特定技能外国人の残業を巡る問題は、割増賃金の未払いという労務トラブルだけでは終わりません。特定技能雇用契約の基準を定める省令(特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令)は、その第1条の柱書で「労働基準法……その他の労働に関する法令の規定に適合していること」を要件として掲げています。労働時間管理の不備は、在留資格そのものの適合性を揺るがす論点になるということです。
出入国在留管理庁の「特定技能外国人受入れに関する運用要領」は、受入れ機関の欠格事由である「労働関係法令違反」の具体例として、36協定に定めた時間数を超えて外国人に長時間労働をさせた場合を明記しています。さらに割増賃金を定める労働基準法第37条に違反して罰金刑を受けた場合、刑の執行を終わった日から5年間は特定技能外国人を受け入れられません。
残業の管理は、労務部門の内部管理事項であると同時に、受入れを継続できるかどうかを左右する在留管理上の要件でもある——この前提から、36協定・上限規制・割増賃金・記録義務を順に整理します。
労働基準法は国籍を問わず適用される|特定技能に「例外」はない
労働基準法第3条(均等待遇)は、使用者が労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはならないと定めています。在留資格が「特定技能」であっても、日本国内の事業場で使用される労働者である以上、法定労働時間(第32条)、休日(第35条)、時間外・休日労働の手続(第36条)、割増賃金(第37条)はそのまま適用されます。
特定技能で重いのは、この労働基準法の遵守が入管法令側の要件にも組み込まれている点です。特定技能基準省令第1条は、雇用関係に関する基準について「労働基準法その他の労働に関する法令の規定に適合していること」を柱書で求め、そのうえで所定労働時間の同等性(第2号)、報酬額の同等性(第3号)、外国人であることを理由とする待遇の差別的取扱いの禁止(第4号)を並べています。労務管理の適法性が、契約の適法性を通じて在留資格の基準に直結する構造です。
運用要領は、受入れ機関の欠格事由の一つとして「労働関係法令違反」を挙げ、その該当例として、36協定に定めた時間数を超えて外国人に長時間労働をさせた場合、労働安全衛生法に定められた措置を外国人に講じていない場合などを示しています。ここでいう違反は「外国人の就労活動に関し」たものであり、違反行為によって特定技能雇用契約や1号特定技能外国人支援計画の適正な履行を確保できないと判断されるときに該当するとされています。
罰則を受けた場合の効果はさらに明確です。特定技能基準省令第2条第1項第4号ロは、労働基準法第119条のうち第16条・第17条・第18条第1項・第37条に係る部分の罰金刑を欠格事由として掲げています。第119条の法定刑は6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金で、割増賃金の不払い(第37条違反)で罰金刑を受ければ、その執行を終わった日から起算して5年を経過するまで特定技能外国人を受け入れられません。既に在籍している外国人の在留期間更新にも影響が及びます。
「日本人の従業員と同じ運用をしているから問題ない」という説明は、日本人側の運用自体が適法である場合にしか成り立ちません。特定技能の受入れを機に、時間外労働の手続と割増賃金の計算を事業場全体で点検しておくほうが、結果的に安全側に働きます。
36協定がなければ1分も時間外労働はさせられない
労働基準法第32条は、休憩時間を除き1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないと定めています。この上限を超えて労働させ、または法定休日に労働させるには、第36条第1項に基づき、事業場の過半数労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)と書面による協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。届出は効力要件であり、締結しただけで届け出ていない期間の時間外労働は違法です。なお例外として、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合には、労働基準法第33条第1項により、行政官庁の許可(事態が急迫していて許可を受ける暇がない場合は事後の届出)を受けて時間外・休日労働をさせることができます。この場合も割増賃金の支払義務は変わりません。
届出様式は労働基準法施行規則第16条第1項により、通常は様式第9号、特別条項を定める場合は様式第9号の2です。協定は事業場単位で締結・届出を行うため、本社と支店・工場で別々の管理が必要になります。特定技能外国人が就労する事業所の協定が有効に届け出られているか、在籍配置の実態と一致しているかを最初に確認してください。
過半数代表者の選出手続も見落とされがちな論点です。労働基準法施行規則第6条の2は、代表者が管理監督者でないこと、協定をする者を選出することを明らかにして実施される投票・挙手等の方法により選出され、使用者の意向に基づき選出された者でないことを求めています。会社が指名した従業員が署名しただけの協定は、手続の適正性を欠くものとして扱われます。
