海外在住者を特定技能で採用|現地試験と入国前の流れ

海外に住む外国人を特定技能1号で採用する場合、国内在留者を採用する場合と違って、試験の受験資格、本国側の送出手続、在留資格認定証明書の交付申請、査証、入国当日の送迎までが一本の線でつながります。しかも事前ガイダンスのように「在留資格認定証明書の交付申請前」という順序が法令で固定されている工程があり、順番を誤ると申請そのものが止まります。本記事では、出入国在留管理庁の運用要領と上陸基準省令の規定に沿って、受入企業が海外在住者を採用する際の工程と期限を整理します。

海外在住者の採用は「入国前」の設計で決まる

特定技能1号での受入れは、海外から新たに入国してもらう場合と、技能実習生や留学生など既に日本に在留している人が在留資格を変更する場合に分かれます。手続の名称も、前者は在留資格認定証明書交付申請、後者は在留資格変更許可申請と別になります。

海外在住者の採用が読みにくくなるのは、国外で実施される試験、本国政府が定める送出手続、在外公館での査証申請という、受入企業が直接コントロールできない工程が挟まるためです。裏を返せば、企業側が主体的に動ける工程を前倒しで固めるほど全体の所要期間は安定します。特定産業分野は分野省令により19分野が定められており、自社の業務がどの分野・どの業務区分に当たるかで、受験すべき試験も分野別の上乗せ基準も変わります。

POINT 01
試験は国外で受ける

国内試験を受験できるのは在留資格を有して本邦に在留中の外国人とされています。

POINT 02
本国の手続を経る

本国で遵守すべき手続が定められている場合、当該手続を経ていることが必要です。

POINT 03
事前ガイダンスが先

在留資格認定証明書の交付申請前に実施していることが求められます。

現地試験ルート|技能試験と日本語試験で何を証明するか

特定技能1号の在留資格を得るには、上陸基準省令が求める技能水準と日本語能力水準を、試験その他の評価方法によって証明する必要があります。海外在住者は日本国内の試験を受けられないため、国外で実施される試験が入口になります。

技能水準と日本語能力水準

技能水準は、分野別運用方針で定められた技能測定試験の合格によって証明します。外食業分野であれば「外食業特定技能1号技能測定試験」が指定されています。日本語能力水準は、多くの分野で「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」、そのほか「日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められるものが指定されています。国際交流基金日本語基礎テストはCBT方式で原則として毎月実施され、10点から250点の得点範囲のうち200点以上がA2と判定されます。

分野によって要求水準が異なる

自動車運送業分野のうちタクシー運転者・バス運転者、鉄道分野のうち運輸係員はN3レベルの日本語能力が必要とされ、技能実習2号を良好に修了していても試験その他の評価方法による証明を要します。介護分野では介護日本語評価試験の合格も求められ、介護職種・介護作業の技能実習2号を良好に修了した者を除いて免除されません。

技能実習2号を良好に修了した人を呼び戻す場合

技能実習2号を良好に修了し、修得した技能が従事しようとする業務に必要な技能と関連性が認められる場合には、技能水準・日本語能力水準の要件に該当することを要しないとされています。帰国済みの元技能実習生を同じ分野で採用するときは、技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写し、あるいは技能実習生に関する評価調書(参考様式第1-2号)で立証します。

試験合格=在留資格の保証ではない

運用要領は、試験に合格したとしても、そのことをもって「特定技能」の在留資格が付与されることを保証したものではないと明記しています。なお、試験実施国以外の国籍を有する者が近隣国で実施される試験を受験することは妨げられていません。

上陸基準省令が海外在住者に課す要件

特定技能1号の上陸基準省令は、申請人本人に関する要件を第1号イからヘまでで列挙し、第2号以下で保証金・費用・本国手続などの条件を定めています。海外在住者の採用で確認が必要な項目は次のとおりです。

