義務的支援①事前ガイダンス|実施内容・時間・記録の残し方と実地調査対応

事前ガイダンスの成否は、当日どれだけ丁寧に説明したかではなく、実施後に手元へどんな書面が残っているかで決まります。地方出入国在留管理局の実地調査で照合されるのは説明の熱量ではなく、確認書の署名、実施日時、実施方法、通訳人の氏名といった記録上の事実だけだからです。

事前ガイダンスは特定技能1号の義務的支援10項目の先頭に置かれた支援ですが、他の9項目と違って入国前に完結してしまいます。やり直しが利かず、後から記録を補うこともできません。実施時期を1日でも誤れば在留資格の申請そのものと矛盾が生じ、記録が薄ければ支援計画を適正に実施していないと評価されるおそれがあります。

本記事では、特定技能基準省令と出入国在留管理庁の運用要領(別冊「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」)を出発点に、実施要件を確認したうえで、確認書(参考様式第5-9号)の中身、「支援の状況に係る文書」の作り方、実地調査で何が突き合わされるのかまでを、企業の実務担当者向けに整理します。

事前ガイダンスはいつまでに実施するか|認定証明書交付申請前・変更申請前

実施時期を定めているのは、特定技能基準省令第3条第1項第1号イです。新たに入国させる場合は在留資格認定証明書の交付の申請前、すでに他の在留資格で日本に在留している人を採用する場合は在留資格の変更の申請前が期限とされています。ここでいう「申請前」は書類を地方出入国在留管理局に提出する前を指すため、申請受理後に慌てて実施しても、支援計画どおりに実施したとは扱われません。

運用要領はさらに一歩踏み込んでいます。事前ガイダンスで提供する情報には労働条件など特定技能雇用契約の締結前にあらかじめ本人が把握することが望ましい情報が含まれることから、実施は特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望まれる、という整理です。義務としての期限は「申請前」、望ましい時期は「契約締結前」という二段構えになっています。

この二段構えを踏まえると、実務の順序は、内定通知、雇用条件書(参考様式第1-6号)の内容確定、その雇用条件書に基づく事前ガイダンス、特定技能雇用契約の締結、1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)の作成、在留資格認定証明書交付申請、という並びが最も整合します。事前ガイダンスでは雇用条件書に記載された事項を説明することが求められるため、労働条件が固まらないまま実施すると説明そのものが空洞化します。逆に契約を先に締結してしまうと、報酬の額や業務内容を本人が理解しないまま署名した形になり、後の定期面談で認識の食い違いが表面化しやすくなります。

転職や在留資格変更でも改めて実施が必要

転職等に伴い異なる特定技能所属機関へ移った場合も、移った先で改めて事前ガイダンスを実施しなければなりません。技能実習2号を修了した人を同一の機関で引き続き特定技能外国人として雇用する場合も同様で、従事させる業務の内容、報酬の額その他の労働条件など必要な情報を改めて十分に理解させることが求められます。生活環境が変わらないことを理由に丸ごと省略する運用は、運用要領上、認められていません。

期限を過ぎたことに後から気づいた場合、確認書の日付だけを申請前に合わせて取り繕う対応は避けてください。確認書の実施日と申請の受付日は照合が容易で、虚偽が判明すれば報告徴収への虚偽回答や届出の不正確さという別の問題に発展します。申請前に間に合わなかったのであれば、申請を一度取り下げて事前ガイダンスを実施し直すほうが、結果として傷が浅く済みます。

対面かテレビ電話等が必須|資料の送付だけでは実施したことにならない

特定技能基準省令第4条第2号は、事前ガイダンスが「対面により又はテレビ電話装置その他の方法により実施されること」を支援計画の基準として定めています。運用要領はこれを、インターネットによるビデオ通話などを含むとしたうえで、本人であることの確認を行った上で実施することを求め、文書の郵送や電子メールの送信のみによることは認められないと明記しています。