協定に定める事項は、対象となる労働者の範囲、対象期間(1年)、時間外・休日労働をさせることができる場合、1日・1か月・1年それぞれの延長時間または休日労働の日数などです(第36条第2項)。加えて施行規則第17条第1項が、協定の有効期間、1年の起算日、第36条第6項第2号・第3号の要件を満たすことを定めるよう求め、特別条項を設ける場合には限度時間を超えて労働させることができる場合、健康及び福祉を確保するための措置、限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率、限度時間を超えて労働させる場合の手続を追加で定めることとしています。健康福祉確保措置の実施状況に関する記録は、協定の有効期間中および満了後3年間の保存が必要です(同条第2項。条文上は5年間とされていますが、同規則附則第71条により当分の間3年間と読み替えられます)。
特定技能では、この協定の内容が雇用条件書(参考様式第1-6号)の記載と整合していることも重要になります。運用要領は、雇用条件書を申請人が十分に理解できる言語で作成し、内容を十分に理解したうえで署名していることを求めています。所定時間外労働の有無や割増賃金率が書面と実務でずれていれば、労務問題であると同時に、在留諸申請時の説明も崩れます。
時間外労働の上限規制|原則は月45時間・年360時間
36協定を締結しても、延長できる時間には法律上の限度があります。労働基準法第36条第3項・第4項の限度時間は、1か月45時間・1年360時間(1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合は1か月42時間・1年320時間)です。通常予見できない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的にこれを超える必要がある場合に限り、特別条項を定めることができます。
特別条項を定めた場合でも、第36条第5項により1年について720時間以内、1か月について休日労働を含めて100時間未満とする必要があり、限度時間である月45時間(1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合は月42時間)を超えることができるのは1年について6か月以内です。さらに第36条第6項は、協定の有無にかかわらず、時間外労働と休日労働の合計を単月100時間未満とし、対象期間の初日から1か月ごとに区分した各期間に直前の1〜5か月を加えたそれぞれの期間の平均が1か月あたり80時間を超えないこと(いわゆる2〜6か月平均80時間以内)を義務づけています。
実務で最も間違えやすいのは、休日労働を数えるかどうかが基準ごとに異なる点です。月45時間・年360時間・年720時間は法定時間外労働のみで判定し、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は休日労働を含めて判定します。法定休日に出勤させた時間を時間外の集計から除外したまま100時間未満の判定を行うと、実際には超過しているのに気づけません。
| 区分 | 原則(限度時間) | 特別条項を定めた場合の上限 | 休日労働の扱い |
|---|---|---|---|
| 一般の事業・業務 | 月45時間/年360時間 | 年720時間以内、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内、月45時間超は年6回まで | 単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は休日労働を含めて判定 |
| 1年単位の変形労働時間制(対象期間3か月超) | 月42時間/年320時間 | 年720時間以内、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内、月42時間超は年6回まで(この類型では回数制限の基準が45時間ではなく42時間になる) | 同上 |
| 建設事業 | 月45時間/年360時間 | 年720時間以内 ほか(2024年4月1日から適用) | 災害の復旧・復興の事業には単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内が適用されない |
| 自動車運転の業務 | 月45時間/年360時間 | 年960時間以内 | 単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内・月45時間超は年6回までの規制は適用されない |
建設事業と自動車運転の業務は上限規制の適用が5年間猶予されていましたが、2024年4月1日から適用されています(一部特例あり)。自動車運転の業務は特別条項の年間上限が960時間とされる一方、月45時間超を年6回までとする規制などは適用されません。特定技能の受入れ分野によって適用される枠組みが変わるため、自社の事業がどの区分に当たるかを先に確定させてから協定の数値を設計してください。なお、労働基準法上の適用区分とは別に、特定技能・建設分野では特定技能基準省令第1条第1項第7号に基づく分野固有の基準が課され、国土交通省地方整備局等による建設特定技能受入計画の認定を受ける必要があります。報酬の設定や支払方法についても分野固有の基準があるため、労働基準法の枠組みとあわせて分野別運用要領を確認してください。
割増賃金の率と計算の基礎|月60時間超の50%は中小企業も対象
割増賃金の率は労働基準法第37条と平成6年政令第5号で決まります。法定時間外労働は2割5分以上、法定休日労働は3割5分以上、深夜労働(午後10時から午前5時まで)は2割5分以上。そして1か月の法定時間外労働が60時間を超えた部分については、第37条第1項ただし書により5割以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要です。
