特定技能の義務的支援10項目|受入機関・登録支援機関の実務ガイド

特定技能1号外国人を受け入れる企業(受入機関)には、職業生活・日常生活・社会生活にわたる「義務的支援」10項目の実施が法令上義務づけられています。これらは「1号特定技能外国人支援計画」に基づき、受入機関自らが行うか、登録支援機関に委託して実施します。本記事では、出入国在留管理庁の運用要領をふまえ、10項目それぞれの具体的内容・実施タイミング・委託の可否・支援責任者および支援担当者の選任要件までを、実務目線で整理します。

義務的支援とは|10項目の全体像と任意的支援との違い

特定技能1号外国人への支援は、必ず実施しなければならない「義務的支援」と、実施することが望ましい「任意的支援」に分かれます。義務的支援は省令で定められた10項目から成り、そのすべてを漏れなく実施する必要があります。一つでも欠けると支援計画の基準を満たさず、受入れの適正性が問われます。

受入機関は、1号特定技能外国人が安定的かつ円滑に活動できるよう「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、この計画に基づいて支援を行います。支援計画は在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請の際に提出し、記載内容に変更が生じた場合は届出が必要です。

義務的支援10項目は、(1)事前ガイダンス (2)出入国する際の送迎 (3)適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約支援 (4)生活オリエンテーション (5)公的手続等への同行 (6)日本語学習の機会の提供 (7)相談・苦情への対応 (8)日本人との交流促進 (9)転職支援(非自発的離職時) (10)定期的な面談・行政機関への通報、で構成されます。

入国・着任前後の支援(項目1〜4)

採用から着任直後までに集中する4項目です。実施のタイミングが法令上明確に定められている点に注意します。

(1) 事前ガイダンス

雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前(または在留資格変更許可申請前)に、労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無などを説明します。対面またはテレビ電話等の方法で、本人が十分に理解できる言語により行うことが求められます。書面のみの交付では足りません。

(2) 出入国する際の送迎

入国時には空港等から事業所または住居までの送迎を行います。帰国時には、空港の保安検査場まで同行し、入場を確認します。

(3) 適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約支援

連帯保証人になる、社宅を提供するなどの方法で住居の確保を支援します。あわせて、銀行口座の開設、携帯電話やライフライン(電気・ガス・水道)の契約手続を案内・補助します。

(4) 生活オリエンテーション

日本のルールやマナー、公共機関の利用方法、災害時の対応などを説明します。出入国在留管理庁が多言語で公開している生活オリエンテーション用動画を活用することもできます。

在留中の継続的支援(項目5〜8)

就労期間を通じて継続的に提供する支援です。発生の都度、または定期的に対応します。

(5) 公的手続等への同行

住居地・社会保障・税などに関する手続が必要な場合に同行し、書類作成の補助を行います。

(6) 日本語学習の機会の提供

日本語教室への入学案内や、自主学習用の教材・オンライン講座などの情報提供を行います。受入機関に費用負担までは義務づけられていませんが、機会の提供は義務です。

(7) 相談・苦情への対応

職場や生活上の相談・苦情に対し、本人が十分に理解できる言語で対応し、内容に応じて必要な助言・指導を行います。相談に応じる体制(連絡手段・対応時間帯等)の整備も含まれます。

(8) 日本人との交流促進

自治会や地域行事への参加案内・補助など、地域社会との交流を促す支援を行います。

離職・定期管理に関する支援(項目9・10)

(9) 転職支援(非自発的離職時)

受入機関側の都合など、本人の責めによらない理由で雇用契約を解除する場合に、次の受入先を探す手伝い、推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与、必要な行政手続の情報提供などを行います。本人の自己都合による退職は対象外で、あくまで非自発的離職時の支援である点を正しく理解しておく必要があります。

(10) 定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者または支援担当者が、特定技能外国人およびその監督をする立場の者(上司等)と、3か月に1回以上の頻度で定期面談を実施します。面談を通じて労働基準法違反や入管法令違反などを把握した場合は、関係行政機関へ通報します。

定期面談は形式的な実施では足りません。面談記録の作成・保管は届出・調査の対象となるため、実施日・面談者・聴取内容を記録に残し、把握した問題には速やかに対応してください。