説明資料をPDFで送り、既読の返信をもって実施済みとする運用は、この基準を満たしません。録画した説明動画を一方的に視聴させるだけの方法も、本人確認とその場での理解確認の双方を満たしたとは言いにくい形になります。参考として、生活オリエンテーションについては運用要領がテレビ電話やDVD等の動画視聴による実施を明示的に許容し、質問に適切に応答できる体制の整備を条件としていますが、事前ガイダンスにはこの記載がありません。二つを同じ感覚で設計すると足元をすくわれます。

「十分に理解することができる言語」の水準

特定技能基準省令第4条第3号は、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談又は苦情への対応、定期的な面談の4つについて、外国人が十分に理解することができる言語により実施することを求めています。運用要領の留意事項では、この言語は特定技能外国人の母国語には限られないものの、当該外国人が内容を余すことなく理解できるものをいう、と説明されています。初級レベルの日本語だけで3時間の説明を通す構成は、実質的に基準から外れる可能性が高くなります。

言語の手当てについて、運用要領別冊は翻訳機の活用も可能としつつ、込み入った相談・苦情対応等を行うような場合には通訳人の介在が不可欠と整理しています。また、支援体制の基準における「十分に理解できる言語による適切な相談体制」については、通訳人を自社の職員として雇い入れるところまでは必要なく、必要なときに委託するなどして通訳人を確保できるものであれば足りるとされています。事前ガイダンスの通訳もこれに準じて外部委託で差し支えありませんが、後述する記録では、実施担当者に通訳人を含めて氏名と所属を残すことが求められます。通訳会社に手配を任せる場合でも、当日誰がどの言語で通訳したのかを都度控える運用にしておいてください。

送出機関に任せきりにするリスク

事前ガイダンスの実施を現地の送出機関に委託すること自体は排除されていません。もっとも運用要領は、例えば送出機関が保証金を徴収しているような場合には適切に事前ガイダンスを実施することが期待できないため、特定技能所属機関が支援の体制の基準を満たしていないと判断される可能性があると注意を促しています。保証金や違約金の不存在を確認する項目を、保証金を徴収している当事者に説明させる構図そのものが問題視される、という理解が実態に近いはずです。

標準3時間の根拠と、短縮が認められる下限

運用要領(別冊)は、事前ガイダンスは1号特定技能外国人が十分に理解できるまで行う必要があるとしたうえで、情報提供する事項を十分に理解するためには3時間程度行うことが必要と考えられる、と示しています。3時間という数字は法令が定める固定値ではなく、後述する10項目を理解させるために通常必要と考えられる目安として置かれたものです。

短縮の可否についても具体的な線引きがあります。技能実習生等を同一機関で引き続き特定技能外国人として雇用するような場合、1号特定技能外国人支援計画上の実施予定時間よりも短時間で終わることが想定されるものの、1時間に満たないような場合は事前ガイダンスを適切に行ったとはいえない、という記述です。下限は1時間、標準は3時間程度と押さえておけば、運用を大きく誤ることはありません。

1号特定技能外国人支援計画書には、事前ガイダンスの実施予定時間を記載します。計画に3時間と書きながら実績が40分では、計画と実施の不一致として説明を求められる材料になります。逆に、技能実習からの移行などで実績が予定を下回ることが見込まれる案件では、計画段階から現実的な時間を書いておくほうが整合します。

分割実施は様式のうえでも想定されています。確認書(参考様式第5-9号)には実施日時の記入欄が3行分用意されており、複数回に分けた実施を前提とした構成になっています。時差のある国とオンラインで行う場合は、1回あたり60分から90分で2回から3回に分ける設計が現実的です。