| 労働の種類 | 法定の割増率(最低限度) | 根拠 |
|---|---|---|
| 法定時間外労働(1日8時間・週40時間超) | 25%以上 | 労働基準法37条1項・平成6年政令第5号 |
| 1か月の法定時間外労働のうち60時間を超えた部分 | 50%以上 | 労働基準法37条1項ただし書 |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%以上 | 労働基準法37条4項 |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 労働基準法37条1項・平成6年政令第5号 |
| 法定時間外労働+深夜 | 50%以上 | 25%+25% |
| 月60時間超の時間外+深夜 | 75%以上 | 50%+25% |
| 法定休日労働+深夜 | 60%以上 | 35%+25% |
月60時間超の5割以上という率は、大企業には2010年4月から適用されていた一方、中小企業には猶予期間が置かれていました。この猶予は2023年3月31日で終了し、2023年4月1日からは中小企業にも適用されています。なお60時間の算定に含まれるのは法定時間外労働であり、法定休日に行った労働は含まれません。週休2日制で法定外休日に出勤させた分は時間外労働として60時間のカウントに入るため、休日の性質を就業規則で明確にしておく必要があります。
割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当は、労働基準法第37条第5項と施行規則第21条による限定列挙です。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類しかなく、それ以外の手当は名称にかかわらず基礎に算入します。手当の名称ではなく実質で判断される点にも注意が必要で、全員に一律定額で支給する「住宅手当」は除外が認められないと解されています。月給者の1時間あたり単価は、施行規則第19条第1項第4号により、月給額をその月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合は1年間における1か月平均所定労働時間数)で除して算出します。
月60時間超の部分については、労使協定を締結することで、5割と2割5分の差に相当する部分の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を与える制度も選択できます(第37条第3項、施行規則第19条の2)。代替休暇は1日または半日単位で、60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内に与える必要があり、取得したかどうかにかかわらず2割5分部分の割増賃金は支払わなければなりません。制度を採用する場合は、外国人本人が仕組みを理解できるよう説明したうえで運用してください。
「日本人と同等以上の報酬」要件と残業代の関係
特定技能基準省令第1条第3号は、外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることを求めています。運用要領は、同程度の技能等を有する日本人労働者がいる場合には、外国人が任される職務内容やその職務に対する責任の程度が当該日本人労働者と同等であることを説明したうえで、報酬額が同等以上であることを説明する必要があるとしています。日本人労働者がいない場合は、賃金規程があれば同規程に照らして、なければ職務内容や責任の程度が最も近い職務を担う日本人労働者との比較で説明することになります。
ここで押さえておきたいのが「報酬」の定義です。運用要領は、報酬を「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」とし、一般的に通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものは除く)は含まれないと整理しています。比較の対象になるのは、あくまで役務の対価として支払われる部分です。
割増賃金は、実際に時間外労働をした月にだけ発生する変動要素です。繁忙期の残業代を織り込んで「支給総額では日本人と同等以上」と説明する組み立ては、残業がない月に同等性の説明が成立しなくなります。参考様式第1-4号(特定技能外国人の報酬に関する説明書)で比較するのは基本給を軸にした報酬額であり、基本賃金の水準そのもので同等性を確保しておくのが実務上は安全です。
技能実習からの移行者には、さらに具体的な要求があります。運用要領は、技能実習2号修了者はおおむね3年間、3号修了者はおおむね5年間の経験者として取り扱う必要があるとし、技能実習生として受け入れたことがある者を特定技能外国人として雇用する場合には、技能実習2号修了時の報酬額を上回ることはもとより、実際に3年程度または5年程度の経験を積んだ日本人技能者に支払っている報酬額とも比較して適切に設定するよう求めています。
固定残業代(みなし残業手当)を採用する場合は、入管への届出義務にも留意が必要です。運用要領の変更届出一覧では、固定残業代制度の導入または廃止をする場合、所定時間外・休日・深夜労働に対して支払われる割増賃金率を減らす場合、基本賃金を減額する場合、賃金支払方法を口座振込から通貨払に変更する場合、控除項目を増やす場合などが届出の対象とされています。固定残業代を導入していても、想定時間数を超えた分の差額精算は当然に必要で、精算漏れは第37条違反として扱われます。
