特定技能の雇用形態|直接雇用・派遣・請負の可否を分野別整理

特定技能外国人をどの雇用形態で受け入れられるかは、企業の判断ではなく分野ごとの閣議決定で決まります。労働者派遣が使えるのは19分野のうち農業と漁業だけ、航空と鉄道は在籍型出向を含む直接雇用、残る15分野は「直接雇用に限る」という区分です。本記事では、分野別運用方針と出入国在留管理庁の運用要領をもとに、派遣元・派遣先が満たすべき要件、請負と偽装請負の線引き、建設分野で派遣も有料職業紹介も使えない法的な理由までを、受入企業の実務担当者向けに整理します。

雇用形態を決めるのは分野別運用方針

入管法別表第1の2の表の特定技能の項の下欄第1号は、1号特定技能外国人の活動を「本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う」ものと定めています。特定技能は雇用契約を出発点とする在留資格であり、業務委託や請負で個人と直接取引する形は制度の枠外です。

雇用契約の中身にも縛りがあります。特定技能基準省令第1条第2号は所定労働時間が通常の労働者と同等であることを求め、運用要領はここでいうフルタイムを「原則、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ、週労働時間が30時間以上」と説明しています。フルタイム従事が前提であることから、複数の企業が同一の特定技能外国人を雇用することはできません

直接雇用か派遣かという雇用形態は、分野ごとの閣議決定である分野別運用方針の「特定技能外国人の雇用形態」の項で定められており、受入企業が選べる事項ではありません。

押さえるべき原則

運用要領は、分野別運用方針において派遣形態で雇用できる分野は農業分野及び漁業分野とされていることから、これ以外の特定産業分野については派遣形態での雇用は認められないと明記しています。

19分野の雇用形態一覧

令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針は、19の特定産業分野を定めています。各分野の「特定技能外国人の雇用形態」の記載を整理すると、次の3グループに分かれます。

区分該当分野分野別運用方針の記載
直接雇用に限る(15分野)介護/ビルクリーニング/リネンサプライ/工業製品製造業/建設/造船・舶用工業/自動車整備/宿泊/自動車運送業/物流倉庫/飲食料品製造業/外食業/林業/木材産業/資源循環「直接雇用に限る。」
直接雇用+労働者派遣(2分野)農業/漁業分野の事業者を特定技能所属機関とする直接雇用形態、及び労働者派遣事業者を特定技能所属機関として外国人を当該分野の事業者に派遣する労働者派遣形態
直接雇用(在籍型出向を含む・2分野)航空/鉄道分野の事業者を特定技能所属機関とする直接雇用形態(同時に当該分野の2事業者を特定技能所属機関とする在籍型出向形態を含む)

漁業分野の労働者派遣形態には船員派遣形態が含まれます。ただし農業・漁業でも、労働者派遣事業の許可さえあれば誰でも派遣元になれるわけではありません。

農業・漁業の派遣と派遣元の要件

分野別運用方針は、農業分野について「冬場は農作業ができないなど、季節による作業の繁閑がある」「同じ地域であっても、作目による収穫や定植等の農作業のピーク時が異なる」という特性を挙げ、農繁期の労働力確保や産地間での労働力の融通のため派遣形態が不可欠だとしています。漁業分野では、対象魚種や漁法等で繁忙期・閑散期が異なること、事業者の多くが零細で半島地域や離島地域等に存在していることを理由としています。

派遣形態では、外国人と特定技能雇用契約を結ぶ派遣元が特定技能所属機関となり、1号特定技能外国人支援の実施義務も届出義務も派遣元が負います。農業経営体や漁業経営体は派遣先にあたります。

派遣元の要件を定めるのが特定技能基準省令第2条第1項第9号イで、農業分野では次の①〜④のいずれかに該当し、かつ法務大臣が農林水産大臣と協議のうえで適当と認められる者に限られます。

運用要領別冊は、①の「農業に関連する業務を行っている者」として農畜産物の集荷、加工、販売、営農・技術指導を行う生産者団体等を挙げています。漁業分野も構造は同じで、④に相当する類型はありません。

一般の人材派遣会社は原則として派遣元になれない

運用要領は、いわゆる人材派遣会社が派遣元として特定技能所属機関となるためには、特定技能所属機関の基準を満たすとともに上記①〜④のいずれかを満たさなければならないとしています。農業・漁業と資本関係も業務上の関与もない派遣会社は、この段階で対象外です。農業分野では、適正な在留管理を図る観点から派遣事業者として適当と認められる期間を3年間とし、経過後に改めて該当性を確認する運用が示されています。

派遣で受け入れる場合の手続と派遣先の要件

派遣先にも基準が及ぶ

特定技能基準省令第2条第1項第9号ロは、派遣元が同項第1号から第4号までのいずれにも該当する者に労働者派遣等をすることを求めています。派遣先も次の4点を満たす必要があります。

申請時の書類と届出のタイミング

在留諸申請では、労働者派遣契約書の写し、派遣計画書(参考様式第1-12号)、就業条件明示書(参考様式第1-13号)が確認対象です。派遣先関係では、派遣先の概要書(農業は参考様式第1-14号、漁業は第1-15号)が求められます。

