特定技能外国人への日本語学習支援|企業ができる支援策と費用感・助成金を解説

「日本語を学ばせたいが、どこまでが会社の義務なのか」「授業料は誰が払うのか」——特定技能1号の受入れで必ず出てくる論点です。日本語学習の機会の提供は支援計画に記載しなければならない義務的支援の一つで、その内容と費用負担のルールは特定技能基準省令と出入国在留管理庁の運用要領に明記されています。義務として認められる3つの方法、企業負担と任意補助の線引き、無料で使える公的教材、助成金の可否までを一次資料に沿って整理します。

日本語学習の機会の提供は「義務的支援」

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人が在留資格に基づく活動を安定的かつ円滑に行えるようにするための支援を実施しなければなりません。その内容を書き出したものが1号特定技能外国人支援計画で、記載すべき支援は特定技能基準省令第3条第1項第1号のイからヌまでに列挙されています。日本語学習に関する支援は同号ヘです。

特定技能基準省令 第3条第1項第1号ヘ

本邦での生活に必要な日本語を学習する機会を提供すること。

つまり日本語学習支援は、余裕があれば行う福利厚生ではなく、計画に書き込み実際に行わなければならない義務的支援です。支援計画は日本語で作成するほか本人が十分に理解することができる言語でも作成し、写しを交付して内容を説明したうえ、十分に理解したことについて署名を得る必要があります。

自社で体制を組むことが難しい場合は、契約により登録支援機関へ支援計画の全部の実施を委託できます。入管法第2条の5第5項により、全部委託をした機関は支援計画の適正な実施に係る基準に適合するものとみなされます。ただし全部の実施を複数の登録支援機関に分けて委託することはできません。

「本人が理解できる言語」で行うことが求められる支援は4つ

運用要領上、外国人が十分に理解することができる言語により行うことが求められているのは、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談又は苦情への対応、定期的な面談(外国人との面談の場合)の4つです。日本語学習の機会の提供はここに含まれませんが、案内が伝わらなければ支援として機能しません。

義務的支援として認められる3つの方法

運用要領は、日本語を学習する機会の提供について、次の①から③のいずれかによる方法で、かつ1号特定技能外国人の希望に基づき支援を行う必要があるとしています。3つすべてを実施する必要はありません。

方法義務的支援として求められる内容
① 教室・機関の案内 就労・生活する地域の日本語教室や認定日本語教育機関等に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて本人に同行して入学の手続の補助を行う
② 自主学習の支援 自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供し、必要に応じて教材の入手やオンライン講座の利用契約手続の補助を行う
③ 講習の機会提供 本人との合意の下、特定技能所属機関等が登録日本語教員等と契約して、日本語の講習の機会を提供する

「認定日本語教育機関」「登録日本語教員」は、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律に基づく仕組みで、2024年4月に制度が始まりました。認定される課程は留学・就労・生活の3種類で、認定を受けた機関の情報は文部科学省の日本語教育機関認定法ポータルで確認できます。

情報提供して終わりにしない

運用要領は、日本語習得は継続的な学習により促進されるものであるため、習得状況に応じた適切かつ継続的な学習の機会を提供していくことが必要である、と留意事項に明記しています。3か月に1回以上実施する定期的な面談の場を、学習状況の確認に使うのが現実的です。

費用は誰が負担するのか|義務と任意の線引き

運用要領は、特定技能所属機関は1号特定技能外国人支援に要する費用のうち義務的支援に係るものについて、直接又は間接に当該外国人に負担させることはできないとしています。日本語学習支援でも、入学案内や教材の情報提供、入学・利用手続の補助、登録日本語教員等の選定といった支援を行うに当たって要する費用は、特定技能所属機関等が負担する必要があると明記されています。

一方、日本語教室や認定日本語教育機関等の入学金・月謝等の経費、学習教材費、登録日本語教員等との契約料等の全部又は一部を機関自ら負担する補助は任意的支援です。企業判断ですが、いずれの場合も本人に過度な学習費用が発生しないよう留意することが求められています。