フルタイム要件と労働時間設計|所定と時間外を切り分ける
特定技能基準省令第1条第2号は、外国人の所定労働時間が、受入れ機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であることを求めています。運用要領はこの「所定労働時間」を雇用契約や就業規則で定められた労働時間(休憩時間を含まない)と説明し、「通常の労働者」はいわゆるフルタイムで雇用される一般の労働者を指し、アルバイトやパートタイム労働者は含まれないとしています。
制度上の「フルタイム」の目安も明示されています。運用要領は、原則として労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ週労働時間が30時間以上であることをフルタイムとしています。あわせて、特定技能外国人はフルタイムで業務に従事することが求められることから、複数の企業が同一の特定技能外国人を雇用することはできないとされており、繁忙期に他社へ応援に出す、副業として別会社と雇用契約を結ぶといった運用は取れません。
フルタイム要件は所定労働時間の話であり、時間外労働の上限規制とは別のレイヤーにあります。所定を週30時間未満に抑えたうえで残業で実労働時間を確保する設計は、フルタイム要件を満たさなくなるため、運用要領上、所定労働がフルタイムでなくなった場合として14日以内の届出が必要になります。所定労働時間数や所定労働日数の変更、変形労働時間制の採用・廃止も届出事項です。
変形労働時間制を採る場合、確認対象書類として、特定技能外国人が十分に理解できる言語を併記した年間カレンダーの写しと、1年単位であれば労働基準監督署へ届け出た協定書の写しが求められます。変形労働時間制では時間外労働の判定が日・週・対象期間の三段階になるため、割増賃金の計算方法もあわせて設計しておかないと、後から未払いが生じやすくなります。
休日・休暇の扱いも届出と結びついています。年間合計休日日数を当初の契約より少なくする場合や、当初の契約より休暇日数を減らす場合は届出が必要です(平年・うるう年や暦の曜日配置による変動、法令による祝日の変更に伴う減少は除きます)。さらに特定技能基準省令第1条第5号は、外国人が一時帰国を希望した場合には必要な有給休暇を取得させることを求めています。人手不足や繁忙を理由に一時帰国の休暇を認めない運用は、労務問題にとどまらず契約基準への不適合として扱われる余地があります。
労働時間の記録義務と、入管への年1回の届出
労働基準法第108条は事業場ごとの賃金台帳の調製を義務づけ、施行規則第54条が記載事項を定めています。氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数に加え、第6号として、時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合の延長時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数を労働者ごとに記入しなければなりません。記入しない場合や虚偽の記載をした場合は、第120条により30万円以下の罰金の対象となります。
記録の保存期間は、労働基準法第109条が5年間としつつ、第143条により当分の間は3年間と読み替えられています。対象は賃金台帳や労働者名簿だけでなく、出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録に関する書類も含まれます。
把握の方法については、厚生労働省が平成29年1月20日に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が、原則として使用者が自ら現認して記録するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し記録することを求めています。自己申告制のみに依存した管理は、外国人労働者が申告しづらい環境と結びつくと、実態との乖離が拡大しやすくなります。
健康確保の側からも義務があります。労働安全衛生法第66条の8の3は、面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと定めており、労働安全衛生規則第52条の7の3はタイムカードによる記録やパソコン等の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法を挙げ、記録を作成して3年間保存する措置を求めています。時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者に対しては、その超えた時間に関する情報を速やかに通知しなければならず(労働安全衛生規則第52条の2第3項)、本人の申出があれば医師による面接指導を行う必要があります(労働安全衛生法第66条の8第1項)。
特定技能に固有の義務として、活動状況に関する帳簿の備付けがあります。運用要領は、特定技能外国人の待遇に係る事項が記載された書類として賃金台帳(労働基準法第108条)等を、出勤状況に関する書類として出勤簿等を挙げており、電磁的記録による作成・保存も認められています。