1
派遣先と派遣期間を申請時までに確定する

派遣先及び派遣期間は、原則として地方出入国在留管理局への在留諸申請の際に定まっていなければなりません。

2
派遣先を追加するときは事前に変更の届出

派遣計画書に記載のない派遣先に派遣する場合は、あらかじめ特定技能雇用契約の変更の届出を行います。新たな派遣先が基準に適合しない場合は、派遣を停止するよう助言・指導が行われます。

3
直接雇用から派遣へ切り替えるときは2か月前に契約締結

雇用形態を直接雇用から派遣雇用に変更する場合は、派遣開始のおおむね2か月前にあらかじめ雇用契約を締結したうえで届出が必要です。

4
派遣先からの通知を踏まえて届出を行う

労働者派遣法第42条第3項に基づく派遣先からの通知を踏まえ、活動状況に係る届出(入管法第19条の18第2項第3号)を行います。

農業分野には固有の要件もあります。直接雇用の場合、農業者等に過去5年以内に同一の労働者(技能実習生を含む)を6か月以上継続して雇用した経験、又はこれに準ずる経験が必要です。派遣による場合は、派遣先に同様の雇用経験があるか、派遣先責任者講習等の受講者を派遣先責任者に選任していることが求められます。加えて特定技能所属機関は、在留諸申請の前に農業特定技能協議会へ加入しなければなりません。

請負・業務委託はどこまで許されるか

請負をめぐる質問は、性質の違う2つの論点に分かれます。1つ目は、外国人本人と請負契約や業務委託契約を結んで働いてもらう形です。特定技能は「雇用に関する契約」に基づく活動として定義されているため、この形は在留資格に基づく活動に当たりません。

2つ目は、自社が雇用する特定技能外国人を、取引先との請負契約に基づいて取引先の工場や現場で就労させる形です。これ自体は禁止されておらず、農業分野の運用要領も、特定技能外国人が従事する業務には特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が受託して行うものを含むと明記しています。分かれ目は指揮命令の所在です。

労働者派遣法第2条第1号は労働者派遣を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定義しています。契約書の表題が請負であっても、発注者側が日常的に作業指示を出していれば労働者派遣に該当し、派遣が認められない17分野では制度違反となります。線引きの基準は、昭和61年労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)です。

柱 1
労働力を自ら直接利用していること

業務の遂行方法や評価の指示、始業・終業時刻や休憩・休日・時間外労働の管理、服務規律や労働者の配置の決定・変更を、すべて請負側が自ら行っていること。

柱 2
業務を独立して処理していること

業務処理に要する資金をすべて自らの責任で調達・支弁し、法律上の事業主としての責任をすべて負い、自ら準備した機械・資材や自らの企画・専門的技術に基づいて処理していること。

形式を整えただけでは足りない

同告示第3条は、第2条各号のいずれにも該当する事業主であっても、法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたもので、事業の真の目的が労働者派遣を業として行うことにある場合は、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れないとしています。判断は契約書ではなく実態で行われます。

なお物流倉庫分野は、雇用形態こそ「直接雇用に限る」ですが、特定技能所属機関になれる者の範囲に、倉庫業者との業務委託に基づき当該倉庫業者が占有する営業用の倉庫において倉庫作業を実施する者が含まれます。この場合は、雇用の継続性について業務委託元の倉庫業者と委託先が共同で責任を持つ内容の協議書を取り交わすことが条件です。

建設分野は派遣も有料職業紹介も使えない

建設分野の分野別運用方針は、特定技能外国人の雇用形態を「直接雇用に限る。」と定めています。この結論は、労働法制の側からも二重に裏付けられています。

建設分野では派遣を使えないだけでなく、有料職業紹介による採用ルートも法律上使えません。また建設現場は元請と下請の重層的な請負構造で成り立っており、分野別運用方針もこの実態を前提とした条件を置いています。元請企業が現場管理の責任を負うことから、特定技能所属機関が下請企業である場合、元請企業は、その下請企業が受け入れている特定技能外国人の在留資格及び従事の状況(業務の内容、期間)を確認することとされています。

特定技能所属機関の側にも他分野にはない条件が重なります。建設業法第3条の許可、機関および受け入れる特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録、受入事業実施法人(又はこれを構成する建設業者団体)への所属、報酬予定額や安全・技能の修得計画等を明記した「建設特定技能受入計画」の国土交通省による認定などです。報酬面では、日本人と同等以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行う契約の締結が条件です。

建設分野をご検討の企業へ

建設業務に就く職業は有料職業紹介の対象外のため、当社の人材紹介サービスは建設分野ではご利用いただけません。建設特定技能受入計画の認定申請や在留資格の申請などの手続面については、グループ内の行政書士法人Treeが対応します(出入国在留管理庁への申請取次を含む行政書士業務は行政書士法人Treeが担い、TGP自体が行うものではありません)。