比較項目事前ガイダンス生活オリエンテーション
根拠(特定技能基準省令)第3条第1項第1号イ第3条第1項第1号ニ
実施時期在留資格認定証明書の交付の申請前(在留中の者は在留資格の変更の申請前)入国後(在留資格変更の場合は変更を受けた後)、遅滞なく
時間の目安3時間程度。1時間に満たない場合は適切に行ったとはいえない少なくとも8時間以上。技能実習2号良好修了者・留学生等を同一機関で引き続き雇用する場合であって生活環境に変化がないときでも、4時間に満たない場合は適切とはいえない
実施方法対面又はテレビ電話装置その他の方法。本人確認が必要で、文書の郵送・電子メールのみは不可テレビ電話やDVD等の動画視聴でも差し支えない。ただし質問に応答できる体制の整備が必要
言語の要件十分に理解することができる言語十分に理解することができる言語
確認書の様式参考様式第5-9号参考様式第5-8号

必ず伝える10項目|運用要領が列挙する情報提供事項

運用要領は、事前ガイダンスで情報提供しなければならない事項として次の項目を列挙しています。説明資料の目次は、この並びをそのまま骨格にするのが最も安全です。

  • 従事させる業務の内容、報酬の額その他の労働条件に関する事項
  • 日本において行うことができる活動の内容(特定技能1号に掲げる活動であること、技能水準が認められた業務区分に従事すること)
  • 入国に当たっての手続に関する事項(新規入国の場合は在留資格認定証明書の受領、日本大使館・領事館での査証申請、交付日から3か月以内の入国。在留中の場合は在留資格変更許可を受け在留カードを受領するまで新たな就労先での就労活動は認められないこと)
  • 本人又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他社会生活において密接な関係を有する者が、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産を管理されず、違約金を定める契約等を締結しておらず、かつ締結させないことが見込まれること
  • 特定技能雇用契約の申込みの取次ぎ又は外国における活動の準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合は、その額及び内訳を十分理解して当該機関と合意している必要があること
  • 1号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に本人へ負担させないこととしていること
  • 入国しようとする港又は飛行場で出迎え、事業所(又は住居)までの送迎を行うこと
  • 適切な住居の確保に係る支援の内容(社宅等を貸与予定の場合は広さのほか、本人が負担すべき家賃等の金額を含む)
  • 職業生活、日常生活又は社会生活に関する相談又は苦情の申出を受ける体制(曜日・時間帯・面談/電話/電子メールといった受付方法)
  • 支援担当者の氏名及び連絡先(メールアドレス等)

労働条件の説明は労働基準法第15条の水準で

運用要領の留意事項では、「労働条件」とは業務の内容や報酬の額のほか、安全又は衛生に関する事項など雇用条件書に記載された事項であり、労働基準法第15条の規定に基づき説明することが求められる、とされています。さらに、平成31年3月28日付け基発0328第28号・厚生労働省労働基準局長通知の記2に挙げられた業務、すなわち高所からの墜落・転落災害や、機械設備・車両系建設機械等によるはさまれ・巻き込まれのおそれのある業務、化学物質、石綿、電離放射線等にばく露するおそれのある業務などに従事すると見込まれる場合には、当該業務の内容と安全衛生に関する事項を説明することが明記されています。危険有害業務のある職場ほど、説明資料に安全衛生のパートを独立して設ける必要があります。

保証金・違約金の確認は本人以外にも及ぶ

4番目の項目は範囲が広く設計されています。対象は本人だけでなく、配偶者、直系若しくは同居の親族、その他社会生活において密接な関係を有する者まで含まれます。相手方も特定技能所属機関や登録支援機関、職業紹介事業者にとどまらず、本国及び日本の仲介事業者を含めて幅広く規制の対象とされており、条文が相手方を特定していないのはそのためです。確認すべき内容も、保証金等の支払や違約金等に係る契約を現にしていないことと、将来にわたりしないことの二つに分かれます。

「違約金を定める契約」の射程も広く取られています。失踪など労働契約の不履行に係る違約金を定める契約のほか、地方出入国在留管理局や労働基準監督署等への法令違反に係る相談をすることを禁じてその違約金を定める契約、休日に許可を得ずに外出することを禁じて違約金を定める契約、商品やサービスの対価として不当に高額な料金の徴収を予定する契約なども該当するとされています。説明の場では、こうした具体例を挙げたうえで心当たりの有無を確認するほうが実効性があります。

