月に関連法が成立し、施行期日を定める政令により2027年4月1日の施行が正式に決定しています。これは「人材育成と人材確保」を目的とし、原則3年間の育成を通じて特定技能1号の水準まで人材を育てることを前提とした制度です。
技能実習からのパイプライン強化
従来の技能実習は「国際貢献・技能移転」を建前とし、特定技能への移行は結果的なルートでした。育成就労では、当初から特定技能1号への移行を見据えた育成が制度の目的に据えられます。これにより、育成就労から特定技能1号への移行が制度的に円滑になり、特定技能の受入れ総数の押し上げ要因になると見込まれます。
受入分野で就労しながら技能・日本語を育成。特定技能1号の水準到達を目標とする。
評価試験・日本語要件を満たして1号へ。ここで分野別の受入見込数の枠を消費する。
対象分野で熟練技能を満たせば2号へ。在留期間の上限がなくなり長期定着が可能に。
採用計画の観点では、育成就労・特定技能1号・特定技能2号を「一連の人材パイプライン」として設計する発想が不可欠になります。育成就労からの供給が増えれば、特定技能1号の受入見込数の消費ペースも速まります。とくに人気分野では、育成就労からの移行組と直接受入組が同じ枠を取り合う構図になりうるため、早めの計画づくりが重要です。
育成就労制度の細目(対象分野・転籍の要件・日本語要件など)は政省令やガイドラインで順次具体化されます。2026〜2027年は技能実習から育成就労への移行期にあたり、実務運用が固まりきらない場面が想定されます。最新の制度情報を確認しながら、柔軟に計画を見直せる体制を整えておくことをおすすめします。
受入見込数を採用計画に活かす実務
受入見込数という制度上の上限を、単なる知識で終わらせず、自社の採用計画に落とし込むことが企業にとっての本題です。ここでは、枠の動向を踏まえた実務の進め方を整理します。
所管省庁・出入国在留管理庁の公表資料で、自社が属する分野の受入見込数・在留者数・申請類型ごとの審査状況を別々に確認する。
海外からの新規呼び寄せ、国内在住者の移行、技能実習・育成就労からの移行など、複数ルートを並行確保する。
試験合格・申請・審査期間を逆算し、枠が逼迫する前に手続きに着手できるよう前倒しで計画する。
「いつ・どの分野で・何人」を年度計画に落とす
受入見込数は5年単位の上限ですが、実際の充足ペースは年度によって変動します。採用計画では、自社の業務区分が属する分野を正確に特定したうえで、「今年度は何人を、どのルートで採るか」を具体化することが重要です。とくに枠の小さい分野では、年度後半になると新規受入れが絞られるリスクがあるため、年度前半での着手が有利に働く場合があります。
業務区分の確認を怠らない
受入見込数は分野単位で管理されますが、同じ分野の中にも複数の業務区分があり、自社の従事させたい業務がどの区分に該当するかで、必要な評価試験や受入要件が変わります。「分野は対象だが、自社の業務が想定する区分に含まれていなかった」という取り違えは実務でよく起こります。採用に着手する前に、所管省庁の運用要領で業務区分を確認しておきましょう。
分野追加・枠の見直し・受入停止・育成就労への移行と、特定技能を取り巻く制度は短期間で動いています。自社だけで最新動向を追い続けるのは負担が大きいため、人材紹介・登録支援・ビザ申請を一体で相談できるパートナーを持つことが、機会を逃さない採用の近道になります。
枠の動向を踏まえた採用戦略の立て方
最後に、受入見込数の動向を踏まえて企業がとるべき採用戦略を、登録支援機関・受入企業・人事担当者の立場ごとに整理します。
受入企業(経営者・人事)の視点
自社の人手不足が長期的に続くと見込まれるなら、枠が逼迫しやすい人気分野ほど「早く動く」ことが合理的です。採用が制度の壁で止まると事業計画に直接響くため、受入見込数の充足状況をモニタリングし、枠に余裕のあるうちに在留資格の確保を進める判断が求められます。あわせて、採用後の定着(特定技能2号への移行や登録支援)まで見据えた設計を行うことで、限られた枠で採った人材を最大限に活かせます。
登録支援機関の視点
登録支援機関は、受入企業に対して分野別の枠の状況を正確に伝え、現実的な受入計画を共に描く役割を担います。受入見込数の停止・再開は支援対象者の在留に直結するため、最新の運用情報をキャッチアップし、企業へ適時にアラートを出せる体制が信頼につながります。
外国人求人を出す企業の視点
求人を設計する段階で、募集する職種が特定技能のどの分野・業務区分に該当し、その分野の枠に余裕があるかを確認しておくことで、「採用したのに在留資格が取れない」というミスマッチを防げます。求人票の段階から制度要件を織り込むことが、採用効率の向上につながります。
TreeGlobalPartnersは国内在留人材の有料職業紹介を担い、行政書士法人Treeが登録支援・在留資格申請を担当します。受入見込数だけで採用可否を決めず、候補者の在留資格・希望業務・申請類型から確認します。建設業務への有料職業紹介は行いません。
よくある質問
まとめ
特定技能の受入見込数は、分野ごとに設定された受入れの上限であり、企業の採用可否を実際に左右する重要指標です。本記事の要点を改めて整理します。
- 制度全体の枠:現行は2028年度末までの在留者数の見込値80万5,700人。現在の在留者数への追加人数ではなく、分野ごとに上限・審査状況を確認する。
- 分野の拡大:2024年4月に自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が追加され16分野に拡大し、2026年1月の閣議決定でリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加され、特定産業分野は19分野となった。
- 枠の壁:外食業は上限を超える見込みから2026年4月13日に認定証明書の一時的な交付停止措置が開始。人気分野は枠が早期に埋まるため、複線的な調達計画が有効。
- 建設分野:有料職業紹介は不可。自社募集やJACの無料紹介などの採用方法と、JAC加入・CCUS登録などの受入要件を区別する。
- 育成就労(2027年4月):技能実習に代わる新制度で、特定技能1号への移行を前提に設計。枠の消費ペースに影響する。
受入見込数は固定的なものではなく、分野追加・上限見直し・受入停止・育成就労への移行といった制度変化の中で動き続けています。「今、自社の分野で何人採れるのか」を正確に把握し、枠が逼迫する前に動くことが、外国人採用を成功させる鍵です。分野別の受入状況の確認から在留資格申請まで、ご不明な点があればTreeGlobalPartnersまでお気軽にご相談ください。
本記事の情報は2026年6月時点の出入国在留管理庁および各分野所管省庁の公開情報に基づいています。記載の受入見込数は閣議決定に基づく上限の目安であり、運用上の見直しにより変更される場合があります。分野別の最新の受入状況・停止状況、業務区分・分野固有要件は必ず公式情報をご確認ください。ビザ申請・在留資格に関する個別案件は、グループ内の行政書士法人Treeまでお問い合わせください。