特定技能評価試験は「技能」と「日本語」の二本立て
特定技能1号の在留資格は、分野ごとの技能水準を測る技能評価試験と日本語能力水準を測る日本語試験の両方に合格することが基本形です。出入国在留管理庁の「特定技能制度に関するQ&A」では、技能実習2号を良好に修了し、従事しようとする業務と職種・作業に関連性が認められる場合は技能および日本語能力の証明が免除される取扱いが示されています。技能実習を経ていない人材なら、試験日程がそのまま採用スケジュールになります。
技能評価試験の水準は、「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」(令和7年3月11日 法務省・厚生労働省)が明記しています。1号特定技能外国人については技能検定3級と同等の水準、2号特定技能外国人については技能検定1級と同等の水準を設定するとされ、試験科目は原則として学科試験および実技試験により実施されます。日本語試験のほうは、読解試験および聴解試験(リスニング)により実施することを基本としています。
令和8年1月23日の「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」および閣議で、特定技能制度および育成就労制度の分野別運用方針が決定されました。特定産業分野は19分野となり、リネンサプライ・物流倉庫・資源循環が加わっています。
実施回数と実施場所を規律する国の「試験の方針」
試験日程は各実施機関が自由に決めているわけではなく、上位のルールとして「試験の方針」が枠をはめています。同方針は令和7年3月11日から施行され、旧「『特定技能』に係る試験の方針について」(令和2年1月30日 出入国在留管理庁)は同日限りで廃止されました。押さえるべきは実施回数と実施場所の原則です。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 実施回数 | 4月1日から翌年3月31日までを一事業年度とし、事業年度ごとに2回以上実施することが望ましい | 事業年度ごとに2回以上実施することが望ましい |
| 実施場所 | 国外における試験実施を前提とした上で、在留資格を有する者を対象として国内においても実施することを基本とする | 在留資格を有する者を対象として国内において実施することを基本とし、各分野における受入れ需要を考慮して国外においても実施することが望ましい |
いずれも「望ましい」「基本とする」という定めであり、全分野一律の実施日が決まっているわけではありません。年2回に近い運用の分野もあれば、CBT方式で通年の受験機会を確保している分野もあります。方針は実施方法についても、学科試験はCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)方式またはペーパーテスト方式により実施すると定めています。実技試験は製作等作業試験が原則で、困難と分野所管行政機関が認める場合は判断等試験・計画立案等作業試験・実地試験も可能です。
試験実施要領の必要的記載事項には「事業年度における実施回数及び実施時期」「実施場所(国外で実施する場合には実施する国名等も記載)」「試験日、試験会場、受験申込期間、受験料とその支払方法等」が挙げられています。分野の実施要領を読めば、その分野が年間どのようなリズムで試験を回しているかが分かる構造です。
試験日程の調べ方|入管庁の一覧表と分野別サイト
全分野を横断して日程感をつかむ入口は、出入国在留管理庁の「試験関係」ページです。同ページには在留資格「特定技能1号」および「特定技能2号」に係る試験実施予定一覧表がExcel形式で、基準日を付して掲載されています。ただし同ページ自体が、最新情報や詳細は各試験機関のウェブサイトで確認するよう案内しています。一覧表は全体像の把握用、申込みと会場の確定は実施機関サイト、という二段構えが現実的です。
分野ごとの技能評価試験の実施機関も同ページに整理されています。協議会や届出の窓口となる所管省庁と試験を実施する機関は別であることが多く、採用担当者が最初につまずきやすい点です。
| 分野 | 技能評価試験の実施機関 |
|---|---|
| 介護 | 厚生労働省 |
| ビルクリーニング | 全国ビルメンテナンス協会 |
| 工業製品製造業 | 経済産業省 |
| 建設 | 建設技能人材機構 |
| 造船・舶用工業 | 日本海事協会 |
| 自動車整備 | 日本自動車整備振興会連合会 |
| 航空 | 日本航空技術協会 |
| 宿泊 | 宿泊業技能試験センター |
| 自動車運送業 | 日本海事協会 |
| 鉄道 | 国土交通省 |
| 農業 | 全国農業会議所 |
| 漁業 | 大日本水産会 |