航空・鉄道に認められた在籍型出向

航空分野と鉄道分野の雇用形態は、直接雇用形態としつつ、同時に当該分野の2事業者を特定技能所属機関とする在籍型出向形態を含むと定められています。労働者派遣とは別の枠組みで、他分野に横展開できるものではありません。

分野別運用方針はその必要性を、両分野では従前から相互に密接に関連する企業間で技能を要する業務を委託等するに当たり在籍型出向形態で教育・研修を行っている実態があるためと説明しています。

歯止めも置かれています。国土交通省が出向元・出向先を把握し、出向期間中の所定内賃金等の待遇が出向元におけるものに比べ維持または向上されることと、出向期間中に1号特定技能外国人支援を行う主体等を事前に確認する仕組みです。1号特定技能外国人については、在籍型出向に係る期間は1年につき通算4月を超えない期間とされています。

受入企業のチェックポイント

雇用形態の判断は採用手法の設計に直結します。実務では次の順序で確認すると齟齬が生じにくくなります。

2027年4月1日に施行された育成就労制度についても、同じ分野別運用方針が雇用形態を定めており、農業分野と漁業分野は育成就労外国人についても直接雇用形態に加えて労働者派遣形態が認められています。

よくある質問

特定技能外国人を労働者派遣で受け入れられる分野はどこですか。
分野別運用方針で労働者派遣形態が定められているのは農業分野と漁業分野の2分野です。それ以外の分野は「直接雇用に限る」とされ、派遣形態での受入れは認められません。航空分野と鉄道分野は直接雇用形態のなかに在籍型出向形態が含まれる扱いで、労働者派遣とは別の枠組みです。
労働者派遣事業の許可があれば農業分野の派遣元になれますか。
許可だけでは足りません。特定技能基準省令第2条第1項第9号により、農業又は農業に関連する業務を行っている者、地方公共団体又はそれらの者が資本金の過半数を出資している者、それらの者が業務執行に実質的に関与していると認められる者、国家戦略特別区域法第16条の5第1項に規定する特定機関のいずれかに該当し、かつ法務大臣が農林水産大臣と協議のうえ適当と認めた者に限られます。
自社で雇用した特定技能外国人を、請負契約に基づき取引先の事業所で作業させてもよいですか。
業務の遂行方法や労働時間、配置に関する指示を自社が行い、請け負った業務を自社の業務として独立して処理している限り、請負として整理されます。発注者側が直接指示を出す状態になると労働者派遣法第2条第1号の労働者派遣に該当し、派遣が認められない分野では制度違反です。判断基準は昭和61年労働省告示第37号に定められています。
建設分野で人材紹介会社から特定技能外国人を紹介してもらえますか。
できません。職業安定法第32条の11第1項により、有料職業紹介事業者は建設業務に就く職業を求職者に紹介してはならないとされています。労働者派遣についても労働者派遣法第4条第1項第2号で建設業務が禁止業務とされており、建設分野は直接雇用に限られます。
直接雇用から派遣雇用に切り替える場合、どのような手続が必要ですか。
運用要領では、直接雇用から派遣雇用に変更する場合、派遣開始のおおむね2か月前にあらかじめ雇用契約を締結したうえで届出を行うこととされています。派遣先と派遣期間は原則として在留諸申請の際に定まっている必要があり、派遣計画書に記載のない派遣先へ派遣する場合はあらかじめ特定技能雇用契約の変更の届出が必要です。

まとめ

特定技能の雇用形態は分野別運用方針で分野ごとに決まっており、企業が選べる事項ではありません。19分野のうち15分野は「直接雇用に限る」、農業と漁業のみ労働者派遣形態が認められ、航空と鉄道は在籍型出向を含む直接雇用という3区分です。

派遣を使える農業・漁業でも、派遣元は特定技能基準省令第2条第1項第9号イの類型に該当する事業者に限られます。分野との業務上・資本上のつながりが要件化されており、派遣先にも法令遵守・非自発的離職者・行方不明者・欠格事由の4基準が及びます。

請負については、外国人本人との業務委託契約は特定技能の枠外である一方、自社が雇用する外国人を請負契約に基づいて他社の現場で就労させること自体は否定されません。分かれ目は指揮命令の所在で、昭和61年労働省告示第37号の2つの柱を実態として満たしているかが判断基準になります。

建設分野は労働者派遣法第4条第1項第2号と職業安定法第32条の11第1項により、派遣も有料職業紹介も使えません。採用設計は他分野と分けて考える必要があります。雇用形態の判断は在留資格の許否に直結するため、募集を始める前に分野ごとの区分を確認しておくことが、後戻りのない受入れにつながります。

本記事は現時点(2027年6月)の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)、出入国在留管理庁の特定技能運用要領及び分野別の運用要領別冊、関係法令の公表内容に基づき、特定技能外国人の雇用形態について一般的な情報を整理したものです。制度・基準・運用は改正される場合があり、個別事案への適用は条件により異なります。最新かつ正確な取扱いは出入国在留管理庁の公表資料および専門家にご確認ください。