特定技能の支援計画とは?義務的支援10項目と最新制度改正を解説

特定技能外国人を受け入れる企業が必ず実施しなければならない義務的支援——その種類は10項目に及びます。「雇用契約を結べば終わり」ではなく、採用後も継続的な支援義務が企業(受入機関)に課されており、これを怠ると改善命令を経て最長5年間の受入禁止という厳しい制裁が待っています。

さらに2025年4月1日には制度改正が施行され、定期届出の頻度変更や面談のオンライン解禁など、実務対応が変わった部分も少なくありません。本記事では支援計画の全体像から10項目の詳細、制度改正のポイント、自社支援と登録支援機関への委託の判断基準まで整理します。

支援計画の作成や登録支援機関の選定でお悩みの企業は、グループ内の行政書士法人Treeにご相談ください。支援計画書の作成代行から、登録支援機関として月額支援を担うことも可能です。

1号特定技能外国人支援計画とは?法的義務と全体像

支援計画が必要な理由:特定技能1号だけに課される義務

特定技能には1号と2号があります。支援計画の策定・実施義務は1号のみに課されるものです。特定技能2号は高度な専門性を持つ人材を対象とし、支援計画の義務はありません。

1号に支援計画が求められる背景は、特定技能1号の外国人が日本での就労・生活に不慣れなケースが多く、言語や生活習慣の違いから生じるトラブルを防ぎ、適切な生活基盤を確保するという入管法の趣旨にあります。受入機関(企業)はこの義務を怠ることができず、出入国在留管理庁の支援制度ページでも詳細が公表されています。

義務的支援と任意的支援の違い

支援には「義務的支援」と「任意的支援」の2種類があります。

区分内容実施義務
義務的支援法令で定められた10項目(後述)。実施しなければ法令違反となる必須
任意的支援日本語能力向上のための費用補助、日常生活の各種相談対応の強化など、企業が自主的に上乗せする支援任意

義務的支援は最低限の要件であり、任意的支援を加えることで外国人材の定着率向上につながります。外国人採用を人材戦略として位置付けている企業ほど、義務の範囲を超えた任意支援に積極的に取り組む傾向があります。

支援計画書(参考様式第1-17号)の位置づけ

義務的支援の内容は「1号特定技能外国人支援計画書」(参考様式第1-17号)として書面化し、在留資格申請時に提出します。この書面は出入国在留管理庁が審査する重要書類のひとつであり、記載内容が不明確・不十分な場合は申請が不許可となることがあります。

登録支援機関に支援業務の全部を委託する場合も、支援計画書そのものの作成責任は受入機関(企業)にあります。委託契約書と合わせて提出が必要です。

義務的支援10項目を1つずつ解説

以下の10項目は、入管法施行規則に基づく義務的支援の全項目です。要件の数字(時間数・頻度等)は法令上の最低基準であり、下回ることは許されません。

①事前ガイダンス(3時間以上・対面またはビデオ通話)

入国・上陸前に、就労条件・生活環境・支援の内容などを外国人が理解できる言語で説明します。実施時間は3時間以上が必要です。対面またはビデオ通話(音声と映像が同時に確認できるもの)で行い、電話や音声のみのツールは不可です。内容・実施日時・担当者名などを記録に残す義務があります。

②出入国時の送迎(帰国時は保安検査場まで)

入国時は空港から住居まで、帰国時は住居から空港の保安検査場入口まで送迎します。入国時は外国人と同行する必要があります。帰国時は保安検査場内には入れないため、その入口での見送りが要件を満たします。送迎が自社で困難な場合はタクシー費用の補助等で対応するケースもありますが、「同行」要件の解釈は確認が必要です。

③住居確保・生活に必要な契約支援

適切な住居の確保を支援します。具体的には、社宅の提供または不動産会社への同行・連絡調整が含まれます。また、銀行口座の開設、携帯電話の契約、ライフライン(電気・ガス・水道)の契約手続きへの同行または書類作成支援も義務に含まれます。外国人が単独で手続きを行える状態でないことを前提に、実質的なサポートが求められます。

④生活オリエンテーション(8時間以上)

日本での生活ルールやマナー、公共サービスの利用方法、防災・緊急時の対応などを外国人が理解できる言語で説明します。実施時間は8時間以上が必要です。対面またはビデオ通話で実施し、記録義務があります。事前ガイダンスとは別に実施する必要があります。

