特定技能の分野拡大|16分野から19分野への全体像
特定技能制度は2019年4月の入管法改正によって創設されて以来、深刻化する人手不足を背景に対象分野を段階的に拡大してきました。創設当初は14分野でスタートし、その後の統合・再編を経て12分野体制となり、さらに2024年3月29日の閣議決定によって自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が追加されて16分野となり、2026年1月23日の閣議決定でリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加されて19分野へと拡大しています。
特定技能1号の対象分野は2024年3月29日の閣議決定により自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が追加されて16分野となり、その後2026年1月23日の閣議決定でリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加され、現在は19分野に拡大しています。本記事では、この分野拡大の全体像と、受入企業が実務で押さえるべきポイントを解説します。
受入企業にとって本当に重要なのは「全体で何分野あるか」ではなく、「自社の業務が特定技能の対象分野・業務区分に含まれるか」です。同じ業種でも従事させる業務によって対象・対象外が分かれるため、まずは自社の具体的な作業内容が、どの分野のどの業務区分に該当するかを精査することから始めてください。
分野拡大が進む背景
分野拡大の背景には、生産年齢人口の継続的な減少と、特定の業種における慢性的な人手不足があります。とりわけ物流・運送、地方の一次産業、インフラ維持に関わる業種では、国内の労働力だけでは事業継続が困難な水準に達しており、外国人材の受入れが事業存続の前提となりつつあります。政府は5年間の受入れ見込み数を分野ごとに設定し、その枠内で計画的に受入れを進める方針を採っています。
2024年4月に追加された4分野のポイント
2024年3月の閣議決定により、特定技能1号の対象として自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が新たに追加されました。これらは従来制度の対象外であった業種であり、業界として初めて特定技能による外国人受入れの道が開かれた点で大きな転換点となりました。以下に各分野の概要を整理します。
| 分野 | 主な業務区分 | 受入れ上の特徴・固有要件 |
|---|---|---|
| 自動車運送業 | トラック運送、タクシー、バス | トラック・タクシー・バスの区分ごとに、必要な運転免許、日本語能力、事業許可・安全管理体制等の要件が異なる。必ず分野別運用要領で確認が必要。 |
| 鉄道 | 軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、運輸係員 など | 安全に直結する業務が多く、技能・安全教育の水準が厳格。運輸係員区分では一定の日本語運用能力が重視される。 |
| 林業 | 育林、素材生産(伐採・搬出)等の林業作業 | チェーンソー等の危険作業を伴うため安全教育・労働安全衛生対応が必須。山間部での就労環境整備も課題。 |
| 木材産業 | 製材、合板製造、木材加工 等 | 機械加工を伴う製造工程が中心。製造分野に近い技能評価が行われる。 |
これら4分野は、追加決定の後に分野別の運用要領・技能試験・協議会といった受入れインフラが順次整備され、2025年から2026年にかけて実務上の受入れが本格化してきました。新分野は試験の実施回数や受験地がまだ限られているケースもあるため、受入れを検討する企業は試験スケジュールと協議会加入手続きを早期に確認する必要があります。
自動車運送業はトラック・タクシー・バスの区分ごとに、必要な運転免許、日本語能力、事業許可・安全管理体制などの要件が異なります。単に「ドライバーとして雇える」と理解せず、自社が必要とする区分の固有要件を業所管省庁の運用要領で精査してください。免許取得支援を含めた受入れ設計が前提になります。
2024年追加4分野の受入準備と実務のポイント
追加分野は決定から受入れ本格化まで一定のタイムラグがあります。技能試験・日本語試験の整備、業所管省庁による運用要領の公表、分野別協議会の立ち上げといった段階を経て、はじめて実際の受入れが可能になるためです。2026年は、2024年に追加された分野で試験・運用の整備が進み、受入れが軌道に乗っていく重要な時期にあたります。