要件根拠確認点
18歳以上第1号イ交付申請時点で18歳未満でも申請は可能だが、上陸する時点で18歳以上であること
健康状態が良好第1号ロ新規入国は申請の日から遡って3か月以内の医師の診断。健康診断個人票(参考様式第1-3号)等を提出
技能水準・日本語能力水準第1号ハ・ニ技能実習2号を良好に修了し技能の関連性が認められる場合は該当することを要しない
旅券の発行国第1号ホ退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府等の発行した旅券
保証金・違約金がないこと第2号本人だけでなく配偶者・親族等も対象。名目を問わず金銭その他の財産を管理されていないこと
外国の機関への支払費用第3号取次ぎや渡航準備に関して費用を支払っている場合、額と内訳を十分に理解して合意していること
本国で遵守すべき手続第4号国籍国・住所地国に手続が定められている場合、当該手続を経ていること

健康診断は、新規入国では申請日から遡って3か月以内の診断が求められるのに対し、在留中の人が変更申請を行う場合は申請日から遡って1年以内に日本の医療機関で診断を受けていれば足りるとされています。受診日と申請日が離れすぎると診断書が使えなくなるため、受診時期は申請スケジュールから逆算してください。

保証金を認識していた場合の帰結

運用要領は、特定技能外国人およびその親族等が保証金の徴収や財産の管理をされ、または違約金契約を締結させられていることなどを認識したうえで雇用契約を締結して受け入れた場合、欠格事由に該当し5年間受入れができないこととなるとしています。

二国間協力覚書と本国側の送出手続

特定技能制度では、悪質な仲介事業者の排除を目的として、外国政府との情報共有の枠組みの構築を目的とする二国間取決め(協力覚書)を送出国政府との間で作成することとされています。ただし覚書は受入れの要件そのものではなく、運用要領は二国間取決めを作成した国以外の国籍を有する者であっても受け入れることは可能であると明記しています。一方、覚書で「遵守すべき手続」が定められている場合には、上陸基準省令第4号により当該手続を経ていることが必要です。

在留諸申請の際に独自の提出書類がある国

出入国在留管理庁は、カンボジア(登録証明書)、タイ(駐日タイ王国大使館労働担当官事務所の認証を受けた雇用契約書)、ベトナム(推薦者表(特定技能外国人表))を挙げています。これらの国の候補者を採用する場合、交付申請の添付書類として本国側で取得した書類が必要になります。

提出書類は不要だが送出手続が定められている国

フィリピン、ネパール、インドネシア、ミャンマー、モンゴル、バングラデシュ、パキスタン、ラオス、キルギスが挙げられています。手続の内容は国ごとに異なり更新もされるため、採用国が決まった段階で出入国在留管理庁の「特定技能に関する二国間の協力覚書」ページで最新の案内を確認してください。

職業紹介事業者が関与する場合

運用要領は、雇用契約の成立のあっせんを行う者が存在する場合、職業安定法第30条、第33条および第33条の3に基づく無料職業紹介の届出もしくは許可、または有料職業紹介事業の許可を得ている者から求人のあっせんを受けていることを求めています。

事前ガイダンスは在留資格認定証明書の申請「前」に終える

特定技能基準省令第3条第1項第1号イは、在留資格認定証明書の交付の申請前に、特定技能雇用契約の内容、本邦において行うことができる活動の内容、上陸および在留のための条件その他の留意すべき事項に関する情報の提供を実施することを求めています。運用要領は、労働条件など契約締結前に本人が把握することが望ましい情報が含まれることから、実施は特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望まれるとしています。

情報提供しなければならない事項

実施方法と時間

事前ガイダンスは、対面またはテレビ電話装置その他の方法により本人であることの確認を行った上で実施することが求められ、運用要領は文書の郵送や電子メールの送信のみによることは認められませんと明記しています。時間は、情報提供する事項を十分に理解するためには3時間程度行うことが必要と考えられるとされ、1時間に満たないような場合は適切に行ったとはいえないとされています。実施後は、事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号)に署名を得ます。