⑤公的手続等への同行

住民登録・社会保険・税務申告など、行政機関への届出に同行または書類作成支援を行います。入国後だけでなく、在留期間中に継続的に必要となる手続きも対象です。各種手続きの期限や必要書類の案内も含めた実質的なサポートが想定されています。

⑥日本語学習の機会の提供

日本語教育機関への入学案内、自己学習のための教材紹介、日本語教室に関する情報提供など、日本語を学ぶ機会を提供します。費用の補助は義務ではありませんが、日本語学習環境の整備という観点から任意で費用補助を行う企業も増えています。

⑦相談・苦情への対応(窓口設置と記録義務)

相談窓口を設置し、外国人からの相談・苦情に対して、外国人が理解できる言語で対応する義務があります。相談受付の体制は平日週3日以上・休日週1日以上の稼働が必要です(出入国在留管理庁の運用指針より)。相談内容・対応結果の記録と一定期間の保管が求められます。

⑧日本人との交流促進

地域行事・社内行事への参加案内、日本人との交流機会の創出など、外国人が地域コミュニティや職場になじめるよう支援します。具体的な取組み内容は企業の裁量に委ねられていますが、「案内するだけ」では不十分で、実質的な参加機会の提供が求められます。

⑨転職支援(人員整理等の場合)

会社都合による解雇・雇用契約の終了が発生した場合、外国人が新たな就職先を見つけられるよう転職支援を行う義務があります。求職活動に必要な情報提供や、公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援が含まれます。外国人本人の都合による退職の場合はこの義務は生じませんが、誠実な対応が信頼関係の観点から重要です。

⑩定期的な面談・行政機関への通報(3か月に1回以上)

支援担当者が外国人本人および監督者(直属上司)と3か月に1回以上、定期的に面談を実施します。面談では就労状況や生活状況を確認し、問題があれば解決策を講じます。外国人が働きすぎや賃金不払いなど労働条件違反の状態にある場合や、不法就労・不法滞在の疑いがある場合は、関係行政機関への通報義務が生じます。

支援計画の策定・10項目の実施体制構築をサポート

グループ内の行政書士法人Treeは登録支援機関として、義務的支援10項目の代行実施から支援計画書の作成まで対応しています。特定技能の受入れについてまずはお気軽にご相談ください。

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支援計画書の作成方法と提出タイミング

様式の入手方法と記載のポイント

支援計画書の書式(参考様式第1-17号)は出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロードできます。記載にあたって押さえるべきポイントは以下の通りです。

  • 義務的支援10項目を全て記載し、各項目の実施方法・実施時期・実施者を具体的に記述する
  • 支援の実施者(自社担当者または委託先の登録支援機関)の情報を明確に記載する
  • 外国人が理解できる言語での対応方法(使用言語・通訳手段等)を明記する
  • 登録支援機関に委託する場合は、委託する支援項目の範囲を記載し、委託契約書の写しを添付する
  • 記載内容が実際の実施体制と一致していること(審査後の抜き打ち確認がある場合もある)

在留資格申請時に提出するタイミング

支援計画書は以下の3種類の申請すべてで提出が必要です。

申請の種類提出タイミング
在留資格認定証明書交付申請海外から招へいする場合。申請時に提出
在留資格変更許可申請技能実習等からの切替時。申請時に提出
在留期間更新許可申請1年・2年・3年ごとの更新時。申請時に提出

いずれも雇用契約締結後・在留資格申請前に支援計画書の作成と双方の署名を完了させておく必要があります。申請時に未作成・未署名の状態だと書類不備として審査が進みません。

不備による不許可を防ぐ5つのチェックポイント

  1. 10項目の記載漏れがないか——義務的支援の項目数は法定されており、1項目でも欠けると不備とみなされる
  2. 支援言語が特定されているか——「外国人が理解できる言語」が何語であるかを明記し、その言語対応の体制が確保されているか
  3. 支援担当者の要件を満たしているか——当該外国人の直属上司・同僚と異なる部署からの配置が必要(人事・総務等)
  4. 委託の場合は委託契約書が整っているか——登録支援機関の名称・登録番号・委託範囲が明記された契約書が必要
  5. 記載内容が実態と一致しているか——「日本語教室への案内」と記載しても、実際にその体制がない場合は問題となる

2025年4月施行の制度変更:支援計画・定期面談・定期届出に何が変わった?