支援責任者・支援担当者の選任要件

支援を適正に行う体制として、受入機関は役職員の中から支援責任者および支援担当者(事業所ごとに1名以上)を選任しなければなりません。両者は兼任が可能です。

選任にあたっては、たとえば「過去2年間に中長期在留者(就労資格に限る)の生活相談等に従事した経験を有する者」など、支援業務を適正に実施できることが求められます。

中立性の要件に注意。支援責任者・支援担当者は、当該特定技能外国人に対する指揮命令権を有しない中立的な立場の者である必要があります。代表取締役や、本人が所属する部署を監督する長など、組織図上の縦のラインにある者は、本人を監督する立場にあたるため適格性がないとされます。

なお、支援計画には支援責任者・支援担当者の氏名および役職等を記載します。支援体制を整えられない場合は、後述の登録支援機関への委託が現実的な選択肢となります。

登録支援機関への委託|全部委託と一部委託

義務的支援10項目は、受入機関が自ら実施するほか、登録支援機関へ委託して実施することもできます。委託には全部委託と一部委託があります。

区分内容支援体制基準の扱い
全部委託10項目すべての実施を登録支援機関へ委託受入機関が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされる
一部委託一部の項目のみ委託し、残りは自社で実施自社実施分について受入機関が支援体制の基準を満たす必要がある

登録支援機関は、出入国在留管理庁長官の登録を受けた個人・団体で、受入機関との支援委託契約に基づいて支援を行います。委託費用は対象者数や分野によりますが、1人あたり月額2〜3万円程度が一つの目安です。

支援体制を自前で整えるリソースがない、相談対応言語を確保できないといった場合は、登録支援機関への全部委託が実務上もっとも確実です。委託しても、雇用契約の主体である受入機関の責任がなくなるわけではありません。

支援計画への記載と各種届出

義務的支援10項目は、すべて「1号特定技能外国人支援計画」に具体的に記載します。記載すべき主な事項は次のとおりです。

支援計画は本人が理解できる言語でも作成・説明し、署名を得ます。在留申請時に提出するほか、内容に変更があった場合や支援が適切に行われなかった場合などは、所定の届出が必要です。届出を怠ると受入れの適正性が問われ、新規受入れに影響する可能性があります。

2026年時点の制度動向|対象分野19・育成就労への移行

支援義務の枠組みを理解するうえで、制度全体の動きもあわせて押さえておきます。

本記事の出典は出入国在留管理庁の運用要領等です。なお、ビザ申請・登録支援機関としての支援業務は、当社の提携先である行政書士法人Treeが担います。treeglobalpartners.com(TGP)自体はビザ申請手続の代理を行いません。

よくある質問

義務的支援10項目は一部だけ実施すればよいですか。
いいえ。10項目はすべてが義務であり、一つでも欠けると1号特定技能外国人支援計画の基準を満たしません。任意的支援とは異なり、選択的に省略することはできません。自社で全項目を実施できない場合は、登録支援機関への委託を検討してください。
事前ガイダンスは書面の交付だけでよいですか。
いいえ。事前ガイダンスは対面またはテレビ電話等の方法で、本人が十分に理解できる言語により行う必要があります。タイミングは雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前(または在留資格変更許可申請前)です。書面の交付のみでは要件を満たしません。
定期面談はどのくらいの頻度で行いますか。
3か月に1回以上の頻度で、支援責任者または支援担当者が特定技能外国人本人および監督する立場の者と面談します。面談で労働基準法違反や入管法令違反などを把握した場合は、関係行政機関へ通報する義務があります。面談記録は作成・保管してください。
支援責任者は社長や直属の上司でもなれますか。
なれません。支援責任者・支援担当者には中立性が求められ、当該外国人に対する指揮命令権を有しない者である必要があります。代表取締役や、本人が所属する部署を監督する長など組織図上の縦のラインにある者は適格性がないとされます。事業所ごとに1名以上の選任が必要で、責任者と担当者の兼任は可能です。
登録支援機関に全部委託すれば、受入機関の責任はなくなりますか。
いいえ。10項目すべてを登録支援機関に委託した場合、受入機関が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされますが、雇用契約の主体である受入機関としての責任が消えるわけではありません。委託費用は1人あたり月額2〜3万円程度が目安です。

まとめ

本記事は2026年6月時点の出入国在留管理庁の公表情報(運用要領等)に基づき作成しています。義務的支援の内容・実施基準・対象分野・各種手続は今後改正される可能性があります。実際の支援計画の作成・運用にあたっては、現時点の最新の公式情報を出入国在留管理庁のウェブサイト等でご確認のうえ、必要に応じて専門家へご相談ください。