なぜ中小企業が特定技能外国人に注目するのか
日本の労働市場における人手不足は、特定産業分野を中心に深刻化しています。製造業・農業・外食業・介護業などでは、地域や職種によって求人が集まりにくい状況が続いており、従来の採用手法(新卒・中途の日本人採用)だけでは必要な人員を確保することが難しいケースも増えています。
人手不足の現状と業種別の課題
| 業種 | 主な課題 |
|---|---|
| 製造業(食品加工) | 単調作業の担い手不足、交代勤務への応募減少 |
| 外食業 | 深夜・休日勤務の人員確保困難、調理補助の慢性的不足 |
| 農業・畜産業 | 農村部の若者離れ、季節労働需要への対応 |
| 建設業 | 高齢化・担い手不足、技能継承の困難 |
| 介護業 | 処遇改善の途上、夜勤・身体介護人材の不足 |
※有効求人倍率は業種・地域・時期によって大きく異なります。最新の業種別データは厚生労働省「一般職業紹介状況」をご確認ください。
特定技能制度が中小企業にもたらすメリット
特定技能制度は、2019年の創設当初から「即戦力となる外国人材の受入れ」を目的に設計されています。技能実習制度と異なり、転職が可能で、一定の技能・日本語能力を既に持った人材を採用できるため、中小企業にとっても現実的な人材確保の手段として注目されています。
- 即戦力性:技能試験・日本語試験をクリアした人材のため、基本的な業務遂行能力が担保されている
- 長期就労の可能性:特定技能1号は通算5年。特定技能2号は介護を除くほぼ全分野が対象(2023年6月閣議決定で対象分野拡大)で、在留期間更新の上限なし・家族帯同可能
- 採用コストの見通しやすさ:技能実習の監理団体費用とは異なる費用構造となるため、紹介手数料・登録支援委託費・在留資格手続き費用などを分けて比較しやすい
- 人材の多様性:ベトナム・フィリピン・インドネシア・ミャンマー等の多様な国籍の人材が応募可能
注意:特定技能外国人は、一定の要件を満たせば転職が可能です。ただし、転職先の業務が特定技能の対象分野・業務区分に該当すること、受入れ機関側の基準を満たすこと、必要に応じて在留資格変更許可等の手続きを行うことが前提となります。採用後の定着策(待遇・環境・コミュニケーション)への投資は、離職リスクを抑えるうえで重要です。
製造業・食品加工業での活用事例
製造業・食品加工業は、特定技能外国人の受入れ数が最も多い分野の一つです。2025年6月末時点の出入国在留管理庁統計によれば、飲食料品製造業(約25.3%)と工業製品製造業(約15.3%)を合わせると、特定技能在留外国人全体の約4割を占めています(注:2022年4月、素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業の3分野は『工業製品製造業』に統合されました)。
モデルケース:食品加工業(従業員30名・埼玉県)※以下は一般的な相談事例をもとに構成した架空のモデルケースです
会社概要と採用背景
冷凍食品の加工・包装を手がける食品加工会社。パート・アルバイトのシフトが慢性的に不足し、繁忙期には生産ラインが停止するリスクが生じていた。国内採用の難航が続く中、特定技能を初めて活用することを決定。
採用の経緯
株式会社TreeGlobalPartners(TGP)の人材紹介を通じて、技能実習を良好に修了し特定技能1号へ移行したベトナム人2名を採用。食品衛生や機械操作の基本は技能実習での経験があり、自社での実質的なOJTは機械設備の機種差の習熟のみで済んだ。
採用後の体制と結果
登録支援機関に支援計画の実施を全部委託し、生活面のサポートを外部に任せることで、社内担当者の工数を届出管理と定期面談(就労面)に集中させた。採用から1年後も2名とも在職しており、製造ラインのリーダー候補として評価されている。
製造業での成功ポイント:技能評価と現場OJTの整備
製造業・食品加工業で特定技能外国人を活用する際の成功要因として、以下が挙げられます。
- 技能評価試験合格者の採用:「製造分野特定技能1号評価試験」や技能実習修了者は、基本的な製造知識・安全衛生知識を持っている。採用前に技能レベルを確認する
