住居確保は義務的支援の一つ
特定技能1号外国人を受け入れる機関(受入企業)は、職業生活・日常生活・社会生活の各面で外国人を支援する「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、これを確実に実施する義務を負います。支援には「義務的支援」と「任意的支援」があり、義務的支援は必ず実施しなければなりません。
義務的支援には、入国前の事前ガイダンス、出入国時の送迎、生活オリエンテーション、公的手続等への同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、非自発的離職時の転職支援などがあり、その一つに「適切な住居の確保に係る支援」が含まれます。
住居確保支援は、受入企業が自社で行うことも、登録支援機関に委託して行うこともできます。委託する場合の費用相場は外国人1人当たり月額2〜3万円程度(平均おおむね2.8万円前後)が目安です。委託しても住居確保の責任が消えるわけではなく、内容の適切性を確認する立場は受入企業に残ります。
住居確保支援の3つの方法
外国人本人が自ら住居を確保できない場合、受入企業は本人の希望を踏まえて、次のいずれかの方法で住居の確保を支援します。運用要領上、主に3つの類型が示されています。
| 方法 | 契約名義(借主) | 支援の中心 |
|---|---|---|
| (1)本人が借主となる賃貸借契約を支援 | 外国人本人 | 不動産仲介業者・物件情報の提供、内見・契約手続への同行、連帯保証人の確保または保証会社の利用支援 |
| (2)受入企業が借主となり提供(転貸・借上げ社宅) | 受入企業 | 企業が賃貸借契約を締結し、本人の同意を得て住居として提供 |
| (3)企業が所有する社宅・寮を提供 | (自社所有) | 受入企業が所有する社宅・社員寮を、本人の同意を得て提供 |
(1)の場合、賃貸借契約で連帯保証人が必要なときは、受入企業が連帯保証人となるか、利用可能な家賃債務保証業者を確保したうえで受入企業が緊急連絡先となるといった支援が求められます。外国人にとって連帯保証人の確保は実務上もっとも高いハードルとなりやすいため、企業側の関与が前提とされています。
社宅提供と賃貸借契約の比較
どの方法を選ぶかは、外国人本人の希望が出発点になりますが、企業側の運用負担や物件確保のしやすさも考慮して設計します。
- 本人名義の賃貸(方法1):本人が契約当事者となるため、退職・転職後の契約整理が比較的シンプル。ただし連帯保証人や審査の壁があり、企業のサポートが手厚く必要です。
- 借上げ社宅(方法2):企業がまとめて契約・管理でき、複数人の受け入れに向きます。退職時の明渡しや原状回復を企業側でコントロールしやすい一方、空室リスクや家賃の立替・回収管理が発生します。
- 自社所有の社宅・寮(方法3):継続的に複数人を受け入れる企業に適し、家賃負担を抑えやすい反面、後述の面積基準や設備の適切性を自社で確保する必要があります。
方法(2)(3)のように企業が住居を提供する場合でも、企業が住居の提供によって利益を得ることは認められません。本人から徴収できるのは実費・合理的な金額に限られます。詳細は後述します。
居室の面積基準(1人当たり7.5平方メートル以上)
提供する住居は、外国人が安定的・継続的に生活できる適切なものでなければなりません。運用要領では、居室の広さについて1人当たり7.5平方メートル以上(おおむね4.5畳以上)を原則としています。
複数人で一つの住居を共同利用(ルームシェア)する場合は、居室全体の面積を居住人数で割った値が1人当たり7.5平方メートル以上である必要があります。トイレ・浴室・台所などの共用部分を除いた「居室」部分で判断する点に注意してください。
面積基準は、入居後に同居人が増えるなどして1人当たりの面積が基準を下回ることのないよう、入居人数の管理とあわせて運用することが重要です。
技能実習からの移行と面積基準の例外
技能実習2号などから特定技能1号へ在留資格を変更する外国人については、面積基準に例外が設けられています。
具体的には、技能実習生として従前から住んでいる社宅等に引き続き居住することを希望する場合、上記の1人当たり7.5平方メートル以上の基準を満たしていなくても差し支えないとされています。住み慣れた住居での生活継続を尊重する趣旨です。
この場合でも、技能実習生に求められていた寝室は1人当たり4.5平方メートル以上(おおむね寝床部分として確保すべき広さ)という基準を満たしていることが前提となります。新たに住居を移る場合や、技能実習からの単純な継続に当たらない場合は、原則どおり7.5平方メートル以上の基準で判断します。