2025年4月1日施行の改正により、支援関連の実務で変更が生じた部分があります。以下に主な変更点を整理します。

変更項目改正前2025年4月1日以降
定期届出の頻度四半期ごと(年4回)年1回(2026年4月が初回提出)
定期面談の方法対面のみ外国人の同意があればオンライン可(音声のみ不可)
支援実施困難時の届出規定なし参考様式第3-7号で届出義務(新設)
協力確認書の提出任意地方公共団体2箇所への協力確認書提出が義務化

定期面談のオンライン解禁と注意事項

定期面談(3か月に1回以上)は、これまで対面実施が求められていましたが、2025年4月1日以降は外国人本人の同意があればオンライン実施が可能になりました。ただし、以下の条件がある点に注意が必要です。

  • 音声のみのツール(電話等)は不可。映像と音声の双方が確認できるビデオ通話等を使用すること
  • 初回の面談は対面での実施が推奨されている(法令上の義務ではないが、信頼関係構築の観点から)
  • 外国人の同意は記録に残しておくこと
  • 面談記録(日時・参加者・確認事項・対応内容)の作成・保管義務は変わらない

定期届出が年4回から年1回へ(2026年4月に初回提出)

受入機関(企業)が出入国在留管理庁に提出する「定期届出」(支援実施状況報告)は、従来四半期ごと(年4回)の提出が義務でしたが、2025年4月1日以降は年1回に変更されました。初回の提出は2026年4月が対象となります。

届出の内容は変わりません。支援の実施状況、面談の記録、相談対応の記録などを報告します。頻度は減りましたが、記録の日常的な整備は引き続き必要です。年1回にまとめて提出できる体制を整えておきましょう。

新設:支援実施困難時の届出義務(参考様式第3-7号)

支援計画に定めた支援が実施できなくなった場合、参考様式第3-7号による届出が義務化されました(2025年4月1日施行)。従来は規定がなく、支援が途絶えても届出がなされないケースが課題となっていました。

たとえば、登録支援機関との委託契約が解除された場合や、支援担当者が不在になった場合などが該当します。速やかに届出を行い、支援の継続体制を回復する必要があります。

協力確認書の義務化(地方公共団体2箇所)

地方公共団体(都道府県・市区町村)の外国人支援窓口との連携を証明する協力確認書の提出が義務化されました。受入機関の所在地を管轄する地方公共団体2箇所から確認書を取得し、支援計画書とともに提出します。協力確認書の取得手続きには数週間かかることがあるため、申請スケジュールに余裕を持った準備が必要です。

自社支援か登録支援機関への委託か?判断チャートと費用比較

自社支援に必要な6つの要件(過去2年の管理実績等)

自社で支援計画を実施するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 過去2年以内の雇用・管理実績——中長期在留者(就労資格等を持つ外国人)を雇用・管理した実績があること
  2. 外国人への言語対応体制——当該外国人が理解できる言語で支援を行える体制を確保していること
  3. 支援担当者の部署要件——支援担当者は当該外国人の直属上司・同僚と異なる部署(人事・総務等)から配置されること
  4. 刑罰等を受けていないこと——過去5年以内に出入国・労働関連の法令違反等がないこと
  5. 支援担当者のトレーニング——支援計画の実施に関する知識・経験を持つ担当者を配置していること
  6. 支援計画の適正実施が見込まれること——受入機関としての総合的な適正要件

中小企業では「過去2年以内の雇用・管理実績がない」「言語対応できる担当者がいない」というケースが多く、初めて特定技能外国人を受け入れる企業は自社支援の要件を満たさないことが少なくありません。

登録支援機関とは?費用相場と選び方(月額平均約2〜3万円)

登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録した機関(行政書士法人・社労士法人・人材関連企業等)で、受入機関に代わって義務的支援の全部または一部を担います。登録支援機関に全部委託した場合は、受入機関が直接支援を実施できなくても要件を満たせます。

