外国人労働者の定着率を上げる5つの施策|離職を防ぐ職場づくり

特定技能外国人の3年半累計離職率は16.1%——この数字を高いと見るか低いと見るかは、受け入れ企業の準備次第で大きく変わります。宿泊分野では32.8%に達する一方、自動車整備では8.9%と、業種・企業による差は4倍近くに開きます。

令和6年10月末時点で外国人労働者数は約230万人(厚生労働省)に達し、もはや外国人材なしには事業が成り立たない現場も少なくありません。採用に投じたコストと時間を無駄にしないためにも、「採った後」の定着支援こそが最重要課題です。

本記事では、離職の根本原因を整理したうえで、入社前から始められる5つの定着施策と、2027年4月1日施行予定の育成就労制度がもたらす変化を実務目線で解説します。

外国人労働者の定着率・離職率の現状(データで確認)

外国人の離職率は日本人の約2倍——数字が示す課題

日本人の自己都合離職率は約10.1%(厚生労働省「雇用動向調査」2020年)です。一方、外国人労働者全体の年間離職率が44.5%に達するとする民間集計値も存在しますが、この数字は公的機関による統計ではなく、サンプルの偏りや算出方法が統一されていない点に注意が必要です。

公的データとして信頼性が高いのは、出入国在留管理庁が公表する特定技能外国人の離職率です。制度開始から3年半(2019年4月〜2022年9月)の累計で16.1%という数字は、受入機関・登録支援機関が目安にすべきベンチマークと言えます。

特定技能外国人の離職率は16.1%(分野別の差も大きい)

出入国在留管理庁が公表している特定技能外国人の3年半累計離職率を分野別に整理すると、次のとおりです。

分野3年半累計離職率離職傾向
宿泊32.8%最も高い
農業20.1%高い
飲食料品製造業19.3%高い
全分野平均16.1%平均
介護参考値(分野別非公表)
自動車整備8.9%最も低い

宿泊と自動車整備の間で約4倍の開きがあることは、分野特性だけでなく、企業の受入れ体制の差が数字に反映されていることを示唆しています。離職率が低い分野・企業に共通する要因を後述の施策で整理します。

16.1%
特定技能外国人の3年半累計離職率(出入国在留管理庁公表データ)

日本人の自己都合離職率(約10.1%、厚生労働省)と比較すると高い傾向。ただし分野・企業によって8.9%〜32.8%と大きな差がある。

離職後の行動パターン

特定技能外国人が離職した場合、主に以下のパターンが見られます。

  • 転職(別の受入機関へ): 特定技能1号は、一定の条件下で転職が可能です。給与・待遇が改善される職場への移動が多く、受入機関間の条件競争が発生しています
  • 帰国: 家族事情や母国の環境改善による帰国。特に農業・製造業で見られます
  • 失踪(技能実習生に多い): 技能実習制度では原則転職不可のため、劣悪環境からの脱出として失踪が選ばれてきました。特定技能では転籍制度があるため、失踪リスクは相対的に低下しています

特定技能の転籍可能な仕組みは「失踪よりも制度内転職」への移行を促すため、受入機関にとっては他社との人材獲得競争が本格化することを意味します。定着施策は採用戦略と一体で考える必要があります。

外国人労働者が離職・失踪する5つの根本原因

第1位「低賃金・給与ギャップ」

法務省が技能実習生の失踪動機を調査したデータ(技能実習生対象・特定技能のデータではありません)では、「低賃金」が67.2%を占め、断トツの1位です。技能実習と特定技能では制度の仕組みが異なりますが、「聞いていた給与と実態が違う」という問題は特定技能でも繰り返し報告されています。

残業代の計算誤り、社会保険料の本人負担分が説明されていなかったことによる手取り額の乖離、寮費や食費の天引きで実質的な可処分所得が著しく減少するケースなど、手取り額の透明性が定着に直結します。

採用時の条件と実態のずれ(ミスマッチ)

求人票・雇用契約書に記載した業務内容と、実際に従事させている仕事が異なるケースも早期離職の大きな要因です。「食品製造で採用したが、実際は清掃・雑用が中心だった」「農業の求人票に書いていなかった農繁期の長時間労働があった」といったミスマッチは、入社後数ヶ月で離職につながります。

ミスマッチは採用段階の情報提供の問題であり、入社前の丁寧な説明と契約内容の一致が予防策になります。

コミュニケーション不全と孤立感

日本語が十分でない外国人社員が、職場で指示を正確に理解できない、困っても誰に相談すればいいかわからない——こうした孤立感が積み重なると、職場への帰属意識が育たず離職へ向かいます。特に入社後3ヶ月以内は「定着か離職かの分岐点」です。多言語対応のマニュアルや、気軽に相談できるメンターの存在が差を生みます。