受入れ開始までの一般的な流れ
対象業務区分・固有要件・受入れ見込み数が示される。ここで自社業務が対象かを確認する。
受入企業は原則として分野別協議会への加入が必要。加入時期の要件(受入れ前か後か)を確認する。
国内外で試験が実施され、合格者が在留資格申請の要件を満たす。試験回数・受験地はまだ限られる場合がある。
雇用契約締結・支援計画作成のうえ申請。許可を得て就労開始。ビザ手続きは行政書士法人Treeが担当。
新分野ならではの留意点
- 試験機会の少なさ:新分野は試験の実施回数・受験地が限られるため、採用計画を試験スケジュールと連動させる必要がある。
- 運用要領の更新頻度:立ち上げ初期は要件・様式が更新されやすい。常に最新版を確認する体制が不可欠。
- 協議会加入の前提:受入れ前に協議会加入が求められる分野では、加入完了までのリードタイムを見込む。
- 安全教育・許認可:運送・鉄道・林業は安全に直結するため、入国後講習や安全衛生教育を受入れ体制に組み込む。
新分野では海外からの新規入国だけでなく、既に日本国内にいる技能実習修了者や留学生からの在留資格変更で受け入れる「移行組」も重要な供給源です。国内人材は日本語・生活適応の面で立ち上がりが早い一方、対象となる経歴要件の確認が必要です。TGPは国内・国外双方のルートでの人材紹介に対応しています。
外食業分野の「受入れ上限到達」による交付停止措置に注意
分野拡大と並んで受入企業が必ず押さえておくべきなのが、分野別の受入れ見込数(上限)への到達による在留資格認定証明書交付申請等の取扱いです。特定技能は分野ごとに5年間の受入れ見込数が設定され、これを1号特定技能外国人の受入れ上限として運用することとされています。上限に達した場合の取扱いは、分野や申請類型ごとに公式情報で確認する必要があります。
外食業分野はその代表例で、在留者数が受入れ見込数(2024〜2028年度で5万人)に達する見通しとなったため、2026年3月27日に農林水産省と出入国在留管理庁が発表し、2026年4月13日以降の新規受入れに係る在留資格認定証明書交付申請が不交付とされています。この措置は制度開始以来初めての受入れ枠到達による事例です。
外食業など申請が集中しやすい分野では、受入れ見込数の上限到達により、在留資格認定証明書交付申請の不交付などの措置が講じられる可能性があります。受入れを予定している場合は、申請時点での当該分野の取扱いを必ず確認し、内定・採用が固まり次第すみやかに準備を進めることが重要です。様子見をしているうちに上限に達する、という事態を避けてください。
申請停止に直面したときの選択肢
- 申請類型ごとの取扱いを確認する:在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請で取扱いが異なるため、公式情報を確認したうえで準備を進める。
- 国内移行のタイミングを調整する:技能実習修了者等の在留資格変更については、満了時期と受付状況を照らし合わせて計画する。
- 他分野・他区分の可能性を検討する:業務内容によっては別の業務区分での受入れが可能な場合がある。要件は行政書士に確認する。
こうした受入れ枠の状況は流動的で、最新の公表情報を継続的に追う必要があります。TGPでは各分野の受付状況・受入れ動向をモニタリングし、申請の最適なタイミングを受入企業にご案内しています。
分野追加で受入企業が確認すべき要件チェック
分野が追加・拡大しても、受入企業に求められる基本的な義務の枠組みは共通しています。一方で、分野ごとに上乗せされる「分野固有基準」は多岐にわたるため、受入れ前のチェックが欠かせません。ここでは新分野・既存分野を問わず確認すべき要件を整理します。
自社で従事させる業務が、当該分野の対象業務区分に正確に含まれるかを運用要領で確認する。
多くの分野で協議会加入が義務。加入のタイミング(受入れ前/後)と手続き要件を確認する。
本人が技能試験・日本語試験合格、または該当する技能実習修了等の経歴要件を満たすか確認する。
運送業の許可、安全衛生教育、必要な免許・資格など分野固有の上乗せ要件を整備する。
受入企業に共通して求められる基本義務
分野を問わず、特定技能1号の受入れにあたっては次のような基準・義務を満たす必要があります。これらが欠けると申請が不許可になったり、受入れ後に指導の対象になったりします。
- 報酬額が日本人と同等以上であること、労働関係法令・社会保険関係法令の遵守