確認書(参考様式第5-9号)の中身と署名の実務

運用要領は、事前ガイダンスを実施した場合は事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号)を1号特定技能外国人に示して確認の上、署名を得る必要がある、としています。様式は出入国在留管理庁の「特定技能関係の申請・届出様式一覧」から入手でき、定期又は随時届出に関するものとして掲載されています。

様式の構成は、説明を受けた事項の1から9までの列挙、実施日時の記入欄が3行、特定技能所属機関(又は登録支援機関)の氏名又は名称、説明者の氏名、そして本人の署名欄と日付です。末尾には、4の項目について本人及びその配偶者等が保証金等の支払や違約金等に係る契約を現にしておらず将来にわたりしない旨の申告文が組み込まれており、単なる受領書ではなく本人の表明を兼ねた書面になっている点が特徴です。

確認書の9項目と運用要領の10項目のずれ

注意したいのは、確認書に列挙された項目が9つである一方、運用要領が求める情報提供事項は10あるという点です。確認書の様式には、支援担当者の氏名及び連絡先を独立して記載する欄がありません。説明者の氏名欄が相談窓口の担当者と一致するとも限りません。支援担当者の氏名、メールアドレス、電話番号、受付できる曜日と時間帯を記した別紙を確認書に添付し、同じ場で署名を得ておく構成にしておくと、後日の説明が楽になります。

翻訳・署名・オンライン実施の扱い

  • 確認書は出入国在留管理庁が英語版及び9か国語版を公表している(「特定技能関係の申請・届出様式一覧」の「英語及び9か国語による様式について」の区分)。本人が十分に理解することができる言語の版を使い、日本語版と併せて示して署名を得る運用が整合的
  • 署名は本人の自署とする。押印までは求められていないが、代筆や記名のみで済ませる処理は避ける
  • オンライン実施の場合は、画面共有で確認書の内容を示したうえで、署名済み書面をスキャンで受領し、来日後に原本を回収する流れをあらかじめ設計しておく
  • 3行の日時欄は分割実施の記録欄として使う。1回で終えた場合も、開始時刻と終了時刻を空欄にしない
  • 説明者の氏名欄には、通訳人ではなく説明を行った担当者を記載し、通訳人は別途実施記録に残す

確認書は保存対象の書類そのものです。運用要領は、支援の実施に関する管理簿の事前ガイダンスの欄に、事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号)を保存するよう付記しています。署名をもらって申請書に添えたら役目が終わる書面ではなく、雇用契約が終わった後まで手元に残す書面だと捉えてください。

記録の残し方|省令第2条第2項第3号が求める「支援の状況に係る文書」

記録の根拠は特定技能基準省令第2条第2項第3号です。1号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、当該1号特定技能外国人支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くこととしていること、と定められています。起点が契約終了日である点が実務上重要で、在籍中は当然に保存が続き、退職や帰国の後さらに1年以上が最低ラインになります。

運用要領は、この「支援の状況に係る文書」に少なくとも4区分が含まれなければならないと整理しています。①支援実施体制に関する管理簿、②支援の委託契約に関する管理簿、③支援対象者に関する管理簿、④支援の実施に関する管理簿の4つで、事前ガイダンスは④に位置づけられます。

④のうち事前ガイダンスに関する事項として挙げられているのは、1号特定技能外国人の氏名・生年月日・国籍地域・性別及び在留カード番号、実施担当者(通訳人を含む)の氏名及び所属、実施日時及び実施場所、実施内容(情報提供内容)、実施方法の5項目です。これに加えて確認書の保存が求められます。