費目区分負担の考え方
教室・機関の案内、入学手続への同行義務的支援特定技能所属機関等が負担。本人に転嫁できない
教材・講座の情報提供、入手・契約手続の補助義務的支援同上
登録日本語教員等の選定に要する費用義務的支援同上
入学金・月謝、教材費、講師との契約料任意的支援補助は企業判断。無料教材の活用で圧縮できる
賃金からの控除で処理しない

義務的支援に要する費用を「日本語支援費」などの名目で賃金から差し引く運用は、間接的に本人へ負担させたと評価されるおそれがあります。学習費用の一部補助を制度化する場合も、会社負担と本人負担の範囲を雇用条件書や社内規程で明文化してください。

無料で使える公的な日本語学習リソース

教材費を理由に支援が止まるケースは少なくありませんが、運用要領自体が、日本語学習教材の提供等の一例として参考にできるホームページを挙げています。②の自主学習支援は、これらを使えば教材費をかけずに組み立てられます。

RESOURCE 01
つながるひろがる にほんごでのくらし

文化庁の学習サイト(通称:つなひろ)。日本語教室がない空白地域に暮らし学習機会がない外国人が独学で習得できるコンテンツを公開。

RESOURCE 02
にほんごチェック!

日本語能力自己評価ツール。「日本語教育の参照枠」の全体的な尺度が示す6つのレベルで日本語能力を確認できる。

RESOURCE 03
日本語教育コンテンツ共有システム

日本語教育コンテンツの総合情報サイト。各機関が作成した教材やカリキュラム、「生活Can do」の紹介も掲載。

RESOURCE 04
日本語教育機関認定法ポータル

文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関等の情報を掲載。①の入学案内を作るときの出発点になる。

国際交流基金日本語国際センターが制作した『いろどり 生活の日本語』も選択肢です。在留資格「特定技能」の制度で来日する外国人を主な対象とし、入門(A1)・初級1(A2)・初級2(A2)・初中級(A2/B1)の4部構成。本冊のPDFと音声のMP3を無料でダウンロードでき、2026年3月時点で20言語に翻訳されています。

▶ 「渡した」記録を残す

無料教材を使う場合でも、義務的支援として成立させるには、教材名・URL・案内日・担当者・入手や登録をどう補助したかを支援の記録として残してください。

社内でできる支援策と「やさしい日本語」

義務的支援に上乗せする形で、運用要領は任意的支援として次を挙げています。

あわせて、伝える側の日本語も見直す価値があります。出入国在留管理庁と文化庁は「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を公表しており、書き言葉を中心に、難しい言葉を言い換えて分かりやすい日本語へ書き換える考え方と例が示されています。安全衛生の掲示や作業手順書をやさしい日本語に整えれば、学習の進度を待たずに事故と手戻りを減らせます。

1
本人の希望と現在地を確認する

教室に通いたいのか自主学習を続けたいのかを面談で確認します。義務的支援は本人の希望に基づいて行う必要があります。

2
3つの方法から選び、支援計画に落とす

支援計画書(参考様式第1-17号)の支援内容欄に、誰が・いつ・何を行うかを書き込みます。

3
業務で使う日本語を洗い出す

報告・連絡・相談の定型表現、危険を知らせる表現、機械や工程の名称を棚卸しし、手順書に反映します。

4
定期的な面談で継続性を担保する

3か月に1回以上の面談で継続状況を確認し、教材や通学先が合っていなければ組み替えて記録に残します。

▶ 市区町村の日本語教室を支援計画に書ける

運用要領は、市区町村が実施する共生施策を踏まえた支援を支援計画書の自由記入欄に記載する例を挙げ、日本語学習については「本人から相談があれば市の日本語教室を案内することとしている」という記載例を示しています。所在市区町村のホームページで日本語教室の有無を確認し、計画に反映させる方法です。

分野ごとに異なる日本語能力水準

1号特定技能外国人には、ある程度の日常会話ができ生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求められます。この水準は分野所管行政機関が定める試験等により確認することとされ、詳細は分野別運用方針に定められています。

技能実習2号を良好に修了している場合、原則として、修了した技能実習の職種・作業の種類にかかわらず日本語能力水準の証明は不要です(N4レベルの試験免除)。ただし運用要領は次の例外を明示しています。

