特定技能外国人の税務実務|住民税・源泉徴収・年末調整の注意点

特定技能外国人を雇用するうえで、在留資格や受入れ支援と並んで企業を悩ませるのが税務の取扱いです。日本人従業員とほぼ同じ実務であっても、来日初年度の住民税、居住者・非居住者の判定、国外に住む扶養親族の控除、そして帰国時の住民税精算など、外国人特有の論点がいくつも存在します。本記事では、特定技能外国人の給与に関する源泉徴収・年末調整・住民税の実務を、国税庁および総務省の公式情報をもとに体系的に整理します。なお在留資格そのものの申請・登録支援は提携先の行政書士法人Treeが担い、本記事は雇用企業の税務担当者の理解を助けることを目的としています。

特定技能外国人の税務は「日本人とほぼ同じ」だが落とし穴がある

特定技能外国人は、原則として日本人従業員と同じように給与から所得税が源泉徴収され、要件を満たせば年末調整の対象となり、翌年度から住民税が課税されます。雇用契約に基づき日本国内で働く以上、その給与は日本で課税される所得であり、税務手続の大枠は国籍を問いません。

一方で、特定技能外国人ならではの論点もあります。代表的なものは次の4つです。

これらは制度を知らないと「住民税の未納で出国してしまった」「国外扶養親族の控除が否認された」といったトラブルにつながります。以下、項目ごとに実務上の注意点を見ていきます。

居住者か非居住者かで源泉徴収が変わる

所得税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に区分します。国税庁の整理によれば、居住者とは「国内に住所がある個人」または「現在まで引き続いて1年以上居所がある個人」をいい、それ以外が非居住者です(国税庁 タックスアンサー No.2875)。

ここで実務上重要なのが「住所の推定」です。来日して国内に居住することになった人が、その職業からみて継続して1年以上日本に居住することが通常必要とされる場合などには、入国の時から国内に住所があるもの(=居住者)と推定されます。特定技能は在留期間を更新しながら相当期間就労することが前提の在留資格であるため、雇用契約が1年以上の継続就労を予定しているケースでは、多くの場合入国当初から居住者として扱うことになります。

ポイント:「来日したばかりだから非居住者」とは限りません。1年以上の在留・就労が予定されている特定技能外国人は、入国時から居住者として通常の源泉徴収を行うのが原則です。判断に迷う場合は顧問税理士や所轄税務署に確認してください。

源泉徴収の税率|居住者と非居住者で大きく異なる

源泉徴収する所得税等の計算方法は、居住者か非居住者かで根本的に異なります。

区分源泉徴収の方法
居住者「給与所得の源泉徴収税額表」に基づき、扶養親族等の数に応じて税額を計算(日本人従業員と同じ)
非居住者国内源泉所得である給与に、原則として一律 20.42% の税率を乗じて源泉徴収(復興特別所得税を含む。国税庁 No.2884)

非居住者の20.42%は扶養控除等を反映しない一律課税であり、年末調整も行いません。逆に居住者であれば、扶養控除等申告書の提出を受けて通常の税額表で計算し、年末調整で精算します。

注意:非居住者に該当する人を誤って居住者として扱う(またはその逆)と、源泉徴収税額に過不足が生じ、源泉徴収義務者である会社が不足税額の納付責任を負うことになります。区分判定は採用時点で必ず確認しましょう。

なお、租税条約により母国の税法との二重課税が調整される場合もあります。本人の出身国によっては「租税条約に関する届出書」の提出で取扱いが変わることがあるため、必要に応じて確認してください。

年末調整|扶養控除等申告書を提出した居住者が対象

年末調整は、給与の支払を受ける居住者で、その年最後の給与支払日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人が対象です。特定技能外国人も居住者であればこの対象に含まれ、日本人従業員と同様に1年間の源泉徴収税額を精算します。