- 1年以内の非自発的離職者を出していないこと、行方不明者を発生させていないこと等の欠格事由に該当しないこと
- 特定技能1号外国人に対する1号特定技能外国人支援計画の作成と適正な実施(登録支援機関への委託も可)
- 各種届出(受入れ開始・契約変更・支援委託契約等)を期限内に行う体制
1号特定技能外国人支援計画の実施は、自社で行うことも、登録支援機関へ委託することも可能です。事前ガイダンス・生活オリエンテーション・定期面談・各種同行支援など実務負担は小さくありません。グループ内の行政書士法人Treeが登録支援機関として、新分野を含む受入れ後の支援を継続的に代行し、受入企業の管理負担を軽減します。
2027年4月施行・育成就労制度との関係
分野拡大とあわせて理解しておきたいのが、技能実習制度に代わる新制度「育成就労制度」です。2024年に関連法が成立し、2027年4月1日の施行が予定されています。育成就労は、これまで国際貢献を建前としてきた技能実習制度を抜本的に見直し、「人材確保」と「人材育成」を明確な目的に据えた点が大きな特徴です。
育成就労と特定技能の接続
育成就労制度は、原則として3年間で特定技能1号の水準まで人材を育成し、特定技能へ円滑につなげることを設計思想としています。つまり、これまで「技能実習 → 特定技能1号 → 特定技能2号」と呼ばれてきたキャリアの流れが、2027年4月の育成就労施行後は「育成就労 → 特定技能1号 → 特定技能2号」という形に再構成されていくことになります。育成就労の対象分野は、原則として特定技能の対象分野と整合させる方向で整理が進められています。
| 項目 | 技能実習(現行) | 育成就労(2027年4月1日施行) |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 国際貢献・技能移転(建前) | 人材確保および人材育成 |
| 育成期間の考え方 | 職種により最長5年 | 原則3年で特定技能1号水準へ |
| 転籍 | 原則不可(限定的) | 一定要件下で本人意向の転籍を容認 |
| 特定技能との接続 | 修了後に移行可 | 特定技能への接続を前提に設計 |
受入企業が今から備えるべきこと
育成就労では、一定要件のもとで本人の意向による転籍が認められる見込みです。これは、受入企業が「来てくれた人材に長く働き続けてもらう」ための処遇・職場環境づくりの重要性が、これまで以上に高まることを意味します。採用・育成・定着の方針は中長期で設計するものであり、今から特定技能2号への移行も含めたキャリアパスを描いておくことが望まれます。
育成就労の施行後も一定の経過措置が想定され、技能実習・育成就労・特定技能が並走する移行期が生じます。在留中の人材がどの制度に基づくのか、どの要件が適用されるのかを取り違えないよう、最新の運用と経過措置を確認しながら受入れを進める必要があります。詳細はビザ手続きを担当する行政書士法人Treeにご確認ください。
建設・JAC経由など分野固有ルールの落とし穴
分野ごとの固有ルールの中でも、受入企業が特に誤解しやすいのが建設分野の受入れスキームです。建設分野では、特定技能外国人の受入れに関して有料職業紹介事業者を介した職業紹介が認められておらず、業界団体である一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)の仕組みを通じて受け入れる必要があります。
建設分野の特定技能については、有料職業紹介を利用して人材をあっせんすることはできません。そのため、TreeGlobalPartnersでは建設分野について「有料職業紹介としての人材紹介」は行わず、JAC(建設技能人材機構)を通じた受入れスキームのご案内のみ行います。登録支援・在留資格手続はグループ内の行政書士法人Treeが対応します。他分野とは受入れの入口が異なる点に十分ご注意ください。
分野固有ルールの代表例
- 建設:JAC加入(直接または賛助会員団体経由)、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録、月給制の徹底など固有要件が多い。有料職業紹介は不可。
- 介護:事業所単位の人数枠、訪問系サービスの取り扱いなど固有のルールがある。
- 自動車運送業:区分ごとの運転免許、日本語能力、事業許可・安全管理体制等。
- 農業・漁業:派遣形態での受入れが認められるなど、雇用形態の柔軟性に分野固有の特徴がある。
このように、同じ「特定技能」でも分野によって受入れの入口・雇用形態・上乗せ要件が大きく異なります。「他分野で受け入れた経験があるから大丈夫」と考えず、新たに受け入れる分野ごとにルールを一から確認することが、トラブル回避の基本です。