| 飲食料品製造業 | 外国人食品産業技能評価機構 |
| 外食業 | 外国人食品産業技能評価機構 |
| 林業 | 林業技能向上センター |
| 木材産業 | 全国木材組合連合会 |
翌年度の日程がいつ固まるかも分野で異なります。宿泊分野特定技能1号評価試験実施要領(令和6年1月 国土交通省観光庁観光産業課)は、翌年度の試験スケジュールについて「国内試験は、毎月実施する」「国外試験は、数年間、同じ実施国において前年同月に実施する」「国内、国外試験とも、翌年度のスケジュールは当年度の9月末までに決定する」という原則を掲げ、センターと観光庁の調整の上で観光庁が決定し別途公表するとしています。この分野なら秋には翌年度の見通しが立ちます。
一方、自動車運送業分野特定技能1号評価試験実施要領(令和6年12月 国土交通省物流・自動車局)は、実施回数を「年複数回程度」とし国内外で実施するとした上で、実施時期および実施場所は国土交通省と日本海事協会が協議の上決定するとしています。試験日・試験会場・受験予約期間・受験料と支払方法等は日本海事協会のウェブサイトに掲載され、そのサイトが国土交通省のホームページで周知されます。
実施主体・実施回数・公表時期が分野で異なる以上、「特定技能の試験は何月にある」という一枚のカレンダーで採用計画を組むと破綻します。採用したい分野・業務区分を先に確定し、その分野の実施要領と実施機関サイトから逆算してください。
国内試験と国外試験で何が変わるか
特定技能1号の試験は国外実施を前提としつつ国内でも実施する設計です。海外から呼び寄せる採用と、すでに日本にいる留学生や技能実習修了者の在留資格変更とでは、試験会場も準備すべき書類も変わります。
会場と実施国の考え方
国外で実施する場合、試験実施要領には実施する国名等を記載することとされ、実施国は分野ごとに設定されます。試験の方針は、国外実施に当たり必要に応じ現地政府と連携し、現地の関連法令および規則を遵守して実施することを求めています。
本人確認書類の違い
差は申込み時に登録する識別情報にも表れます。宿泊分野の実施要領では、国内受験希望者は在留カード番号(未所持ならパスポート番号)、国外受験希望者は母国政府が発行する公的身分証明書番号を登録するとされ、当日の本人確認でも国内受験者には在留カードまたはパスポートの提示が求められます。
ブローカー排除と直接申込みの原則
試験の方針は、受験希望者と試験実施機関の間を仲介して不当に高額な手数料等を徴収する悪質なブローカーの排除に努めることとし、受験の申込みは受験希望者から試験実施機関への直接の申込みに限るなど必要な対策を講じるとしています。「代理申込み」を持ちかけられた場合は、この原則に照らした確認が必要です。
受験資格|満17歳以上・在留資格・旅券の告示
受験資格は、試験の方針の別紙で「必ず記載すること」とされている事項に集約されています。技能評価試験・日本語試験のいずれについても、試験実施要領には次の内容を記載しなければなりません。
- 基本的に満17歳以上の者を対象とすること
- 国内で試験を受験する場合にあっては、在留資格を有する者に受験を認めること
- 試験に合格しても「特定技能」の在留資格の付与は保証されず、在留資格認定証明書の交付を受けても査証は別途外務省の審査を経ることを、試験実施要領および受験案内において周知すること
- 法務大臣が告示で定める退去強制令書の円滑な執行に協力する外国政府等以外の国の者については、受験は認められないこと
実際の実施要領もこの枠組みに従っています。宿泊分野では、受験できる者を試験実施日当日に満17歳以上の外国人とし、国内実施の場合は在留資格を有する者を対象として、告示で定める外国政府等が発行した旅券を所持していない者を除くと定めています。外食業分野特定技能1号評価試験の国内受験要件も同じ構造です。
自動車運送業分野では、満17歳以上であることに加えて試験実施日において有効な自動車運転免許(日本または外国で取得したもの)を保有していることが受験資格とされています。受験申込みの審査でも運転免許証が確認対象となるため、免許取得のリードタイムを含めて計画する必要があります。
合格が在留資格を保証しないという原則は、社内の期待値調整としても重要です。試験に受かったという連絡だけで入社日を確定すると、審査の結果次第で計画が崩れます。
申込みから受験当日までの実務
申込みの手順は分野ごとに定められますが、共通する骨格があります。宿泊分野では、受験希望者はセンター公式サイトの申込フォームから申込みを行い、書類・電話・メールによる申込みは受け付けないとされ、氏名・生年月日・性別・国籍・メールアドレス・受験会場・顔写真などの登録が必要です。