現地送出機関への委託は慎重に

運用要領は、実施を現地の送出機関に委託することも排除はされないとしつつ、送出機関が保証金を徴収しているような場合には適切に実施することが期待できないため、支援の体制の基準を満たしていないと判断される可能性があるとしています。

在留資格認定証明書の交付申請から査証・入国まで

事前ガイダンスまで終えたら、在留資格認定証明書交付申請に進みます。申請先は居住予定地または受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署で、手数料はかかりません。標準処理期間は1か月から3か月です。

1
在留資格認定証明書交付申請

申請書のほか、申請人・所属機関・分野に関する必要書類を提出します。同一年度内に既に特定技能外国人を受け入れている所属機関は、所属機関に関する書類の提出が不要とされています。

2
在留資格認定証明書の受領

令和5年3月17日から電子メールでの受領が可能です。オンライン申請時に受領方法として「メール」を選択するか、窓口申請では電子交付希望申出書を提出します。

3
在外公館での査証申請

電子交付を受けた場合、本人がスマートフォン等で電子メールを提示して査証申請および上陸申請を行うことができます。

4
渡航・上陸

在留資格認定証明書の有効期間は交付日から3か月以内です。査証発給後、この期間内に入国できるよう航空券を手配します。

査証の審査は入管の審査とは別物です。運用要領は、在留資格認定証明書の交付を受けたとしても査証申請については別途外務省による審査が行われるところ、必ずしも査証の発給を受けられるものではないとしています。外務省が示す標準的な審査期間は、申請内容に特段の問題がない場合で申請受理の翌日から5業務日ですが、申請件数が多い時期や追加確認が必要な場合はさらに日数を要するとされています。

入国当日と入国直後にやるべきこと

空港での出迎えと送迎

特定技能基準省令第3条第1項第1号ロは、外国人が出入国しようとする港または飛行場において送迎をすることを支援計画の記載事項としています。入国時は、上陸の手続を受ける港または飛行場と特定技能所属機関の事業所(または本人の住居)の間の送迎が義務的支援であり、実費は特定技能所属機関等が負担します。運用要領は、送迎が過度な負担にならないよう、事前ガイダンスの機会に最寄りの港または飛行場を案内するなど、出迎えに適した入国経路を決めておくことを推奨しています。

登録支援機関が車両で送迎する場合

運用要領は、生活支援サービスなどとの一体運送を除いて、登録支援機関が道路運送法上の必要な許可を受けていなければ道路運送法違反となる可能性が高いため、公共交通機関を利用するよう案内しています。

在留カードの交付と住居地の届出

新千歳、仙台、成田、羽田、中部、関西、神戸、広島、福岡、那覇の各空港では、上陸許可により中長期在留者となった人にその場で在留カードが交付されます。それ以外の出入国港では旅券に「在留カードを後日交付する」旨が記載され、市区町村へ住居地を届け出た後に交付されます。住居地の届出は、住居地を定めてから14日以内に市区町村の窓口で行い、住民基本台帳制度の転入届と一括して行うことができます。

住居の確保と生活オリエンテーション

適切な住居の確保に係る支援も義務的支援です。居室の広さは1人当たり7.5平方メートル以上が求められ、借上物件の敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金は特定技能外国人に負担させることができません。入国後は遅滞なく生活オリエンテーションを実施します。運用要領は、少なくとも8時間以上行うことが必要と考えられるとしており、実施後は生活オリエンテーションの確認書(参考様式第5-8号)に署名を得て記録します。

費用負担とスケジュール設計の実務ポイント

運用要領は、義務的支援に要する費用について、直接または間接に特定技能外国人に負担させることはできないとしています。空港送迎の実費や事前ガイダンス・生活オリエンテーションの実施費用は受入企業側の負担です。一方、送出しに必要となる費用(渡航前の技能または日本語の教育費や渡航費用など)は、送出し国の法令やガイドラインを踏まえて特定技能所属機関がその全部または一部を負担することが推奨されるという整理になっています。

