特定技能外国人の在留者数は2025年末時点で約39万人に達し、前年同期比37.2%増(出入国在留管理庁)のペースで拡大しています。食品製造・建設・介護・農業など、多岐にわたる分野で外国人材の受入れが加速する中、「そろそろ検討したいが、何から始めればいいかわからない」という企業の担当者は少なくありません。
本記事はそのような企業のために作成したシリーズ30記事の総まとめ記事です。「制度の全体像を把握する」「採用ルートを決める」「手続きを進める」「採用後の支援・定着を管理する」という4つのフェーズに沿って、外国人採用の流れを俯瞰できるようにロードマップ形式で整理しました。各テーマの詳細は本文中の個別記事リンクからご確認ください。
ロードマップ全体像——4フェーズの概要
外国人採用は「一度手続きすれば終わり」ではなく、採用の準備から定着支援まで継続的な関与が求められるプロセスです。大きく4つのフェーズに分けて考えると、全体の構造が把握しやすくなります。
| フェーズ | 主な作業 | 所要期間(目安) | 関連する詳細記事 |
|---|---|---|---|
| フェーズ1 制度理解 |
在留資格・受入れ分野・自社の要件確認 | 1〜2週間 | 特定技能とは / 16分野一覧 |
| フェーズ2 採用活動 |
候補者の探索・面接・雇用契約締結 | 1〜3か月 | 雇用の流れ / 採用面接 |
| フェーズ3 ビザ申請 |
支援計画作成・在留資格申請・入管審査 | 2〜4か月(国内)/ 4〜6か月(海外) | ビザ申請 / 支援計画 |
| フェーズ4 受入れ・定着 |
就業開始・住居確保・定期届出・定着支援 | 就労期間中(継続) | 住居確保 / 定着率向上 |
フェーズ1: 制度理解——特定技能とは何か
外国人採用に際して、まず理解しておくべき制度の枠組みがあります。「どの在留資格で採用するか」という判断が、その後の手続きの全体を左右します。
特定技能制度の基本構造
特定技能は2019年4月に新設された在留資格で、深刻な人手不足が生じている特定の産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための制度です。現在(2026年4月時点)、対象は16分野とされています(出入国在留管理庁)。
詳しくは 特定技能とは?制度の基本を解説 をご参照ください。また、1号・2号の違いについては 特定技能1号・2号の違いと移行要件 で整理しています。
対象16分野の確認——自社が該当するか
特定技能で外国人を受け入れられるのは、法定の16分野に限られます。自社の事業がどの分野に該当するかを最初に確認することが出発点です。
| 分野グループ | 対象分野 |
|---|---|
| 製造・技術系 | 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、造船・舶用工業 |
| 建設・インフラ系 | 建設、鉄道、自動車運送業 |
| 農林水産系 | 農業、漁業、林業、木材産業 |
| サービス系 | 介護、ビルクリーニング、宿泊、飲食料品製造業、外食業 |
対象分野の詳細な要件・特定技能区分・試験科目については 特定技能16分野一覧と受入れ要件 で詳しく解説しています。
受入れ機関としての要件確認
特定技能外国人を受け入れる企業(受入れ機関)は、以下の基準を満たす必要があります。主要な確認事項を挙げます。
- 労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令を遵守していること
- 1年以内に行方不明者を発生させていないこと
- 特定技能外国人に対する支援計画を策定できること(または登録支援機関に委託すること)
- 欠格事由(出入国管理及び難民認定法に規定)に該当しないこと
フェーズ2: 採用活動——候補者探しから内定まで
制度の枠組みを理解したら、実際の採用活動に入ります。特定技能外国人の採用ルートは大きく2つあり、候補者の所在によって手続きの流れが異なります。
採用ルート①: 国内在留者を採用する
日本国内にすでに在留している外国人(技能実習2号を修了した方、他の在留資格で在留中の方など)を採用するルートです。在留資格の「変更許可」申請を行います。
- 就労開始までの期間が比較的短い(在留資格変更の審査期間:概ね1〜3か月)
- 日本語・生活習慣の適応がある程度できている方が多い
- 技能実習2号を修了した方は、特定技能1号の技能試験・日本語試験が免除される
採用ルート②: 海外在住者を採用する
母国等に在住する外国人を新たに招聘するルートです。「在留資格認定証明書」を取得した後、現地でのビザ申請・入国という流れになります。
- 就労開始までの期間は4〜6か月程度が目安(審査期間含む)
- 特定技能の技能試験・日本語試験に合格していることが要件(または技能実習2号修了等の免除条件を満たすこと)
- 海外での試験合格者を探すためには海外の人材紹介会社の活用が一般的
面接・選考のポイント
