特定技能の受入見込数を分野別に解説
枠上限と充足状況

特定技能制度には分野ごとに「受入見込数」という上限が設けられています。枠が埋まれば新規受入れが一時停止されることもあり、採用計画に直結する重要指標です。最新の制度改正と分野別の充足状況を踏まえ、企業が今どう動くべきかを実務目線で解説します。

特定技能の受入見込数とは|「枠の上限」の意味

特定技能制度は2018年12月に成立した改正入管法に基づき2019年4月に創設された在留資格であり、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を持つ外国人を即戦力として受け入れる仕組みです。この制度には、無制限に外国人を受け入れるわけではなく、分野ごとに「受入見込数」という上限が設定されているという重要な特徴があります。

受入見込数とは、各分野の所管省庁が人手不足の状況や国内人材確保の取り組みを踏まえて算定する、一定期間(おおむね5年間)における特定技能外国人の受入れ上限人数のことです。これは個々の企業に割り当てられる枠ではなく、分野全体の総量を管理するための「運用上のキャップ」として機能します。分野全体の受入数がこの見込数に達すると、その分野では新規の受入れが一時的に停止されることがあります。

▶ ポイント:受入見込数は「合計の上限」かつ「採用計画の前提」

受入見込数は、その分野でこれから何人受け入れられるかという「残り枠」を示す指標でもあります。人気分野では枠が早く埋まり、新規受入れが絞られることがあるため、自社が属する分野の充足状況を把握しておくことは、採用の可否・時期を見極めるうえで欠かせません。

制度全体の受入見込数(5年間で約80.6万人)

政府は2024年度から始まる5年間(2024年度〜2028年度)の特定技能1号の受入見込数を、2024年3月の閣議決定で全分野合計82万人と設定しました。その後、2026年1月23日の閣議決定で受入見込数が再設定され、特定技能1号は約80.6万人(80万5,700人)に見直されています。これは制度開始当初(2019年からの5年間)の上限である約34.5万人から大幅に拡大した数字であり、人手不足の深刻化と制度の定着を背景に、政府が外国人材の受入れを一段と拡大する方針を明確にしたことを意味します。

この総枠(約80.6万人)は、後述する分野別の見込数を積み上げたものです。各分野はこの上限の範囲内で受入れを進め、上限に近づいた分野は受入れの調整局面に入ります。企業にとっては「制度全体としては枠が拡大している」という追い風がある一方で、「分野によっては枠が逼迫している」という現実の両面を理解することが重要です。

対象分野の拡大経緯|2024年の4分野追加と2026年の新3分野

特定技能1号の対象分野は、制度創設以降、段階的に拡大されてきました。受入見込数を理解するうえで、まず「どの分野が対象なのか」「いつ追加されたのか」を正確に押さえておく必要があります。

2024年4月の4分野追加

特定技能制度は2019年の開始当初は14分野で、2022年に製造業3分野が統合されて12分野に再編されました。その後、2024年3月の閣議決定により、同年4月以降、自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が追加されて16分野に拡大しました。さらに2026年1月23日の閣議決定で、リネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加され、現在は19分野です。2024年4月に追加されたのは以下の分野です。

自動車運送業
鉄道
林業
木材産業

あわせて、既存分野においても従事できる業務区分の追加(製造業分野への業務拡大など)が行われ、受け入れられる業務の範囲が広がりました。物流の2024年問題に対応する自動車運送業(トラック・バス・タクシー運転手)の追加は、運送業界から大きな注目を集めました。

2026年1月閣議決定の3分野追加(リネンサプライ・物流倉庫・資源循環)

さらに、2026年1月23日の閣議決定により、リネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野の追加が正式に決定し、対象は19分野に拡大しました。新規3分野の受入れは、産業上の分野等を定める省令等の公布・施行後、準備が整い次第の開始(2027年頃)が見込まれています。追加直後は試験制度や業務区分の運用が固まりきっていない場合があるため、新たに対象となった分野での採用を検討する際は、最新の運用状況を必ず確認してください。

注意:分野追加直後は試験・受入見込数の運用が流動的

新規に追加された分野は、評価試験の実施体制や分野別の受入見込数の運用が整備途上であることが少なくありません。「対象分野になった=すぐに大量採用できる」とは限らないため、試験の実施時期・受験地・受入数の枠の状況を所管省庁・業所管団体で確認したうえで計画を立てることが重要です。

分野別の受入見込数と充足状況

受入見込数は分野ごとに大きく異なります。人手不足の深刻度・産業規模・国内人材の確保状況によって枠の大きさが決まるため、分野によって「まだ余裕がある」ところと「上限に近づいている」ところに分かれます。以下は2024年度からの5年間における主要分野の受入見込数の目安です(数値は2026年1月23日の閣議決定で再設定された上限であり、運用上見直される場合があります)。