渡航準備費用の貸付けは可能

運用要領は、往路の航空券代を含む渡航準備費用や入国後の当面の生活費等のため、特定技能所属機関等が貸し付けをすることは差し支えないとしています。ただし、一定期間の勤務を停止条件として返済を免除する契約や、返済途中に退職した場合に残額を一括返済させる契約は、不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約に該当するとされています。

逆算でスケジュールを組む

工程公表されている期間・期限設計上の意味
健康診断の受診申請日から遡って3か月以内早すぎると申請時に無効になる
事前ガイダンス交付申請前(3時間程度)時差を考慮した日程確保。契約締結時以前が望ましい
交付申請標準処理期間 1か月〜3か月就労開始希望日から逆算する起点
査証申請申請受理の翌日から5業務日(標準)件数が多い時期等はさらに日数を要する
入国交付日から3か月以内本国側の送出手続と航空券手配をこの期間内に収める

本国側の送出手続に要する期間は国ごとに異なり、公表資料から一律に読み取ることはできません。採用国が決まった段階で、現地手続の所要期間を含めて全体工程を引き直すことをおすすめします。

よくある質問

海外在住者は日本国内の試験を受けられますか。
受けられません。運用要領は、国内試験を受験できるのは在留資格を有して本邦に在留中の外国人であり、「短期滞在」の在留資格を有する者も含まれるが、不法残留者などの在留資格を有しない者は含まれないとしています。海外在住者は国外で実施される試験を受験することになります。なお、試験実施国以外の国籍を有する者が近隣国で実施される試験を受験することは妨げられていません。
事前ガイダンスはいつまでに実施する必要がありますか。
特定技能基準省令第3条第1項第1号イは、在留資格認定証明書の交付の申請前に情報提供を実施することを求めています。運用要領は、労働条件など契約締結前に本人が把握することが望ましい情報が含まれることから、特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望まれるとしています。対面またはテレビ電話装置その他の方法で本人確認を行った上で実施し、文書の郵送や電子メールの送信のみによることは認められません。
在留資格認定証明書が交付されれば、必ず入国できますか。
運用要領は、在留資格認定証明書の交付を受けたとしても査証申請については別途外務省による審査が行われるところ、必ずしも査証の発給を受けられるものではないとしています。また在留資格認定証明書の有効期間は交付日から3か月以内とされているため、交付後は査証申請と渡航の日程を有効期間内に収める必要があります。
現地の送出機関に支払う費用は誰が負担するのですか。
上陸基準省令は、契約の申込みの取次ぎや外国における活動の準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合、その額および内訳を十分に理解して当該機関との間で合意していることを求めています。運用要領は、送出しに必要となる費用(渡航前の技能または日本語の教育費や渡航費用など)について、特定技能所属機関がその全部または一部を負担することを推奨しています。義務的支援に要する費用は外国人に負担させることができません。
空港への出迎えはどこまで行う必要がありますか。
上陸の手続を受ける港または飛行場と特定技能所属機関の事業所(または本人の住居)の間の送迎が義務的支援で、実費は特定技能所属機関等の負担です。運用要領は、事前ガイダンスの機会に最寄りの港または飛行場を案内するなど、出迎えに適した入国経路を決めておくことを推奨しています。登録支援機関が車両で送迎する場合は道路運送法上の許可に注意が必要です。

まとめ

本記事は現時点(2026年8月)の出入国在留管理庁の運用要領等の公表内容および関係法令に基づき、海外在住者を特定技能1号で受け入れる場合の手続について一般的な情報を整理したものです。制度・基準・運用および各国の送出手続は改正される場合があり、個別事案への適用は条件により異なります。最新かつ正確な取扱いは出入国在留管理庁の公表資料および専門家にご確認ください。