そして残業の実績は、入管への届出を通じて毎年可視化されます。令和7年3月12日公布・同年4月1日施行の入管法施行規則の改正により、定期届出はそれまでの四半期ごとから年1回に変更され(最初の年1回の届出は令和8年4月以降)、対象年の4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援実施状況を、翌年4月1日から5月31日までに「受入れ・活動・支援実施状況に係る届出書」(参考様式第3-6号)で提出する仕組みです。届出事項には、実労働日数、所定内実労働時間数、超過実労働時間数、きまって支給する現金給与額(うち超過労働給与額として時間外手当、深夜手当、休日手当、宿日直手当等)、控除額などが含まれます。36協定や上限規制と整合しない残業実績は、この届出で行政側から把握できる状態になっているという前提で管理してください。
受入企業が整えるべき社内運用
月次で締めるチェック項目
- 法定時間外労働(1日8時間・週40時間超)と法定休日労働を分けて集計しているか
- 単月の時間外+休日労働が100時間未満に収まっているか(休日労働を含めて判定)
- 直前2〜6か月の平均が1か月あたり80時間以内か
- 月45時間(1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合は月42時間)を超えた月数が、対象期間の1年で6回以内に収まっているか
- 1か月の法定時間外労働が60時間を超えた部分に5割以上の割増賃金を支払っているか
- 割増賃金の基礎に、施行規則第21条の限定列挙以外の手当を正しく算入しているか
- 固定残業代を採用している場合、想定時間数を超えた分の差額を精算しているか
36協定まわりの管理
協定の有効期間と1年の起算日をカレンダーで管理し、更新漏れを防ぐことが出発点になります。過半数代表者の選出は、選出目的を明らかにした投票・挙手等の手続で行い、その記録を残してください。特別条項を設けている場合は、限度時間を超えて労働させる際の手続(事前の申入れ・協議など協定に定めた方法)を実際に踏んでいるか、健康福祉確保措置の実施状況の記録を有効期間中および満了後3年間(労働基準法施行規則第17条第2項、同規則附則第71条による読替え)保存しているかも点検対象です。
本人が理解できる形での説明
厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」は、労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な労働条件について外国人労働者が理解できるようその内容を明らかにした書面を交付することを求めています。賃金については、決定・計算・支払の方法に加え、税金、労働・社会保険料、労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いについても理解できるよう説明し、実際に支給する額が明らかとなるよう努めることとされています。割増賃金の率や固定残業代の仕組みは、給与明細の見方とセットで説明すると認識のずれが起きにくくなります。なお税額の具体的な計算や個別の税務相談は税理士の業務領域にあたるため、詳細は顧問税理士にご確認ください。
支援体制と是正の順序
1号特定技能外国人支援計画には、支援責任者または支援担当者が外国人およびその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施し、労働基準法その他の労働に関する法令の規定に違反していることその他の問題の発生を知ったときは、労働基準監督署その他の関係行政機関に通報することが含まれます。支援の全部を登録支援機関に委託している場合も、通報の枠組みは同じです。ただし支援の一部のみを委託する場合、特定技能基準省令第3条第1項第1号ヌの「定期的な面談の実施、行政機関への通報」については第三者への委託が認められていない点に注意してください(運用要領)。面談で残業時間や割増賃金の問題が挙がった段階で社内が是正に動けるよう、労務部門と支援担当の連絡経路を先に決めておくことが、結果として受入れの継続性を守ります。
なお、外国人材のご紹介は株式会社TreeGlobalPartners(有料職業紹介許可 13-ユ-317879)が、在留資格の申請や登録支援業務は、グループ企業である行政書士法人Tree(登録支援機関)が対応します。ただし建設業務に就く職業の紹介は職業安定法第32条の11第1項により有料職業紹介事業では取り扱えないため、建設分野については在留資格申請および登録支援業務のみのご対応となります。登録支援機関に支援を委託する場合の月額支援委託費は、平均で約2〜3万円程度が目安とされています。
よくある質問
Q. 36協定を届け出ていれば、特定技能外国人にも日本人と同じだけ残業させられますか。
A. 労働時間の規制自体は国籍を問わず同じで、36協定の範囲内かつ上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間以内、休日労働を含めて単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内、月45時間超は年6回まで。1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合は42時間が基準)に収まっている必要があります。ただし特定技能では、雇用条件書に記載した所定時間外労働の内容と実態が一致していること、協定に定めた時間数を超えた長時間労働をさせないことが、在留資格側の基準・欠格事由とも結びつく点が異なります。運用要領は、36協定に定めた時間数を超えて外国人に長時間労働をさせた場合を労働関係法令違反の例として明示しています。
Q. 月60時間を超える時間外労働の5割以上の割増賃金は、中小企業でも必要ですか。