- 継続入居・本人希望が前提 → 7.5平方メートル基準の例外が適用され得る
- ただし寝室4.5平方メートル以上は満たすこと
- 転居・新規契約の場合は原則の7.5平方メートル基準で判断
敷金・礼金・家賃の合理的な負担と給与天引き
住居に関する費用負担は、トラブルになりやすいポイントです。運用要領の考え方を踏まえると、次の点に注意が必要です。
- 企業が利益を得ないこと:企業が借主となって提供する場合や社宅を提供する場合、本人から徴収できるのは家賃・共益費(管理費)などの実費・合理的な金額に限られ、企業が上乗せして利益を得ることは認められません。
- 家賃の合理性:本人が負担する家賃は、物件の広さや地域の相場に照らして合理的な範囲である必要があります。同種の物件と比べて著しく高額な設定は適切ではありません。
- 給与からの天引き:家賃等を給与から控除(天引き)する場合は、本人の事前の書面による同意が必要です。控除額は実費等の範囲にとどめ、控除の内訳が本人に明確に示されていることが求められます。労働基準法上の賃金控除に関する手続(労使協定等)にも留意が必要です。
敷金・礼金を含む初期費用を誰がどこまで負担するかは、契約前に書面で明確化しておくことが重要です。「住居の提供で利益を得ない」「本人負担は実費・合理的範囲」「天引きは書面同意」の3点を外すと、支援の不適切実施として指摘を受けるおそれがあります。
退去時の支援と継続的な対応
住居確保支援は入居時で完結するものではありません。受入企業には、賃貸借契約に関する継続的な支援が求められます。
- 退去・転居時の支援:本人が転職・帰国などで退去する際の解約手続、原状回復、敷金精算などについて、必要に応じて案内・同行する。
- 契約更新・トラブル対応:契約更新や近隣トラブル、設備不具合などが生じた場合の相談対応・橋渡し。
- 非自発的離職時:受入企業側の都合で雇用契約が解除された場合など、転職支援とあわせて新たな住居確保にも配慮する。
住居は外国人の生活の基盤であり、ここが安定しないと就労継続にも影響します。入居から退去まで一貫して支援する体制を整えることが、定着率の向上にもつながります。
受入企業が押さえるべき実務ポイント
最後に、住居確保支援を適切に行うためのチェックポイントを整理します。なお、特定技能の対象分野は2026年1月の閣議決定によりリネンサプライ・物流倉庫・資源循環が追加され、現在19分野となっています(新3分野の本格的な受け入れは2027年度以降の見込み)。あわせて、技能実習に代わる育成就労制度が2027年4月から開始される予定であり、今後の移行ルートも見据えた住居設計が望まれます。
- 本人の希望を確認し、3つの方法から適切なものを選ぶ
- 居室1人当たり7.5平方メートル以上を確保(技能実習からの継続入居は例外あり)
- 連帯保証人・緊急連絡先の引受体制を整える
- 住居提供で利益を得ない、本人負担は実費・合理的範囲
- 給与天引きは書面同意を取得し内訳を明示
- 入居から退去まで継続的に支援する
在留資格申請や支援計画の作成・適合性の確認といった専門的手続は、TGPと連携する行政書士法人Treeが対応します(出入国在留管理庁への申請取次を含む行政書士業務は行政書士法人Treeが担い、TGP自体が行うものではありません)。住居確保を含む受け入れ全体の設計について、専門家と連携して進めることをおすすめします。
よくある質問
まとめ
- 特定技能1号の「適切な住居の確保に係る支援」は義務的支援の一つで、受入企業に実施義務がある(委託可、相場は月2〜3万円程度)
- 住居確保支援には(1)本人名義の賃貸契約支援、(2)企業が借主となる借上げ社宅、(3)自社所有の社宅・寮提供の3類型がある
- 居室は原則1人当たり7.5平方メートル以上(約4.5畳以上)。共同利用は人数で割った面積で判断する
- 技能実習から移行し従前の社宅に継続居住する場合は7.5平方メートル基準の例外あり(寝室4.5平方メートル以上は必要)
- 住居提供で企業が利益を得ることは不可。本人負担は実費・合理的範囲に限り、給与天引きには書面同意が必要
- 退去・更新・トラブル対応まで継続的に支援する。対象分野は2026年1月に19分野へ拡大、育成就労は2027年4月開始予定
本記事は現時点(2026年6月)の出入国在留管理庁の運用要領等の公表内容に基づき、特定技能1号外国人の住居確保支援について一般的な情報を整理したものです。制度・基準・運用は改正される場合があり、個別事案への適用は条件により異なります。最新かつ正確な取扱いは出入国在留管理庁の公表資料および専門家にご確認ください。