- 現場OJTマニュアルの整備:機械操作・衛生管理・緊急時対応等を多言語(または図解)で記載したマニュアルを事前に準備する
- 段階的な業務拡大:最初の1〜2か月は基本業務に集中させ、習熟度に応じて業務範囲を広げる「段階的アサイン」が定着を後押しする
外食・飲食サービス業での活用事例
【2026年4月時点の重要な制度変更】外食業分野の特定技能1号は2026年4月13日以降、受入れ上限(5万人)到達のため新規受入れが原則停止されています。海外からの新規呼び寄せ(在留資格認定証明書交付申請)、留学生等からの資格変更(在留資格変更許可申請)は原則不可となりました。一方、すでに外食業分野で就労中の特定技能1号外国人の在留期間更新、および同分野内での転職は通常通り可能です。これから外食業で外国人材を確保する場合は、国内在住の特定技能1号保持者の採用、永住者・定住者など身分系在留資格者の採用、特定技能2号への移行支援などの代替ルートの検討が必要です(出典:出入国在留管理庁・農林水産省「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」2026年3月27日公表)。
そのうえで、外食業(外食分野)は特定技能制度の中で受入れが急速に進んだ業種のひとつであり、ホール・厨房・店舗管理等の多様なポジションで活躍する事例が蓄積されています。外食業では「外食業特定技能1号技能測定試験」の合格と日本語能力(N4以上等)が在留資格の要件となり、飲食物調理・接客・店舗管理の知識が確認されます。
モデルケース:ラーメンチェーン(3店舗・神奈川県)※以下は一般的な相談事例をもとに構成した架空のモデルケースです
会社概要と採用背景
ラーメン専門店3店舗を運営する中小企業。閉店後の清掃・仕込み作業の担い手が不足し、既存スタッフの残業が増加。特定技能外国人のホール・調理補助ポジションへの採用を決定。
採用の経緯と体制
フィリピン人1名・インドネシア人1名の計2名を採用。採用前に「外食業技能測定試験」の合格証を確認し、日本語能力試験(N3相当)の取得者を優先した。接客は日本語でのコミュニケーションが中心のため、入社後に週1回の日本語レッスン費用を会社負担で提供。
接客の工夫と結果
来店客への対応は定型文(注文確認・料金説明)を事前に練習させ、困った際には日本人スタッフへの引き継ぎ方法を明確化。1年後に2名とも接客に自信を持って対応できるようになり、その後の追加採用の旗振り役にもなっている。
外食業での成功ポイント:多言語マニュアルと接客の工夫
外食業でのポイントは、日本語でのコミュニケーションが不可欠な業種特性に対して、最初から完璧を求めずに「段階的な業務習得」の仕組みを整えることです。
- 多言語メニュー・接客カード:注文受けや料金案内の定型フレーズを記載したカードを作成し、外国人スタッフが自信を持って対応できる「型」を提供する
- ロールプレイ研修:採用後の最初の2週間は接客ロールプレイを毎日実施し、実際のシーンを想定した練習を繰り返す
- 日本語学習支援:業務で必要な語彙(食材名・調理用語・接客用語)に絞った学習教材を提供し、業務関連語彙の習得を優先する
- 衛生管理の徹底:食品衛生法に基づく衛生管理は多言語・図解で説明し、手洗い・温度管理・アレルゲン対応を視覚的に理解させる
農業・畜産業での活用事例
農業分野の特定技能外国人は、耕種農業(野菜・果物・花き等)と畜産農業(酪農・養豚・養鶏等)に分けられます。農業は季節性が強く、収穫期に人手が集中するため、通年雇用できる特定技能外国人の活用が特に効果的な分野です。
モデルケース:野菜農家(法人・長野県)※以下は一般的な相談事例をもとに構成した架空のモデルケースです
会社概要と採用背景
高冷地野菜(レタス・キャベツ)の栽培・出荷を手がける農業法人。夏季の収穫・出荷作業に最大10名のアルバイトを雇用していたが、農村部のアルバイト確保が年々困難に。通年雇用の特定技能外国人2名を採用し、中核人材として活用することを決定。
採用プロセスと生活環境
農業技能評価試験(耕種農業)の合格者をベトナムから採用。農村部のため、社宅(空き家を改修した一戸建て)を月3万円で提供。入国直後に車の免許取得支援(送迎と費用補助)を行い、農場への通勤と日常生活の自立を促した。