記録項目(運用要領)実務で残す具体物つまずきやすい点
氏名・生年月日・国籍地域・性別・在留カード番号支援対象者に関する管理簿、旅券及び在留カードの写し入国前の実施で在留カード番号が未確定のまま空欄になる。上陸後に追記する社内ルールを決めておく
実施担当者(通訳人を含む)の氏名及び所属実施記録票、通訳人名簿、通訳の委託契約書通訳会社名だけが残り、当日担当した通訳者の氏名が特定できない
実施日時及び実施場所実施記録票、確認書の日時欄、Web会議の開催記録確認書の実施時間と支援計画書の実施予定時間が食い違ったまま放置される
実施内容(情報提供内容)説明資料一式(版数と日付入り)、10項目の説明チェックリスト「10項目を説明」の一文だけで、何を配り何を話したのかを再現できない
実施方法対面/ビデオ通話の別、本人確認の方法(旅券の提示など)「資料を送付」と記載してしまい、省令の方法要件を満たしていないことが記録から判明する

扱いやすいのは、確認書とは別に実施記録票を1枚用意し、上記5項目に加えて本人確認の方法、使用言語、通訳人の氏名と所属、説明に用いた資料の版数までを1枚に収める形です。説明資料は改訂のたびに版数と日付を打ち、当日配布した版を記録票に紐づけておけば、数年後でも「何を説明したのか」を復元できます。

保存場所にも指定がある点を見落とさないでください。文書を備え置く先は「当該1号特定技能外国人支援を行う事業所」です。本社で一括保管し、支援を行う事業所には何も置いていない状態は、条文の文言から外れます。クラウドで共有する運用を併用する場合でも、当該事業所から直ちに出力・提示できる状態にしておく必要があります。1年以上はあくまで下限であり、在留期間更新や転職支援の経緯まで遡って説明できるよう、社内規程では長めの保存期間を定めておくほうが安全です。

入管の実地調査で何を見られるか

調査の根拠は入管法第19条の20です。出入国在留管理庁長官は、特定技能所属機関若しくはその役員若しくは職員に対し、報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、若しくは出頭を求め、又は入国審査官若しくは入国警備官に関係人への質問をさせ、特定技能所属機関に係る事業所その他特定技能外国人の受入れに関係のある場所に立ち入り、その設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる、と規定されています。質問や立入検査を行う入国審査官等は身分を示す証票を携帯し、請求があれば提示することとされています。

応じなかった場合の効果も条文に用意されています。報告徴収等を拒んだり虚偽の回答を行ったりした場合には、30万円以下の罰金の対象となります(入管法第71条の4第2号)。登録支援機関側は枠組みが異なり、入管法第19条の34に基づく報告又は資料の提出を求められた際にこれに応じず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出を行った場合は、登録の取消しの対象となります(入管法第19条の32第1項第5号)。

出入国在留管理庁が公表している周知文書では、地方出入国在留管理局が受入れの適正性を確認する目的で実地調査を行っていること、電話や郵送等で調査を行うこともあることが案内されています。実地調査等の結果から法令違反等が認められた場合には指導・助言が行われるほか、特定技能所属機関の欠格事由該当や、登録支援機関の登録の取消しに至る場合があることも明示されています。

事前ガイダンス関係で照合される書面

  • 確認書(参考様式第5-9号)が存在し、本人の署名があるか
  • 確認書の実施日と、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の受付日の前後関係が整合しているか
  • 確認書に記入された開始・終了時刻と、1号特定技能外国人支援計画書の実施予定時間が矛盾していないか
  • 実施方法の記録が対面又はテレビ電話装置その他の方法になっているか、本人確認の方法が残っているか
  • 使用言語と、通訳人の氏名及び所属が特定できるか
  • 説明に用いた資料に、労働条件、安全衛生、保証金・違約金、支援費用の不負担といった各項目が実際に含まれているか

定期届出とも連動します。令和7年4月1日施行の入管法施行規則の改正により、特定技能所属機関の定期届出は四半期ごとから1年に1度となりました。対象期間は4月1日から翌年3月31日まで、提出期間は翌年4月1日から5月31日までで、様式は受入れ・活動・支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-6号)です。改正後の規定に基づく最初の提出は、令和8年4月1日から同年5月31日までとされています。登録支援機関に全部を委託している場合、登録支援機関の届出も特定技能所属機関を経由して提出する建て付けです。届出の記載は手元の管理簿から起こすことになるため、日々の記録が薄いと届出そのものが作れません。