TreeGlobalPartnersは外国人専門の有料職業紹介を担い、登録支援および在留資格・ビザに関する申請手続きはグループ内の行政書士法人Treeが担当します。役割を明確に分けたワンストップ体制により、紹介から支援、在留資格申請までを切れ目なくご支援します(建設分野の人材紹介はJAC経由のご案内となります)。
分野拡大を採用戦略にどう活かすか
分野拡大は、これまで外国人材の受入れができなかった業種にとって大きなチャンスである一方、人気分野の枠争奪が激化することも意味します。分野拡大という制度の追い風を自社の採用戦略に活かすには、次のような視点が有効です。
早期に動いた企業が有利になる構造
受入れ見込み数という上限がある以上、外食業の例が示すように「枠が埋まる前に動いた企業」が有利になります。新分野・人気分野ともに、採用方針を早期に固め、試験スケジュール・協議会加入・申請のリードタイムを逆算して動くことが、安定的な人材確保の鍵となります。
2号移行・長期定着を前提とした設計
育成就労制度の導入により、外国人材の転籍がしやすくなる方向にあります。これからの採用は「採って終わり」ではなく、特定技能2号への移行も視野に入れた長期キャリアパスの提示が、人材の獲得・定着の決め手になります。給与モデル・評価制度・住環境・キャリア面談など、選ばれる職場づくりの巧拙が、そのまま採用競争力に直結します。
- 求人段階で「特定技能2号移行支援あり」「長期就労を前提とした処遇」を明示する
- 新分野では試験対策・入国後講習・安全教育を含めた受入れパッケージを整える
- 国内移行組と国外採用を組み合わせ、供給源を多重化してリスクを分散する
- 登録支援機関と連携し、定着支援を制度として組み込む
TreeGlobalPartnersは新分野を含む外国人材の紹介(中間手数料なしのリーズナブルな料金体系)を担い、グループ内の行政書士法人Treeが登録支援機関としての受入れ後支援と在留資格申請を担当する、一気通貫の体制でご提供します。分野拡大という制度変化を、自社の採用力強化につなげるためのパートナーとしてご活用ください。
よくある質問
まとめ
特定技能制度は2024年3月の4分野追加により16分野へ拡大し、2026年1月23日の閣議決定でリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加されて19分野へと正式に拡大しました。本記事で解説した受入企業・登録支援機関が押さえるべきポイントを改めて整理します。
- 分野拡大の全体像: 2024年3月に16分野、2026年1月23日に19分野へ拡大。「自社の業務が対象業務区分に含まれるか」の確認が最重要。
- 新分野の実務:追加から受入れ本格化までにタイムラグあり。試験スケジュール・協議会加入を早期確認。
- 受入れ上限:外食業など人気分野は枠が埋まると申請停止。早期申請が鉄則。
- 育成就労制度:2027年4月施行予定。「育成就労 → 特定技能1号 → 2号」へとキャリアの流れが再構成される。
- 分野固有ルール:建設は有料職業紹介不可(JAC経由)。分野ごとにルールを一から確認する。
制度は流動的で、分野数・受入れ枠・運用要領は今後も更新されます。重要なのは、最新情報を継続的に追いながら、採用・受入れの計画を早期かつ柔軟に組み立てることです。自社が受け入れたい分野の対象該当性や受付状況、要件の確認でお困りの際は、TreeGlobalPartnersまでお気軽にご相談ください。人材のご紹介から、グループ内の行政書士法人Treeによる登録支援・ビザ手続きまでをワンストップでご支援します。
本記事の情報は2026年6月時点の出入国在留管理庁および各業所管省庁の公開情報に基づいて構成しています。特定技能の対象分野・業務区分・受入れ見込み数(上限)・各分野の運用要領、および育成就労制度の施行内容は、今後の制度改正・運用更新により変更される場合があります。特定技能の対象分野は2026年1月23日の閣議決定により19分野となっていますが、新規追加3分野の受入れ開始時期・業務区分の詳細は今後整備されるため、最新の公式情報をご確認ください。最新情報は出入国在留管理庁の公式情報をご確認のうえ、ビザ申請・在留資格に関する個別案件はグループ連携先の行政書士法人Treeまでお問い合わせください。建設分野の特定技能人材については有料職業紹介によるあっせんはできず、JAC経由のご案内となります。