分野・区分取扱い
介護分野介護日本語評価試験の合格については、介護職種・介護作業の技能実習2号を良好に修了した者を除き、試験免除されない
自動車運送業分野(タクシー運転者、バス運転者に限る)N3レベルの日本語能力が必要なため、技能実習2号を良好に修了していても試験その他の評価方法による証明を要する
鉄道分野(運輸係員に限る)同上(N3レベルが必要)

入社後の伸びを測る物差しも決めておくと社内の合意が取りやすくなります。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)はCBT方式で、2026年8月からA1(145〜174点)、A2.1(175〜199点)、A2.2(200〜250点)の3段階を判定できるようになりました。総合得点が199点以下の場合は前回受験日から45日空ければ再受験でき、一度200点以上に達した人は再受験できません。任意的支援である受験支援や資格取得者への優遇措置は、こうした試験と組み合わせると設計しやすくなります。

日本語教育に助成金は使えるか

結論は制度によって分かれます。代表的な2つを公表資料の記載に沿って整理します。

人材開発支援助成金|職務に関連した専門用語なら対象となり得る

厚生労働省が公表する人材開発支援助成金のQ&Aは、自社で雇用する外国人に日本語を習得させるための訓練について、職務に関連した専門用語等を習得させるための訓練であれば対象となり得るが、日常会話程度の日本語の習得のみを目的とする講習は助成対象とならないとしています。例として、介護業務に従事する外国人労働者に介護・医療の専門用語を学ぶ研修は対象となり得る一方、私生活で必要となる日本語を学ぶ研修は対象とならないと示されています。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

令和8年4月1日現在のガイドブックによれば、支給額は1制度導入につき20万円(上限額80万円)で、対象となる就労環境整備措置は「イ.雇用労務責任者の選任」「ロ.就業規則等の多言語化」「ハ.苦情・相談体制の整備」「ニ.一時帰国のための休暇制度の整備」「ホ.社内マニュアル・標識類等の多言語化」の5つ、イとロに加えてハからホのいずれかの導入・実施が必要とされています。

日本語教育の費用そのものはこの5つに含まれていません。もっともガイドブックは「多言語化」を、外国人労働者が使用する言語又は平易な(易しい)日本語を用いて記載すること等をいうと定義しており、やさしい日本語による社内マニュアル・標識類等の書き換えは、ホの措置として組み立てられる余地があります。

特定技能外国人を雇用する事業所での選び方と手続の順序

ガイドブックは、特定技能外国人を雇用している又は雇用しようとしている事業所の場合は「一時帰国のための休暇制度の整備」「社内マニュアル・標識類等の多言語化」を選択するよう案内しています。就労環境整備計画は計画期間の初日から6か月前の日から1か月前の日までに提出する必要があり、提出より前に外部機関等へ委託したり費用を支払ったりすると支給対象外です。適用可否は必ず事前に管轄の都道府県労働局へご確認ください。

支援計画への記載と年1回の定期届出

日本語学習支援は、計画に書き、実施し、届け出るところまでが一続きです。支援内容は1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)に記載し、実施状況は定期届出で報告します。

入管法第19条の18第2項に基づく届出は、対象年の4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援実施状況について、翌年4月1日から5月31日までに、出入国在留管理庁電子届出システムを利用するか、管轄の地方出入国在留管理局に書類を提出して行います。主な届出事項には、受け入れている特定技能外国人数、実労働日数、賃金や控除額とともに「支援の実施状況」が含まれます。様式は受入れ・活動・支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-6号)です。

届出を怠った場合

運用要領は、届出をせず又は虚偽の届出をした者は罰則や過料の対象となるため、添付資料を含め十分確認したうえで提出するよう求めています。一時帰国等により対象期間中にまったく就業していない場合や、届出時点で既に退職している場合でも、対象期間中に一日でも所属していれば届出の対象になります。

支援計画の全部を登録支援機関に委託している場合、実施状況は委託先の届出で報告されますが、案内した教材・通学先・講習の実施日といった記録は、委託の有無にかかわらず社内にも残しておくことをおすすめします。