自社で実施するか、登録支援機関に委託するか

支援の実施主体には選択肢があります。入管法第2条の5第5項は、特定技能所属機関が契約により登録支援機関に適合1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合、同条第3項のうち支援体制に係る部分の規定に適合するものとみなす、としています。支援責任者・支援担当者や多言語対応の体制を自社で用意しきれない受入れ機関にとって、全部委託が現実解になります。

ただし委託しても手元に残る責任があります。運用要領(別冊)は、登録支援機関に全部の実施を委託する場合であっても、1号特定技能外国人支援計画の作成については特定技能所属機関が行うこととなる、と明記しています。登録支援機関が必要に応じて作成の補助を行うことは差し支えないとされていますが、作成主体は動きません。また、登録支援機関は委託を受けた支援の実施そのものを他の者に再委託することができず、通訳や送迎のタクシー利用など必要な範囲で補助者に実施の補助を依頼することにとどまります。一部だけを委託する場合は、その委託の範囲を支援計画に明示することが省令上の基準です。

全部委託の場合でも、支援体制からして実効性ある支援を行うことができないと認められるときは、支援計画の適正な実施の確保の基準により受入れが認められない場合があると運用要領は述べています。委託先を選ぶ段階で、事前ガイダンスの実施記録や確認書の管理方法まで具体的に確認しておく意味はここにあります。費用面では、登録支援機関に支払う月額支援委託費は平均約2〜3万円程度が目安です。事前ガイダンス自体は入国前の一度きりの支援ですが、様式管理、通訳の確保、記録票の整備まで含めると、自社実施の負担は説明の3時間だけでは終わりません。

TreeGlobalPartnersグループでの役割分担

株式会社TreeGlobalPartnersが行うのは、外国人の有料職業紹介です(有料職業紹介事業許可 13-ユ-317879)。事前ガイダンスを含む1号特定技能外国人支援の受託や、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請といった入管手続については、グループ内の行政書士法人Tree(登録支援機関)が対応します。人材の紹介と、支援・申請の実施を別の主体が担う構成のため、採用段階から支援体制の設計までを分けて相談いただけます。

なお、技能実習に代わる育成就労制度は、2027年(令和9年)4月1日の施行が決まっています。制度の移行を見据える時期にあたりますが、特定技能1号の義務的支援は現行の特定技能基準省令と運用要領に基づいて運用されます。事前ガイダンスの実施手順と記録様式を今のうちに標準化しておけば、制度が動いた後も土台をそのまま流用できます。

よくある質問

Q. 事前ガイダンスは特定技能雇用契約の締結前と締結後、どちらに実施すべきですか。

A. 法令上の期限は、在留資格認定証明書の交付の申請前(すでに在留している人は在留資格の変更の申請前)です。そのうえで運用要領は、労働条件など契約締結前に本人が把握することが望ましい情報が含まれることから、実施は特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望まれるとしています。したがって、雇用条件書の内容を確定させたうえで、契約締結前に実施しておくのが最も安全な順序になります。

Q. オンラインで実施した場合、確認書の署名はどのように回収すればよいですか。

A. 事前ガイダンス自体は対面又はテレビ電話装置その他の方法で実施でき、インターネットによるビデオ通話も含まれます。確認書については、画面共有で内容を示して説明したうえで、本人が署名した書面をスキャン等で受領し、来日後に原本を回収する流れを事前に決めておく方法が実務的です。確認書は出入国在留管理庁が英語版及び9か国語版を公表しているため、本人が十分に理解することができる言語の版を使ってください。署名は本人の自署とし、代筆や記名のみで済ませる処理は避けてください。