月額支援委託費の相場は平均約2〜3万円程度です(外国人1人あたり)。規模・対応言語・支援内容の手厚さによって費用は異なります。選定にあたっては、以下の点を確認すると良いでしょう。

  • 対応言語が当該外国人の母国語に対応しているか
  • 義務的支援10項目のすべてを委託可能か(一部委託の場合は残りを自社で担う必要がある)
  • 定期面談・届出書類の作成代行まで対応しているか
  • 緊急時の相談対応体制があるか
  • 登録番号・実績・担当者の専門性が確認できるか

約84%が委託を選ぶ理由

出入国在留管理庁の公表資料によれば、特定技能外国人を受け入れる企業のうち約84%が登録支援機関への委託を選択しています(2024年末時点)。その理由は主に以下の3点です。

委託を選ぶ主な理由自社支援との比較
自社支援の要件(過去2年の管理実績等)を満たせない特に初めて外国人を採用する中小企業で多い
多言語対応・生活支援のノウハウがない専門の登録支援機関は多言語・24時間対応体制を持つ場合も
社内の人的リソースを本業に集中させたい支援業務を外部化することで管理工数を削減できる

コスト面で見ると、月額約2〜3万円の委託費を払っても、自社で専任担当者を置くより経済合理性が高いケースが多いのが実態です。

よくある失敗と支援計画のコンプライアンス

不許可につながる不備パターン5選

支援計画書の不備や実施体制の問題が原因で在留資格申請が不許可となるケースがあります。特に多い不備パターンを整理しました。

  1. 支援担当者が直属上司と同一部署——支援担当者の部署要件を知らずに現場の直属上司を担当者に指定している
  2. 言語対応の実態がない——「〇〇語で対応可能」と記載しているが、実際に対応できる人員・体制がない
  3. 委託範囲が不明確——登録支援機関に「全部委託」と記載しているが、委託契約書の記載内容が一部委託になっている
  4. 協力確認書の取得忘れ——2025年4月以降の申請で協力確認書(地方公共団体2箇所)が未取得のまま申請している
  5. 生活オリエンテーションの時間不足——「オリエンテーション実施」と記載しているが、8時間以上の実施計画になっていない

支援を怠った場合の罰則(改善命令・5年間受入禁止)

義務的支援を適切に実施しない場合、出入国在留管理庁から改善命令が発せられます。改善命令に従わない場合には、以後5年間にわたって新たな特定技能外国人の受け入れが禁止されます(入管法第19条の23等)。

また、支援計画書に虚偽の記載をして申請した場合は、刑事罰の対象となる可能性もあります。支援義務の履行状況は出入国在留管理庁の立入調査(実地確認)でチェックされることもあるため、日常的な記録の整備が不可欠です。

支援体制の構築に不安がある場合は、早期に行政書士等の専門家や登録支援機関に相談することが、リスク回避の観点から合理的な選択といえます。

よくある質問

Q. 特定技能の義務的支援とはどういうものですか?

A. 1号特定技能外国人を受け入れる企業が法令上必ず実施しなければならない10項目の支援です。事前ガイダンス・出入国送迎・住居確保・生活オリエンテーション・公的手続同行・日本語学習機会・相談対応・交流促進・転職支援・定期面談の10項目があります。

Q. 支援計画書はいつ提出すればよいですか?

A. 在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請のいずれにも提出が必要です。雇用契約締結後、在留資格申請前に作成・署名を完了させてください。

Q. 支援計画を自社で実施するための条件は何ですか?

A. 過去2年以内に中長期在留者(就労資格等)の雇用・管理実績があること、外国人が理解できる言語で支援できる体制の確保、支援担当者が当該外国人の直属上司・同僚と異なる部署(人事・総務等)から配置されること等、複数の要件を全て満たす必要があります。初めて特定技能外国人を受け入れる企業は要件を満たさないことが多く、登録支援機関への委託が現実的です。

Q. 2025年4月の制度改正で何が変わりましたか?

A. 主な変更点は3つです。①定期届出が四半期(年4回)から年1回に変更(2026年4月が初回提出)、②定期面談が外国人の同意があればオンライン実施可能(ただし音声のみ不可、初回は対面推奨)、③地方公共団体への協力確認書提出が義務化されました。

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※ 本記事の内容は2026年3月時点の入管法令に基づきます。制度・手数料は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。