外国人候補者との面接では、在留資格の確認・就労可否の確認に加え、日本語コミュニケーション能力・職務経験・定着意欲を見極めることが重要です。一方、国籍・宗教・出身地等に関する質問は避けなければなりません。
面接で確認すべき事項と法的NGポイントの詳細は 外国人採用の面接で聞くべき質問と注意点 で解説しています。
採用の全体的な流れについては 外国人雇用の基本的な流れ もあわせてご確認ください。
フェーズ3: ビザ申請——在留資格の取得手続き
内定を出した後、実際に就労を開始するには在留資格の取得・変更が必要です。このフェーズでは、支援計画の策定と入管への申請が並行して進みます。
支援計画の作成(義務的支援10項目)
特定技能1号外国人の受入れ機関は、義務的支援10項目を含む「1号特定技能外国人支援計画」を策定し、在留資格申請時に提出する必要があります。10項目の内訳は以下のとおりです。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
支援計画の詳細な作成方法・各項目の具体的内容については 特定技能の支援計画とは?義務的支援10項目と最新制度改正 で解説しています。
ビザ申請の手続きと必要書類
在留資格の申請(認定証明書交付申請または変更許可申請)は、入管への書類提出が必要です。必要書類は申請の種類・分野によって異なりますが、主要なものには雇用契約書・支援計画書・特定技能所属機関の概要書類・外国人の試験合格証明等が含まれます。
ビザ申請の具体的な手順・書類一覧は 特定技能のビザ申請手順と必要書類 をご参照ください。
行政書士への依頼を検討すべき理由
入管への申請書類は複雑で、記載ミスや書類不足があると審査が長期化する場合があります。申請取次行政書士に依頼することで、書類の正確な準備・審査対応のサポートを受けられます。
行政書士への依頼費用と手続きの詳細は 行政書士に依頼する外国人ビザ申請|費用と依頼するメリット で整理しています。
フェーズ4: 受入れ準備と定着支援
在留資格が許可されてからが、実務上の本番です。就業開始前の準備・入社後の支援・定期的な届出管理という3つの軸で取り組む必要があります。
就業開始前の準備——住居・生活基盤の整備
特定技能1号外国人には住居確保の「支援義務」があります。自社寮の提供・借り上げ社宅・本人契約サポートの3パターンから選択し、支援計画に記載した内容を実施する必要があります。住居の最低面積基準(1人7.5㎡以上)にも注意が必要です。
住居確保の具体的なルールと費用については 特定技能外国人の住居確保|企業の義務と支援3パターン を参照してください。
雇用後に必要な届出の管理
外国人を雇用した後は、複数の行政機関への届出が発生します。届出を怠ると、指導・改善命令等の対象になる場合があります。
- ハローワーク: 外国人雇用状況届出(雇入れ・離職の翌月末日まで)
- 入管庁: 特定技能に関する定期届出(毎年4月1日〜5月31日)、随時届出(契約変更等)
- 年金事務所・健康保険組合: 社会保険の資格取得届
届出の種類・期限・様式の一覧は 外国人雇用で必要な届出一覧 でまとめています。
労働法令の適用——外国人にも同じルールが適用される
外国人労働者にも労働基準法・最低賃金法・社会保険関係法令は全面適用されます。「外国人だから」という理由で最低賃金を下回る給与を設定したり、社会保険に加入させなかったりすることは法令違反です。
外国人雇用における労働法令の実務ポイントは 外国人を雇用する際の労働法ガイド で詳しく解説しています。
定着支援——採用後の定着率向上が重要
特定技能外国人の3年半累計離職率は16.1%(出入国在留管理庁)とされており、採用後の定着支援が長期的なコスト効率に直結します。日本語学習機会の提供・定期面談・相談窓口の整備・キャリアパスの明示などが有効な施策として挙げられます。
定着率を向上させる具体的な5つの施策は 外国人労働者の定着率を上げる5つの施策 をご参照ください。
登録支援機関の活用
義務的支援10項目の全部または一部を、登録支援機関に委託することができます。初めて特定技能を受け入れる中小企業では、登録支援機関に支援の全部を委託することで、受入れ機関自身が支援体制を整備していなくても受入れが可能になります。委託費用は市場平均で月額約2〜3万円程度です。
登録支援機関の役割・選び方・費用相場の詳細は以下の記事をご参照ください。
費用の全体感——採用コストの構造を把握する
「外国人採用は費用がかかる」というイメージを持つ企業は多いですが、コストの内訳を理解した上で適切な事業者を選べば、日本人採用と比較して決して割高ではない場合があります。
特定技能採用における主要コスト項目
| コスト項目 | 相場・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 人材紹介手数料 | 1人あたり20〜80万円(一般的な相場) TGPは0円から |
中間手数料なしの事業者を選ぶことで大幅削減可 |
| 在留資格申請費用(行政書士) | 認定証明書交付: 平均約11.4万円 在留期間更新等: 平均約5.4万円 |