地域コミュニティとの連携
地元のJA(農業協同組合)や近隣農家との情報共有グループに参加させ、農村コミュニティへの溶け込みをサポート。地域の外国人向け日本語教室(週1回)への参加費用を会社負担とした。採用2年後、2名とも技能向上が認められ、新人スタッフへの技術指導も担うようになった。
農業での成功ポイント:住居確保と地域との関係構築
農業・農村部での特定技能受入れに特有の課題と対応策を以下に整理します。
| 課題 | 対応策 |
|---|---|
| 農村部での住居確保困難 | 空き家・社宅の活用、家賃補助制度の導入 |
| 移動手段の確保 | 自動車免許取得支援(費用補助・送迎)、社用車の貸与 |
| 生活情報・医療機関へのアクセス | 多言語対応の行政窓口・医療機関情報の整理、自治会・JA窓口との連携 |
| 孤立・孤独感 | 地域の日本語教室・交流イベントへの参加支援、同国籍コミュニティ情報の提供 |
| 季節変動への対応 | 農閑期の業務(整備・加工・施設管理等)の設計、通年雇用の明確化 |
特定技能外国人活用の成功に共通する5つのポイント
業種・規模を問わず、特定技能外国人の定着・活躍につながりやすい取り組みを5つに整理しました。これらは「採用してからの取り組み」であることがポイントです。採用の成否は採用前ではなく、採用後の最初の3〜6か月の過ごし方で決まるという認識を持つことが重要です。
① 受入れ前の社内コンセンサス形成
外国人材の受入れでつまずきやすい要因の一つに、「採用担当者は熱心でも、現場の日本人スタッフに十分な説明や協力体制が整っていない」という状況があります。受入れを決定したら、採用前に以下を行ってください。
- 経営陣・管理職・現場リーダーへの説明会の開催(受入れの目的・業務分担・コミュニケーションのルール)
- 直属の上司・チームメンバーへの個別説明(「不安なことがあれば遠慮なく相談して」という雰囲気作り)
- 外国人材と日本人スタッフが一緒に働くことのメリット(多様な視点・職場の活性化)を言語化して共有する
② 入社後3か月の集中サポート体制
最初の3か月は、外国人材が「この職場で働き続けたい」と感じるかどうかが決まる重要な期間です。この期間に以下を実施してください。
- 毎週または隔週の1on1面談(業務の困り事・生活の困り事を双方向で確認)
- 担当メンターの配置(先輩スタッフが気軽に声をかけられる関係性を最初から作る)
- 業務習熟チェックリストの作成(習熟できた項目を可視化し、本人の自信につなげる)
③ キャリアパスの明示
特定技能外国人が「将来この会社でどうなれるのか」を具体的にイメージできるかどうかが、長期定着の大きな要因です。採用時または入社直後に、以下を伝えてください。
- 特定技能1号から特定技能2号(または他の在留資格)へのステップアップの可能性(分野による)
- 役職・給与の昇進基準(日本人スタッフと同等の基準での評価を明示)
- 資格取得・日本語能力向上への支援制度(費用補助・試験休暇等)
④ 文化的配慮の実践
特定技能外国人の出身国・宗教・文化的背景に対する配慮は、職場環境の整備において欠かせません。特定の宗教を持つ方(イスラム教・仏教等)がいる場合、食事・礼拝・祝日等について事前に確認し、可能な範囲で対応することが定着を促進します。
- 食事提供がある職場:ハラール食・ベジタリアン対応の選択肢を用意する
- 礼拝時間:休憩時間内での対応が可能か事前に検討する
- 母国の祝祭日:有給休暇の申請を柔軟に受け入れる運用ルールを作る
⑤ 継続的なコミュニケーション
定着の核心は「コミュニケーションの質と量」です。問題が発生してから対話するのではなく、日常的な声かけ・雑談の積み重ねが問題の早期発見と信頼関係の構築につながります。
- 定期面談(3か月に1回以上:支援計画上の義務)を単なる形式的確認で終わらせない
- 日本人スタッフ・管理者への「外国人材との関わり方」の簡単な研修を年1回実施する
- 社内の多言語コミュニケーションツール(翻訳アプリ・やさしい日本語等)の活用を推奨する
よくある質問
特定技能外国人の採用が最も進んでいる業種はどこですか?