試験日、試験会場、受験申込期間、受験料と支払方法は実施機関のサイトに掲載されます。分野によっては当年度中に翌年度分が公表されます。
国内受験者は在留カード番号(未所持ならパスポート番号)を登録。申込みは本人から実施機関への直接申込みに限るのが原則です。
宿泊分野では指定口座への前払いで、入金確認をもって受付が成立します。入金後の変更・キャンセルは受け付けられず、実施機関側の事由等を除き受験料は返却されません。
受験票は申込み完了後にマイページに表示されるので、印刷して当日持参します。
受験票と顔写真付き身分証明書(国内受験者は在留カードまたはパスポート)を提示して本人確認を受けます。
試験当日の運営についても、方針は在留カード等による確実な本人確認、持ち物検査、スマートフォン等の管理徹底といった不正防止策を求めています。不正の手段で試験を受け、または受けようとした者には、受験の禁止や合格の取消し、期間を定めた受験禁止(宿泊分野では5年以内)といった措置が採られ得ます。
入金後の変更やキャンセルを受け付けない運用が一般的で、外食業分野の受験料も機構側の事由による場合を除き返金されません。シフトや繁忙期と重ならない日程かを本人と確認してから申し込む運用にしておくと、無駄な費用を避けられます。
日本語試験の日程|JFT-BasicとJLPTの差
実務でボトルネックになりやすいのは、むしろ日本語試験のほうです。出入国在留管理庁のQ&Aでは、日本語能力は国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(N4以上またはN3以上)等で評価されるとされ、介護分野では介護日本語評価試験も課されます。
| 項目 | JFT-Basic | 日本語能力試験(JLPT) |
|---|---|---|
| 実施頻度 | 原則、毎月実施 | 年2回(7月・12月) |
| 実施方式 | CBT方式(テストセンター) | 会場での一斉実施 |
| 実施地 | 海外(主にアジア地域)と日本 | 国内および海外。海外には7月のみ、12月のみ実施する都市もある |
| 結果の通知 | テスト終了後にその場で画面表示。認定結果通知書は5営業日以内 | 試験日から一定期間後に通知 |
| 再受験 | 総合得点200点未満の場合、45日経過後に再受験可。200点以上に達した者は再受験できない | 次の実施回(原則として半年後) |
JFT-Basicは約50問・60分で、文字と語彙、会話と表現、聴解、読解の4セクションから成ります。得点は10点から250点で示され、200点以上がA2.2(A2)判定です。テスト結果に有効期限はなく、予約ウェブサイト上のデータ保存期間が5年間とされています。
日程の柔軟性ではJFT-Basicが優位ですが、分野によってはJLPTしか選べません。自動車運送業分野の運用要領別冊では、トラック運転者は国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)で足りるのに対し、タクシー運転者およびバス運転者は日本語能力試験(N3以上)の合格証明書が求められます。12月試験を逃すと次は7月という前提での逆算が必要です。
入管庁のQ&Aは、技能実習2号を良好に修了し従事業務との関連性が認められる場合は技能および日本語能力の証明が免除されるとしています。自動車運送業分野のトラック運送業では、修了した技能実習2号の職種・作業の種類にかかわらず、良好に修了した者は国際交流基金日本語基礎テストおよび日本語能力試験(N4以上)のいずれも免除されます。
合否通知と合格証明書|有効期限と交付の流れ
試験に合格してから在留資格の申請に使える書類が届くまでには、想像以上の日数がかかります。合否の通知方法は試験実施要領の必要的記載事項で、原則として通知には本人の得点も記載されます。
宿泊分野では、試験実施日から30日以内にメールで合否結果が判明したことを通知し、合格の場合はマイページに合格通知書が表示されます。自動車運送業分野では試験実施後1か月以内に専用ウェブサイトで通知されます。いずれも合格判明までに約1か月を見込む必要があります。
さらに、在留資格の申請に添付する合格証明書は自動的には届きません。宿泊分野では、サイト上の発行依頼フォームから合格者本人または受入れ機関が発行申請を行い、受入れ機関が発行手数料を納付したことをセンターが確認した後に、受入れ機関へ郵送またはデータで送付されます。受入れ機関は在留資格の申請を行ったのち、合格証明書を本人に引き渡すこととされています。自動車運送業分野でも、雇用契約が結ばれることが決定した後に、発行申請と手数料納付を経て交付されます。