実務上の留意点は次のとおりです。

  1. 扶養控除等申告書の提出を確実に受ける:年末調整の前提書類です。母国語の補助資料などで記入方法を丁寧に案内すると記載漏れを防げます。
  2. 各種控除の適用可否を確認する:生命保険料控除、社会保険料控除などは日本人と同様に適用できます。
  3. 国外扶養親族がいる場合は証明書類を確認する:後述の親族関係書類・送金関係書類が必要です。
  4. 年の途中で居住者・非居住者の区分が変わる場合:たとえば年の途中で出国し非居住者になる場合は、出国時までに年末調整を行うのが原則です。

非居住者は年末調整の対象外であり、給与に対する20.42%の源泉徴収で課税関係が完結する点に注意してください。

国外に住む扶養親族の控除には「親族関係書類」と「送金関係書類」

特定技能外国人が母国に残してきた家族を扶養に入れて扶養控除等を受けるには、通常の扶養控除等申告書に加えて、国外居住親族であることを示す書類の提出・提示が必要です。国税庁は次の書類を求めています。

同一の国外居住親族への送金が年3回以上になる場合は、すべての送金関係書類を提出する代わりに、「送金関係書類の明細書」とその年最初と最後の送金関係書類を提出する方法も認められています(国税庁)。

さらに、扶養親族のうち30歳以上70歳未満の人については、留学ビザ等で在留する者・障害者・年38万円以上の送金を受けている者のいずれかに該当しなければ控除対象外となるため、該当区分に応じた追加書類(留学ビザに係る書類や38万円送金書類など)が必要になる点にも注意してください。書類が揃わなければ控除は否認され、源泉徴収税額の不足や本人の確定申告での修正につながります。

住民税|来日初年度は原則かからず、翌年度から課税

個人住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得に対して、その年の1月1日(賦課期日)に住所がある市区町村が課税します(総務省)。この仕組みのため、来日初年度は前年に日本での所得がなく、原則として住民税はかかりません。実際に課税が始まるのは、来日して初めての年が終わった翌年度からです。

本人への説明が重要:来日2年目になって突然住民税が発生するため、「今年から手取りが減った」と本人が驚くケースが多くあります。初年度は住民税が天引きされていないことと、翌年度から課税が始まることを採用時にあらかじめ伝えておくとトラブルを防げます。

住民税の納め方には、給与から毎月天引きして会社が納める特別徴収と、本人が納付書で納める普通徴収があります。給与所得者については特別徴収が原則であり、特定技能外国人についても会社が特別徴収義務者として毎月の給与から天引きし、市区町村へ納付します。

退職・帰国時の住民税|一括徴収と納税管理人の届出

住民税は前年所得への後払い課税であるため、特定技能外国人が在留期間満了などで退職・帰国する際の精算が最大の実務論点になります。年度途中で退職すると、その年度分のまだ天引きしていない住民税(未徴収分)が残るためです。

対応の基本は次の2つです。

  1. 退職時の一括徴収:特別徴収されていた人が退職する場合、残りの未徴収分を最後の給与または退職金から一括徴収して会社が市区町村へ納めることができます。特に1月1日から5月31日までの間に退職・出国する場合は、本人の申出がなくても未徴収分を最後の給与・退職手当等から一括徴収するのが原則とされています。
  2. 納税管理人の選任・届出:出国までに納め切れない住民税がある場合、本人は出国する前に、日本に住所を有する人の中から納税管理人を選定し、市区町村に届け出る必要があります(総務省)。納税管理人は、本人に代わって納税通知書の受領や納付を行います。

実務の流れ(例):① 退職・帰国の予定が決まったら市区町村に未徴収住民税の有無を確認 → ② 一括徴収で清算できるか検討 → ③ 清算しきれない分があれば本人に納税管理人を選任・届出してもらう → ④ 出国後は納税管理人が納付を継続。

住民税を未納のまま出国させてしまうと、市区町村からの督促が会社や保証人に及ぶこともあり、企業の管理責任が問われかねません。帰国スケジュールが固まった段階で、早めに市区町村と調整することが重要です。