出入国在留管理庁の統計では、製造業(特に食品製造・工業製品製造)、飲食料品製造業、外食業(飲食店)、農業・畜産業が多くなっています。製造業は一定の技能と日本語コミュニケーションが必要であり、技能実習からの移行者が多い傾向があります。宿泊業・建設業・介護業でも増加中です。
特定技能外国人の採用で失敗する企業のパターンは?
①受入れ後の支援体制(住居・生活サポート)が不十分で早期離職、②現場の日本人スタッフに外国人受入れの理解を得られずコミュニケーション不全、③賃金・待遇が周辺相場より低く他社に転職されてしまう——が主なパターンです。採用だけでなく「入社後の定着」への投資が成否を分けます。
特定技能外国人が活躍するために企業が最初にすべきことは?
①入社前に職場全体(特に直属の上司・チームメンバー)への説明・意識共有、②入社後1週間の集中的なオンボーディング(施設・ルール・人間関係の紹介)、③担当メンター(先輩スタッフ)の配置——を最初の3か月で徹底することです。最初の3か月で定着の見通しが立つかどうかが決まると言われています。
中小企業でも特定技能外国人を受け入れられますか?
はい、従業員数の要件はなく、中小企業でも特定技能外国人を受け入れられます。ただし、1名の受入れに対して担当者の工数がかかるため、最初の1〜2名を採用し体制を整えてから増員する方法が無理のないアプローチです。有料職業紹介・登録支援機関を活用することで、中小企業でも効率的に受入れ体制を整えることができます。
まとめ
本記事では、製造業・外食業・農業という代表的な3業種での特定技能外国人の活用事例と、定着・活躍を実現するための5つの成功ポイントを解説しました。
中小企業が特定技能外国人を活用する上で、最初の一歩として取り組むべきことをまとめます。
- 自社の業種が特定技能の対象分野かどうかを確認する(現在16分野:介護・ビルクリーニング・工業製品製造業・建設・造船及び舶用工業・自動車整備・航空・宿泊・自動車運送業・鉄道・農業・漁業・飲食料品製造業・外食業・林業・木材産業)
- 採用ルートを検討する:国内在住の技能実習修了者・試験合格者の採用、または海外からの新規招聘
- 登録支援機関・有料職業紹介会社に相談し、費用・スケジュール・体制の全体像を把握する
- 社内担当者を選任し、受入れ体制の骨格(支援計画・届出管理)を整える
- 初めての受入れは1〜2名からスタートし、体制を確立してから増員する
株式会社TreeGlobalPartners(TGP)は、外国人材の有料職業紹介(許可番号:13-ユ-317879)を行っています。特定技能外国人の採用後に必要となる在留資格申請、支援計画の作成・実施、登録支援機関としての支援業務については、必要に応じてグループ内の行政書士法人Treeと連携して対応します。特定技能外国人の採用を初めてご検討の企業様でも、費用体系や採用ルートをわかりやすくご案内しますので、まずはお気軽にご相談ください。
まずは無料相談で採用計画を相談する
特定技能外国人の採用をご検討の企業様へ。業種・採用人数・採用ルートの選定から支援計画の策定まで、TGPが丸ごとサポートします。初回のご相談は無料です。
※本記事は2026年4月時点の法令・運用に基づく一般的な解説を目的としています。特定技能制度は法改正・告示改正により内容が頻繁に変更されます(例:2026年4月13日からの外食業1号新規受入停止、2027年4月施行予定の育成就労制度等)。最新の法令・省令、分野別の運用方針については出入国在留管理庁の公式情報をご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・労務的アドバイスを構成するものではありません。具体的な手続きについては行政書士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。