分野 受入見込数(5年間の上限・目安) 充足の傾向
介護 約13.5万人 需要旺盛・受入れ拡大中
飲食料品製造業 約13.9万人 受入れが特に進む分野
外食業 約5.0万人 上限到達見込みで2026年4月から新規受入一時停止
建設 約7.6万人 JAC経由で受入れ拡大
農業 約7.3万人 季節性あり・地域偏在
工業製品製造業 約20.0万人 最大規模の枠
自動車運送業(2024追加) 約2.45万人 新規分野・立ち上げ期
宿泊 約2.3万人 インバウンド回復で需要増

表のとおり、製造業や飲食料品製造業のように10万人を超える大きな枠を持つ分野がある一方で、外食業や宿泊のように相対的に枠が小さい分野もあります。枠が小さい分野は、産業全体の人気が高いと早期に上限へ到達しやすく、受入れの調整(新規停止など)が生じやすい構造にあります。

▶ 「受入見込数」と「実際の在留者数」は別物

受入見込数は上限であり、実際に何人在留しているか(充足率)とは異なります。充足率が高い分野ほど「残り枠」が少なく、採用の可否が読みにくくなります。採用検討時は、出入国在留管理庁が公表する在留外国人統計や、所管省庁の受入状況の公表資料で「現在どこまで埋まっているか」を確認することが実務上のカギになります。

外食業の受入停止が示す「枠の壁」

受入見込数が採用に直接影響した代表例が、外食業分野です。外食業は特定技能の中でも人気が高く、留学生からの移行や技能実習を経ない直接の受入れも多いことから、受入れが急速に進みました。その結果、在留者数が2026年2月末時点で約4万6千人に達し、同年5月頃に受入見込数(上限5万人)を超える見込みとなったことから、農林水産省・出入国在留管理庁は2026年4月13日以降、特定技能1号の在留資格認定証明書の交付を一時的に停止する措置を公表しました。

これは「枠の壁」が現実に企業の採用を止めうることを示す象徴的なケースです。これから採用を始めようとした企業が、いざ申請しようとした段階で「この分野は受入見込数に達したため新規受入れを停止しています」と告げられる——こうした事態は、枠の小さい人気分野ではいつでも起こりうるリスクです。

受入停止が起きても採用が完全に止まるわけではない

ただし、受入見込数への到達による停止は、すべての手続きを止めるものではありません。一般に、以下の点を理解しておくと冷静に対応できます。

重要:人気分野は「採れるうちに採る」判断が必要な場面も

枠の小さい人気分野では、受入見込数の充足によって採用機会が突然閉ざされることがあります。採用ニーズが固まっているなら、枠が逼迫する前に手続きに着手する、あるいは技能実習からの移行ルートを並行確保するなど、複線的な調達計画を持っておくことがリスク回避につながります。

建設分野の特殊性|有料職業紹介とJAC

受入見込数の話とあわせて、建設分野には特有の制度があることを必ず理解しておく必要があります。建設分野では、特定技能外国人について有料職業紹介(民間の人材紹介会社による有料での職業あっせん)を利用することができません。これは建設労働者の雇用の安定を図る建設労働者雇用改善法等の趣旨に基づくもので、他分野との大きな違いです。

そのため建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、(一社)建設技能人材機構(JAC)の仕組みを通じて受け入れることになります。JACは建設分野の特定技能の適正な受入れを担う団体で、受入企業はJACに加入する(直接会員または間接会員として)か、JAC正会員団体に所属したうえで、JACの行う受入れ支援の枠組みを利用します。

▶ TGPの役割:建設分野はJAC経由の受入れをご案内

建設分野は有料職業紹介が利用できないため、TreeGlobalPartnersが直接「紹介手数料を得て人材をあっせんする」ことはできません。当社は、JAC経由の受入スキームのご案内、受入計画・建設キャリアアップシステム(CCUS)登録などの周辺実務のサポート、行政書士法人Treeによる在留資格申請の連携といった形でご支援します。業際を遵守したうえで、建設業の受入れを適正に進めるお手伝いをします。

建設分野の受入見込数と分野固有要件

建設分野は受入見込数も大きく、人手不足が極めて深刻な分野の一つです。一方で、報酬を月給制とすること、CCUSへの登録、JACが定める行動規範の遵守など、他分野にはない分野固有要件が課されています。これらを満たさないと受入れ自体が認められないため、建設分野での採用は「枠の有無」だけでなく「固有要件を満たせるか」の両面で検討する必要があります。