試験の方針は、試験実施要領の記載事項として「合格証明書等の有効期限」を挙げており、期限は分野ごとに定められます。宿泊分野では合格証明書の有効期限は合格通知日から10年とされ、合格通知書の閲覧期間も同じく10年です。再交付は合格者本人または受入れ機関の申請により各1回に限り、合格通知日から10年に満たない時点での申請に限って行われます。
再交付が1回限りという分野もある以上、原本の保管ルールは社内で決めておくべきです。合格証明書の交付後に受験申請書の記載内容の偽りなどが判明した場合、合格が取り消される取扱いも定められています。
受入企業のスケジュール逆算
ここまでの要素を採用スケジュールに落とすと、押さえるべき期間は次のように整理できます。分野によって幅はありますが、「試験に受かった翌週に入社」という想定が現実的でない点は共通です。
実施要領と実施機関サイトで受験申込期間と試験日を確認。翌年度分が当年度中に公表される分野もあります。
合否の通知は試験実施日から30日以内、または試験実施後1か月以内という定めの分野があります。
発行申請と手数料納付を経て受入れ機関へ交付。雇用契約の締結が前提となる分野もあります。
在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請。合格は在留資格の付与を保証しません。
とくに注意したいのが日本語試験の制約です。JLPT N3以上が求められる業務区分では年2回の実施回に合わせて学習期間を設計しなければならず、技能評価試験だけを先行させても入社日は動きません。
不合格時のリカバリー期間も見込んでおきます。外食業分野特定技能1号評価試験では再受験は前に受けた試験の翌日から45日間あける必要があるとされ、JFT-Basicも200点未満だった場合は45日経過後の再受験です。1回目で決まらない前提を置くなら、入社目標日の3か月以上前に初回受験を終えている設計が無理のない線でしょう。
なお、試験の方針では、分野所管行政機関および試験実施機関が各事業年度終了後に試験実施状況報告書を制度所管行政機関へ提出し、確認を受けた後に公表するとされています。分野ごとの受験者数・合格者数の傾向は、採用の難易度を見積もる材料になります。
在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請、支援計画の作成といった手続は、TGPと連携する行政書士法人Treeが担当します(出入国在留管理庁への申請取次を含む行政書士業務は行政書士法人Treeが行うものであり、TGP自体が行うものではありません)。
よくある質問
まとめ
全分野共通の試験カレンダーは存在しません。特定技能評価試験は分野ごとに実施機関が異なり、入管庁の試験関係ページには16分野の技能評価試験実施機関が整理されています。全体像は試験実施予定一覧表、確定情報は分野別実施機関サイトという二段構えで確認してください。
実施回数と実施場所には国の枠組みがあります。「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」(令和7年3月11日)は、特定技能1号について事業年度ごとに2回以上の実施が望ましいとし、国外実施を前提としつつ在留資格を有する者を対象に国内でも実施することを基本としています。
受験資格の骨格は満17歳以上と在留資格です。国内受験は在留資格を有する者が対象で、法務大臣が告示で定める退去強制令書の円滑な執行に協力する外国政府等以外の国の者は受験できません。合格しても在留資格の付与や査証の発給は保証されない点を社内で共有しておいてください。
日本語試験の日程が計画を左右します。JFT-Basicは原則毎月のCBT実施で結果も当日に判明する一方、JLPTは年2回(7月・12月)です。JLPT N3以上が求められる業務区分では、実施回に合わせた学習計画が欠かせません。
合格から書類が揃うまでの日数を織り込みます。合否通知は試験実施日から30日以内または試験実施後1か月以内という定めがあり、合格証明書は発行申請と手数料納付を経て受入れ機関へ交付されます。宿泊分野の有効期限は合格通知日から10年、再交付は各1回限りです。再受験に45日の間隔が必要な試験もあるため、初回受験は余裕を持って設定してください。
本記事は現時点(2027年6月)の出入国在留管理庁の公表資料、「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」および分野別の試験実施要領等に基づき、特定技能評価試験の日程・会場・申込みについて一般的な情報を整理したものです。試験の実施回数・実施時期・実施場所・受験料・受験資格は分野ごとに定められ、改正・変更される場合があります。最新かつ正確な取扱いは出入国在留管理庁の公表資料および各試験実施機関の公表内容、専門家にご確認ください。