よくある質問

特定技能外国人への日本語学習支援は企業の義務ですか。
義務的支援です。特定技能基準省令第3条第1項第1号ヘは、1号特定技能外国人支援計画に「本邦での生活に必要な日本語を学習する機会を提供すること」を記載しなければならないと定めています。運用要領は、教室・認定日本語教育機関等の入学案内と入学手続の補助、自主学習教材やオンライン講座の情報提供と入手・利用契約手続の補助、登録日本語教員等と契約しての講習の機会提供の3つを挙げ、このいずれかの方法で、かつ本人の希望に基づいて行う必要があるとしています。
日本語教室の月謝や教材費は、企業がすべて負担しなければなりませんか。
分けて考えます。入学案内や教材の情報提供、入学・利用手続の補助、登録日本語教員等の選定といった義務的支援を行うに当たって要する費用は特定技能所属機関等が負担する必要があり、本人へ直接又は間接に負担させることはできません。一方、入学金や月謝等の経費、学習教材費、契約料等の全部又は一部を会社が負担することは任意的支援です。ただし本人に過度な学習費用が発生しないよう留意することが求められています。
教材費をかけずに日本語学習支援を始めることはできますか。
できます。運用要領は、日本語学習教材の提供等の一例として、文化庁の「つながるひろがる にほんごでのくらし」、日本語教育機関認定法ポータル、日本語能力自己評価ツール「にほんごチェック!」、日本語教育コンテンツ共有システムを参考にできると案内しています。国際交流基金日本語国際センターの『いろどり 生活の日本語』も本冊のPDFと音声を無料でダウンロードできます。無料教材を使う場合も、案内日・担当者・補助した内容を記録に残してください。
日本語教育の費用に助成金は使えますか。
内容次第です。人材開発支援助成金のQ&Aは、職務に関連した専門用語等を習得させるための訓練であれば対象となり得るが、日常会話程度の日本語の習得のみを目的とする講習は助成対象とならないとしています。人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は1制度導入につき20万円・上限80万円(令和8年4月1日現在)ですが、対象となる就労環境整備措置5つに日本語教育費そのものは含まれていません。適用可否は管轄の都道府県労働局にご確認ください。
登録支援機関に全部委託すれば、自社は何もしなくてよいのですか。
支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合、特定技能所属機関は支援計画の適正な実施に係る基準に適合するものとみなされます(入管法第2条の5第5項)。ただし全部の実施を複数の登録支援機関に分けて委託することはできません。また、受入れ・活動・支援実施状況に係る届出(対象年4月1日から翌年3月31日までの分を翌年4月1日から5月31日までに提出)は特定技能所属機関の義務です。

まとめ

日本語学習の機会の提供は、特定技能基準省令第3条第1項第1号ヘに基づく義務的支援です。支援計画に書き、実施し、年1回の定期届出で報告するところまでが一続きの手続になります。

義務として認められる方法は、①教室・認定日本語教育機関等の入学案内と入学手続の補助、②自主学習教材・オンライン講座の情報提供と入手・契約手続の補助、③登録日本語教員等と契約しての講習の機会提供の3つで、いずれかを本人の希望に基づいて実施します。

費用は二段構えです。義務的支援に要する費用は企業負担が必須で本人に転嫁できません。入学金・月謝・教材費・講師との契約料の補助は任意的支援ですが、過度な学習費用が発生しないよう留意することが求められています。教材費は公的な無料リソースで圧縮できます。

助成金は万能ではありません。人材開発支援助成金は職務に関連した専門用語等の訓練であれば対象となり得る一方、日常会話のみを目的とする講習は対象外です。適用可否は必ず事前に労働局へ確認してください。受入れ体制のご相談は、TreeGlobalPartnersまでお気軽にお問い合わせください。

本記事は現時点(2026年8月)の出入国在留管理庁の運用要領等の公表内容、厚生労働省が公表する助成金のガイドブック・Q&A及び関係法令に基づき、特定技能外国人への日本語学習支援について一般的な情報を整理したものです。制度・基準・運用及び助成金の支給要件は改正される場合があり、個別事案への適用は条件により異なります。最新かつ正確な取扱いは出入国在留管理庁の公表資料、管轄の都道府県労働局及び専門家にご確認ください。株式会社TreeGlobalPartnersは外国人の有料職業紹介を行う事業者であり、在留資格の申請取次や1号特定技能外国人支援の受託については、グループ内の行政書士法人Treeが担当します。