育成就労制度(2027年施行)と受入見込数

受入見込数の今後を左右する最大の制度変更が、技能実習制度に代わって創設される育成就労制度です。育成就労制度は2024年6月に関連法が成立し、施行期日を定める政令により2027年4月1日の施行が正式に決定しています。これは「人材育成と人材確保」を目的とし、原則3年間の育成を通じて特定技能1号の水準まで人材を育てることを前提とした制度です。

技能実習からのパイプライン強化

従来の技能実習は「国際貢献・技能移転」を建前とし、特定技能への移行は結果的なルートでした。育成就労では、当初から特定技能1号への移行を見据えた育成が制度の目的に据えられます。これにより、育成就労から特定技能1号への移行が制度的に円滑になり、特定技能の受入れ総数の押し上げ要因になると見込まれます。

1
育成就労(原則3年)

受入分野で就労しながら技能・日本語を育成。特定技能1号の水準到達を目標とする。

2
特定技能1号へ移行

評価試験・日本語要件を満たして1号へ。ここで分野別の受入見込数の枠を消費する。

3
特定技能2号へ(熟練)

対象分野で熟練技能を満たせば2号へ。在留期間の上限がなくなり長期定着が可能に。

採用計画の観点では、育成就労・特定技能1号・特定技能2号を「一連の人材パイプライン」として設計する発想が不可欠になります。育成就労からの供給が増えれば、特定技能1号の受入見込数の消費ペースも速まります。とくに人気分野では、育成就労からの移行組と直接受入組が同じ枠を取り合う構図になりうるため、早めの計画づくりが重要です。

注意:制度移行期は要件・スケジュールが変動しやすい

育成就労制度の細目(対象分野・転籍の要件・日本語要件など)は政省令やガイドラインで順次具体化されます。2026〜2027年は技能実習から育成就労への移行期にあたり、実務運用が固まりきらない場面が想定されます。最新の制度情報を確認しながら、柔軟に計画を見直せる体制を整えておくことをおすすめします。

受入見込数を採用計画に活かす実務

受入見込数という制度上の上限を、単なる知識で終わらせず、自社の採用計画に落とし込むことが企業にとっての本題です。ここでは、枠の動向を踏まえた実務の進め方を整理します。

POINT 01
自社分野の充足状況を確認

所管省庁・出入国在留管理庁の公表資料で、自社が属する分野の受入見込数と現在の在留者数(残り枠)を把握する。

POINT 02
調達ルートを複線化

海外からの新規呼び寄せ、国内在住者の移行、技能実習・育成就労からの移行など、複数ルートを並行確保する。

POINT 03
逆算でスケジュール設計

試験合格・申請・審査期間を逆算し、枠が逼迫する前に手続きに着手できるよう前倒しで計画する。

「いつ・どの分野で・何人」を年度計画に落とす

受入見込数は5年単位の上限ですが、実際の充足ペースは年度によって変動します。採用計画では、自社の業務区分が属する分野を正確に特定したうえで、「今年度は何人を、どのルートで採るか」を具体化することが重要です。とくに枠の小さい分野では、年度後半になると新規受入れが絞られるリスクがあるため、年度前半での着手が有利に働く場合があります。

業務区分の確認を怠らない

受入見込数は分野単位で管理されますが、同じ分野の中にも複数の業務区分があり、自社の従事させたい業務がどの区分に該当するかで、必要な評価試験や受入要件が変わります。「分野は対象だが、自社の業務が想定する区分に含まれていなかった」という取り違えは実務でよく起こります。採用に着手する前に、所管省庁の運用要領で業務区分を確認しておきましょう。

▶ 制度の変化に追随できる体制が競争力になる

分野追加・枠の見直し・受入停止・育成就労への移行と、特定技能を取り巻く制度は短期間で動いています。自社だけで最新動向を追い続けるのは負担が大きいため、人材紹介・登録支援・ビザ申請を一体で相談できるパートナーを持つことが、機会を逃さない採用の近道になります。

枠の動向を踏まえた採用戦略の立て方

最後に、受入見込数の動向を踏まえて企業がとるべき採用戦略を、登録支援機関・受入企業・人事担当者の立場ごとに整理します。

受入企業(経営者・人事)の視点

自社の人手不足が長期的に続くと見込まれるなら、枠が逼迫しやすい人気分野ほど「早く動く」ことが合理的です。採用が制度の壁で止まると事業計画に直接響くため、受入見込数の充足状況をモニタリングし、枠に余裕のあるうちに在留資格の確保を進める判断が求められます。あわせて、採用後の定着(特定技能2号への移行や登録支援)まで見据えた設計を行うことで、限られた枠で採った人材を最大限に活かせます。

登録支援機関の視点

登録支援機関は、受入企業に対して分野別の枠の状況を正確に伝え、現実的な受入計画を共に描く役割を担います。受入見込数の停止・再開は支援対象者の在留に直結するため、最新の運用情報をキャッチアップし、企業へ適時にアラートを出せる体制が信頼につながります。