行政書士法人Treeの場合 |
| 月次登録支援委託費 | 市場平均: 月額2〜3万円程度 行政書士法人Tree: 9,800円(税抜)/人〜 |
支援の全部委託か一部委託かで変わる |
| 入管への申請印紙代 | 窓口6,000円 / オンライン5,500円(認定証明書交付は無料) | 在留資格変更・更新の場合(2025年4月改定後) |
| 住居確保費用 | 借り上げ社宅方式の場合: 敷金・礼金・保証料(全額企業負担) | 自社寮利用の場合は不要 |
特に人材紹介手数料については、仲介業者を多数経由する構造では最終的な費用が膨らむ傾向があります。中間手数料を排除した直接紹介のルートを選ぶことが、採用コスト削減の最も効果的な方法の一つです。
役割分担の整理——何を誰が担当するか
外国人採用では複数の専門領域にまたがる手続きが発生するため、「誰が何を担当するか」を整理しておくことが実務上の混乱を防ぎます。
| 業務内容 | 担当できる主体 | TGPグループでの担当 |
|---|---|---|
| 外国人候補者の発掘・紹介 | 有料職業紹介事業者(許可取得済み) | 株式会社TreeGlobalPartners |
| 在留資格申請の代行 | 申請取次行政書士・弁護士 | 行政書士法人Tree |
| 登録支援機関としての支援 | 登録支援機関(出入国在留管理庁登録) | 行政書士法人Tree |
| 雇用契約・労働条件通知書の作成 | 受入れ機関(自社) | 受入れ企業が主体(専門家相談推奨) |
| 社会保険・ハローワーク届出 | 受入れ機関または社会保険労務士 | 受入れ企業が主体 |
重要なのは、有料職業紹介(人材紹介)とビザ申請・登録支援は、それぞれ別の許認可が必要な業務であるという点です。「人材紹介もビザ申請も登録支援も全部うちでやります」という事業者が、適切な許認可を持っているかどうかの確認が必要です。
行政書士への依頼の詳細は 行政書士に依頼する外国人ビザ申請|費用と依頼するメリット をご参照ください。
2027年以降の制度変化——育成就労制度の概要
2027年に施行予定の「育成就労制度」により、外国人材の受入れ構造が大きく変わります。現在の技能実習制度が廃止され、新たな在留資格「育成就労」が設けられる予定です。
育成就労制度の主なポイント
- 目的の転換: 技能実習の「国際技能移転」から「人材確保と人材育成」へ
- 転籍の自由化: 従来の技能実習では原則禁止だった転籍が、1〜2年の制限期間後に認められる見込み
- 特定技能への移行を主目的化: 原則3年働いた後、特定技能1号への移行が想定されている
- 施行時期: 2027年施行予定(移行期間あり)
企業にとっての影響は、「技能実習生の採用→特定技能への移行」という従来の実質的なルートが、育成就労を経て特定技能へという新しい制度枠組みに整理されることです。現時点(2026年4月)では技能実習制度が引き続き適用されていますが、2027年以降の採用計画を立てる際には制度変更を考慮する必要があります。
よくある質問
Q. 外国人採用で最初にすべきことは何ですか?
A. 最初のステップは「自社が受け入れ可能な在留資格・職種の確認」です。特定技能であれば対象16分野に自社の業種が含まれるか、受入れ機関として基準を満たすかを確認します。次に採用ルート(国内在留者か海外在住者か)と支援計画の準備を進めます。特定技能とは? から始めることをお勧めします。
Q. 特定技能外国人の採用から就労開始まで何か月かかりますか?
A. 採用決定から実際に就労開始するまでの期間は、国内在留者(在留資格変更)であれば概ね2〜4か月、海外在住者(在留資格認定証明書交付)であれば4〜6か月程度が目安です。入管への申請審査期間が含まれるため、余裕を持ったスケジュール計画が重要です。
Q. 特定技能の受入れに登録支援機関は必須ですか?
A. 委託は義務ではありませんが、義務的支援10項目を自社で完結できる体制が整っていない場合は委託が現実的です。初めて特定技能を受け入れる中小企業では、登録支援機関に支援の全部を委託することで、受入れ機関自身が支援体制を整備していなくても受入れが可能になります。
Q. 特定技能1号と2号の違いは何ですか?
A. 特定技能1号は通算5年の在留期間上限があり、家族帯同が原則認められません。特定技能2号は在留期間の更新上限がなく、家族帯同も認められます。2号の対象分野は段階的に拡大されています。詳細は 特定技能1号・2号の違いと移行要件 をご参照ください。
Q. 外国人採用の費用はどのくらいかかりますか?
A. 特定技能外国人の採用では、人材紹介手数料・在留資格申請費用・月次登録支援費が主なコスト要素です。中間手数料を排除した紹介会社を選ぶことで採用コストを大幅に抑えることが可能です。費用の詳細は 特定技能外国人の受入れ費用の目安 をご覧ください。
※ 本記事の内容は2026年4月時点の入管法令に基づきます。制度・手数料は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。