A. 必要です。大企業には2010年4月から適用されていましたが、中小企業の猶予措置は2023年3月31日で終了し、2023年4月1日以降は企業規模にかかわらず、1か月の法定時間外労働が60時間を超えた部分について5割以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要になっています。深夜に及ぶ場合は深夜割増2割5分が加算され7割5分以上です。なお60時間の算定に法定休日労働は含まれませんが、法定外休日の労働は時間外労働として算入されます。
Q. 特定技能外国人に固定残業代(みなし残業手当)を設定できますか。
A. 制度として一律に禁止されているわけではありませんが、注意点が二つあります。一つは労働基準法上の要件で、基本給と割増賃金部分が判別できること、想定時間数を超えた分の差額を精算することが必要です。もう一つは入管への届出で、運用要領の変更届出一覧では、固定残業代制度の導入または廃止をする場合が届出の対象とされています。割増賃金率を減らす場合や基本賃金を減額する場合も同様に届出が必要です。
Q. 残業代を含めれば日本人と同水準になる場合、報酬の同等性要件は満たしますか。
A. 割増賃金は実際に時間外労働をした月にしか発生しない変動要素であり、残業のない月には同等性の説明が成立しなくなります。運用要領は、職務内容や責任の程度が同等であることを説明したうえで報酬額を比較する枠組みを示しており、賃金規程がある場合は同規程に照らして判断されます。基本賃金の水準そのもので同等以上を確保し、参考様式第1-4号(報酬に関する説明書)でその根拠を説明できる状態にしておくのが実務上は安全です。
Q. 労働時間の記録はどのくらい保存すればよいですか。
A. 賃金台帳や出勤簿・タイムカードなど労働時間の記録に関する書類は、労働基準法第109条により5年間の保存とされていますが、第143条の経過措置により当分の間は3年間です。これとは別に、労働安全衛生規則第52条の7の3に基づく労働時間の状況の記録は3年間保存する措置が求められます。36協定の特別条項に係る健康福祉確保措置の実施状況の記録も、労働基準法施行規則附則第71条の読替えにより当分の間は有効期間中および満了後3年間です。特定技能では、賃金台帳や出勤簿等を活動状況に関する帳簿として事業所に備え置く義務もあり、電磁的記録による保存も認められています。
まとめ
特定技能外国人の残業管理は、労働基準法の問題であると同時に在留資格の要件の問題でもあります。特定技能基準省令第1条は柱書で労働基準法その他の労働に関する法令への適合を求めており、割増賃金(第37条)違反で罰金刑を受ければ、刑の執行を終わった日から5年間は受入れができません。
時間外労働をさせるには、事業場ごとに36協定を締結し、様式第9号(特別条項がある場合は様式第9号の2)で所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります(災害等による臨時の必要がある場合の労働基準法第33条第1項の許可・事後届出は別枠の例外です)。過半数代表者の選出手続、協定の有効期間、健康福祉確保措置の記録保存(当分の間、有効期間中および満了後3年間)まで含めて、手続の適正性が問われます。
上限規制は、原則が月45時間・年360時間、特別条項を定めても年720時間以内・単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内・月45時間超は年6回までです(1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合は42時間が基準)。月45時間や年720時間は時間外労働のみで、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は休日労働を含めて判定するという違いが、集計ミスの最大の原因になります。
割増率は時間外25%以上、月60時間超の部分50%以上(中小企業も2023年4月1日から適用)、深夜25%以上、法定休日35%以上です。割増賃金の基礎から除外できる手当は施行規則第21条の限定列挙に限られ、名称ではなく実質で判断されます。
報酬の同等性は基本賃金の水準で確保し、残業代で補う設計は避けるのが安全です。所定労働時間はフルタイム(原則、週5日以上かつ年間217日以上、週30時間以上)を維持し、変更が生じた場合は14日以内の届出が必要になります。建設分野では、労働基準法上の上限規制とは別に建設特定技能受入計画の認定など分野固有の基準も確認してください。
労働時間は客観的な方法で把握して記録し、賃金台帳には時間外・休日・深夜の各時間数を記入します。実労働日数・所定内実労働時間数・超過実労働時間数・超過労働給与額は、令和7年4月1日施行の省令改正で年1回となった定期届出の届出事項でもあり、残業の実績は行政側から把握できる状態にあるという前提で管理体制を組み立ててください。
※ 本記事は2026年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の労務管理や在留資格申請の適否を保証するものではありません。労働時間・割増賃金の具体的な運用や36協定の内容は、事業場の実情や適用される特例によって異なります。税額の計算・税務申告に関する事項は税理士、社会保険の手続に関する事項は社会保険労務士、個別の紛争に関する事項は弁護士など、各分野の専門家にご確認ください。最新の取扱いは、出入国在留管理庁および厚生労働省の公表資料をご確認ください。