外国人求人を出す企業の視点

求人を設計する段階で、募集する職種が特定技能のどの分野・業務区分に該当し、その分野の枠に余裕があるかを確認しておくことで、「採用したのに在留資格が取れない」というミスマッチを防げます。求人票の段階から制度要件を織り込むことが、採用効率の向上につながります。

▶ TreeGlobalPartnersのワンストップ支援

TreeGlobalPartnersは、特定技能人材の紹介(建設分野はJAC経由をご案内)、登録支援機関としての受入支援、そして行政書士法人Treeによる在留資格申請を連携させ、受入見込数の動向を踏まえた採用から定着までを一気通貫でサポートします。「どの分野なら今から採れるのか」という最初の一歩から、お気軽にご相談ください。

よくある質問

特定技能の受入見込数とは何ですか?上限(枠)と同じ意味ですか?
受入見込数とは、特定技能制度において分野ごとに政府が定める一定期間の受入れ上限人数のことです。これは雇用情勢や人手不足の状況を踏まえて設定される「運用上の上限(キャップ)」として機能し、分野全体の受入総数がこの数に達した場合、その分野の新規受入れが一時停止されることがあります。個々の企業に割り当てられる枠ではなく、分野全体の総量規制という性格を持ちます。2024年度からの5年間の総枠は、2026年1月の閣議決定による再設定後で全分野合計約80.6万人とされています。
受入見込数に達した分野では、もう特定技能外国人を採用できないのですか?
分野全体の在留者数が受入見込数(上限)を超えることが見込まれる場合、その分野では在留資格認定証明書の一時的な交付停止や、在留資格変更許可申請の原則不許可などの運用が行われる場合があります。もっとも、すでに同一分野の特定技能1号で在留している方の転職や在留期間更新など、一定の例外的に継続可能な手続きもあります。対象となる申請類型や例外は分野ごとに異なるため、最新の運用状況を所管省庁・出入国在留管理庁で確認することが重要です。
2026年に外食業の受入れが停止したと聞きましたが、採用への影響は?
外食業分野は人気が高く受入れが急速に進んだため、分野の受入見込数に近づいた段階で新規の特定技能1号受入れが一時的に絞られる局面が生じています。停止・再開の運用は流動的なため、外食業での採用を検討する企業は、現在の受入状況の確認と、技能実習からの移行や他分野との比較を含めた採用戦略の見直しをおすすめします。具体的な可否はTreeGlobalPartnersと行政書士法人Treeで最新情報を確認のうえご案内します。
2027年施行予定の育成就労制度は受入見込数にどう関わりますか?
技能実習に代わる育成就労制度は2027年4月1日に施行されることが決定しており、原則3年間の育成を経て特定技能1号への移行を前提とする設計です。育成就労からの供給が増えることで特定技能の受入れ総数の増加が見込まれ、分野別の受入見込数や上限の消費ペースにも影響します。採用計画は、育成就労・特定技能1号・特定技能2号を一連の人材パイプラインとして捉えて設計することが重要になります。
建設分野は人材紹介会社から特定技能外国人を紹介してもらえますか?
建設分野では有料職業紹介を利用できないため、民間の人材紹介会社が紹介手数料を得て建設の特定技能外国人をあっせんすることはできません。建設分野は(一社)建設技能人材機構(JAC)の枠組みを通じて受け入れる必要があります。TreeGlobalPartnersは、JAC経由の受入スキームのご案内や受入計画・CCUS登録などの周辺サポート、行政書士法人Treeによる在留資格申請の連携という形で、業際を遵守したうえでご支援します。

まとめ

特定技能の受入見込数は、分野ごとに設定された受入れの上限であり、企業の採用可否を実際に左右する重要指標です。本記事の要点を改めて整理します。

受入見込数は固定的なものではなく、分野追加・上限見直し・受入停止・育成就労への移行といった制度変化の中で動き続けています。「今、自社の分野で何人採れるのか」を正確に把握し、枠が逼迫する前に動くことが、外国人採用を成功させる鍵です。分野別の受入状況の確認から在留資格申請まで、ご不明な点があればTreeGlobalPartnersまでお気軽にご相談ください。

本記事の情報は2026年6月時点の出入国在留管理庁および各分野所管省庁の公開情報に基づいています。記載の受入見込数は閣議決定に基づく上限の目安であり、運用上の見直しにより変更される場合があります。分野別の最新の受入状況・停止状況、業務区分・分野固有要件は必ず公式情報をご確認ください。ビザ申請・在留資格に関する個別案件は、グループ内の行政書士法人Treeまでお問い合わせください。