雇用企業が押さえておきたい税務実務チェックリスト

特定技能外国人の税務実務で、雇用企業の担当者が確認すべき項目を時系列で整理します。

タイミング確認・対応事項
採用・入国時居住者/非居住者の区分判定、扶養控除等申告書の提出、源泉徴収方法の決定
毎月の給与居住者は税額表に基づく源泉徴収、非居住者は20.42%の源泉徴収、翌年度以降は住民税の特別徴収
年末居住者の年末調整、国外扶養親族がいる場合の親族関係書類・送金関係書類の確認
退職・帰国時住民税未徴収分の一括徴収、必要に応じた納税管理人の選任・届出、市区町村への確認

税務実務そのものは税理士の専門領域ですが、在留資格の維持や受入れ支援と密接に関わるため、社内では人事・経理・受入れ担当が連携して情報を共有しておくことが大切です。登録支援機関に委託する場合の費用は月額2〜3万円程度が目安とされますが、これは生活オリエンテーションや相談対応などの支援費用であり、税務申告の代行費用とは別である点にも留意してください。

なお、在留資格に関する申請や登録支援は提携先の行政書士法人Treeが対応します。税務・在留手続を横断して相談したい場合は、専門家への早めの照会をおすすめします。

よくある質問

特定技能外国人は来日初年度から住民税がかかりますか。
原則としてかかりません。個人住民税は前年(1月1日〜12月31日)の所得に対し、その年の1月1日時点で住所がある市区町村が課税する仕組みのため、来日初年度は前年の日本での所得がなく課税されないのが通常です。実際に課税が始まるのは翌年度からで、給与から特別徴収(天引き)されます。来日2年目に手取りが減って本人が驚かないよう、採用時に説明しておくことが望ましいです。
来日したばかりの特定技能外国人は非居住者として20.42%を源泉徴収するのですか。
必ずしもそうではありません。所得税法上、その職業からみて継続して1年以上日本に居住することが通常必要とされる場合などには、入国の時から国内に住所がある(=居住者)と推定されます。特定技能では1年以上の継続就労が予定されているケースが多く、その場合は入国当初から居住者として、通常の源泉徴収税額表に基づいて源泉徴収します。20.42%の一律源泉徴収は非居住者に該当する場合の取扱いです。区分判定に迷うときは所轄税務署や税理士に確認してください。
母国に住む家族を扶養に入れることはできますか。必要な書類は何ですか。
国外に住む親族でも、生計を一にしているなどの要件を満たせば扶養控除等の対象にできます。その場合、扶養控除等申告書に加えて「親族関係書類」(続柄を示す戸籍やパスポートの写し、外国政府発行の証明書等とその日本語訳)と「送金関係書類」(生活費等を送金したことを示す金融機関やクレジットカードの書類)を会社に提出・提示する必要があります。同一親族への送金が年3回以上の場合は、明細書と最初・最後の送金書類で代えることも可能です。
特定技能外国人が在留期間満了で帰国します。住民税はどう精算すればよいですか。
まず市区町村に未徴収の住民税があるか確認します。特別徴収されていた人が退職する場合、残りの未徴収分を最後の給与や退職金から一括徴収して会社が納付できます(1月1日〜5月31日の退職・出国では未徴収分の一括徴収が原則)。一括徴収で納め切れない分が残るときは、本人が出国前に日本に住所のある人を「納税管理人」として選定し、市区町村に届け出る必要があります。未納のまま出国させると企業の管理責任が問われることがあるため、帰国予定が固まり次第早めに調整してください。
特定技能外国人も年末調整の対象になりますか。
居住者であり、その年最後の給与支払日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していれば、日本人従業員と同様に年末調整の対象になります。生命保険料控除や社会保険料控除なども適用可能です。一方、非居住者は年末調整の対象外で、給与に対する20.42%の源泉徴収で課税関係が完結します。年の途中で出国して非居住者となる場合は、出国時までに年末調整を行うのが原則です。

まとめ

本記事は2026年6月時点(現時点)で公開されている国税庁・総務省等の情報をもとに作成した一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。税額計算や申告の取扱いは個々の事情により異なるため、具体的な手続は所轄税務署・市区町村・税理士にご確認ください。また、特定技能をはじめとする在留資格制度の運用は変更されることがあり、最新の取扱いは出入国在留管理庁の公表情報および市区町村の案内をご確認ください。在留資格の申請・登録支援は提携先の行政書士法人Treeが対応します。