Q. 技能実習2号から同じ会社で特定技能1号に変更する場合も、3時間の実施が必要ですか。

A. 同一機関で引き続き雇用する場合でも事前ガイダンスの実施は必要です。運用要領は、このような場合には支援計画上の実施予定時間よりも短時間で終わることが想定されるとしつつ、1時間に満たないような場合は適切に行ったとはいえないとしています。従事させる業務の内容や報酬の額といった労働条件は改めて十分に理解させる必要があるため、内容を絞ったうえで最低でも1時間以上を確保してください。

Q. 事前ガイダンスの記録はいつまで保存する必要がありますか。

A. 特定技能基準省令第2条第2項第3号により、1号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、当該支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くこととされています。起点は契約終了日なので、在籍中はもちろん、退職後さらに1年以上の保存が最低ラインです。確認書(参考様式第5-9号)もこの保存対象に含まれます。

Q. 事前ガイダンスを現地の送出機関に任せても問題ありませんか。

A. 委託すること自体は排除されていません。ただし運用要領は、送出機関が保証金を徴収しているような場合には適切に事前ガイダンスを実施することが期待できないため、特定技能所属機関が支援の体制の基準を満たしていないと判断される可能性があると注意を促しています。委託する場合でも、実施日時・実施方法・通訳人の氏名を含む記録と確認書を自社で確実に回収できる契約にしておく必要があります。

まとめ

事前ガイダンスの実施期限は、特定技能基準省令第3条第1項第1号イにより、在留資格認定証明書の交付の申請前(在留中の人は在留資格の変更の申請前)です。運用要領はさらに、特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望ましいとしています。転職で受入れ機関が変わった場合も、技能実習から同一機関で移行する場合も、実施を省略することはできません。

実施方法は対面又はテレビ電話装置その他の方法に限られ、本人確認を行ったうえで実施する必要があります。文書の郵送や電子メールの送信のみは認められません。言語は本人が十分に理解することができるものであることが求められ、母国語に限られないものの、内容を余すことなく理解できる水準が必要です。

時間は3時間程度が運用上の目安で、1時間に満たない場合は適切に実施したとはいえないとされています。支援計画書に書いた実施予定時間と実績が食い違うと説明を求められるため、計画段階から現実的な時間を設定してください。確認書の日時欄が3行あることからも、分割実施は想定内です。

記録は特定技能基準省令第2条第2項第3号により、支援を行う事業所で特定技能雇用契約の終了の日から1年以上の備置きが求められます。事前ガイダンスについては、本人の身分事項と在留カード番号、通訳人を含む実施担当者の氏名と所属、実施日時と場所、実施内容、実施方法の5項目に加え、確認書(参考様式第5-9号)の保存が必要です。確認書は英語版及び9か国語版が公表されているため、本人が十分に理解できる言語の版を使ってください。

入管法第19条の20に基づく報告徴収・立入検査を拒んだり虚偽の回答をしたりすれば30万円以下の罰金の対象となり、登録支援機関は入管法第19条の34に基づく求めに応じなければ登録の取消し対象となります。定期届出は令和7年4月1日施行の入管法施行規則の改正により四半期ごとから1年に1度となり、対象期間4月1日から翌年3月31日、提出は翌年4月1日から5月31日です。日々の管理簿がそのまま届出と調査対応の土台になります。

本記事は2026年8月時点で公表されている出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」および同運用要領別冊「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」、特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令、出入国管理及び難民認定法の内容に基づいて作成しています。運用要領および参考様式は改正されることがあり、実際の判断は個別の事情や地方出入国在留管理局の運用によって異なる場合があります。最新の様式・要件は出入国在留管理庁の公表資料をご確認ください。株式会社TreeGlobalPartnersが行うのは外国人の有料職業紹介(有料職業紹介事業許可 13-ユ-317879)であり、1号特定技能外国人支援の受託および在留資格に関する申請手続は、グループ内の行政書士法人Tree(登録支援機関)が対応します。税務に関する事項は税理士に、労働社会保険諸法令に基づく手続に関する事項は社会保険労務士にご確認ください。