キャリアの見通し不足

「この会社で働き続けると、自分はどうなれるのか」が見えない状態は、向上心のある外国人材が離職を選ぶ大きな動機になります。特定技能1号の在留上限(通算5年)が近づいても2号移行の見通しが立たない場合、別の会社・分野への転籍を選択します。

生活面のサポート不足

住居の確保、銀行口座の開設、役所手続き、医療機関の受診——来日直後は生活基盤の構築に膨大なエネルギーを消耗します。この段階で企業・登録支援機関のサポートが薄いと、日常生活のストレスが蓄積し、早期離職の遠因になります。

外国人材の定着支援について相談したい

株式会社TreeGlobalPartnersは中間手数料なしの有料職業紹介で優良な人材をご紹介します。グループ内の行政書士法人Treeが登録支援機関として入社後の定着支援も一体でサポート。採用前から定着まで、ワンストップでお任せください。

TreeGlobalPartnersに相談してみる

定着率を上げる5つの施策——入社前から始める取り組み

定着支援は入社後から始めるのでは遅い場合があります。内定から来日まで、場合によっては入国前から働きかけを始めることで、早期離職を大幅に抑制できます。

施策1:住居・生活立ち上げ支援(来日前から動く)

外国人社員が来日後最初に直面するのが住居問題です。外国人であることを理由に賃貸契約を断られるケースは依然多く、企業が社宅・寮を用意するか、不動産会社との連携で住居を確保しておくことが理想です。

来日前に居住先・SIMカード・銀行口座の手続き方法を多言語で案内し、来日当日に案内できる体制を整えておくと、初期の不安を大幅に軽減できます。特定技能の義務的支援には「住居確保への支援」が含まれており、登録支援機関と連携して体制を整えることができます。

施策2:職場での日本語教育——特定技能の義務的支援を活かす

日本語学習機会の提供は、特定技能1号の義務的支援10項目の一つです。多くの企業が「義務だから」と形式的に実施していますが、業務に直結した実践的な日本語教育に変えるだけで定着率は変わります。

具体的には、業界専門用語を盛り込んだテキストの整備、週1〜2回の短時間レッスン(業務中に設定)、多言語対応の作業マニュアルの整備などが有効です。日本語力が上がるほど職場コミュニケーションの質が改善し、帰属意識の向上につながります。

施策3:明確なキャリアパスの提示(特定技能1号→2号の道筋)

入社時に「特定技能1号として何年働いたら、どの条件で2号に移行できるか」「賃金はどう変わるか」を書面で提示します。特定技能2号が整備されている分野であれば、2号移行後の在留期限上限なし・家族帯同可能という大きなメリットを説明することで、長期就労のインセンティブを明確化できます。

2号移行に必要なスキル・評価基準(技能検定1級相当等)を具体的に示すことで、外国人社員が自律的に目標を設定できる環境をつくります。キャリアパスの見える化は、特定技能制度の活用において最も費用対効果の高い施策の一つです。

施策4:評価制度・給与体系の見直し(同一労働同一賃金)

外国人社員だからといって日本人より低い賃金を設定することは、労働関連法令への抵触リスクがあるだけでなく、長期的な不満・離職の温床になります。同一労働同一賃金の原則のもと、経験・スキルに応じた透明な評価・昇給制度を整備することが不可欠です。

評価基準(どんな成果・行動が評価されるか)を日本語と母国語で明示し、半年〜1年に1回の評価面談で結果をフィードバックする仕組みをつくりましょう。「頑張れば報われる」という実感が定着率を高めます。

施策5:定期面談とメンター制度の整備

月1回以上の1on1面談を設定し、業務上の悩み・生活面の問題・キャリアの希望を定期的に把握します。面談は通訳ツール(DeepLなど)を活用した母国語対応が理想的です。また、日本語に不安のある外国人社員に同国籍または多言語対応のメンター(先輩社員・担当者)をつけることで、日常的な相談窓口を確保します。

面談で把握した課題を放置せず、改善アクションにつなげるPDCAサイクルが重要です。「相談しても何も変わらない」という経験が積み重なると、外国人社員は離職を水面下で準備し始めます。

定着率が高い企業に共通する3つの特徴

定着率が高い企業(特定技能での離職率が業界平均を大きく下回る企業)には、制度・規模を超えた共通点があります。

特徴1: 経営層・管理職が外国人採用にコミットしている

「担当者任せ」ではなく、経営層や現場管理職が外国人材の定着を自社課題として捉えています。受入体制の整備に予算を投じ、定着指標(離職率・在籍期間等)を定期的にレビューする習慣があります。

特徴2: 日本人社員との平等な扱いが徹底されている

外国人だから、という理由で業務内容や待遇に差をつけない文化があります。日本人・外国人が同じ評価基準で評価され、成果に応じた昇給・昇格の機会が等しく与えられています。外国人社員が「自分は大切にされている」と感じる職場環境が、長期定着の基盤です。

特徴3: 登録支援機関との連携が機能している

義務的支援を「こなす」のではなく、登録支援機関と連携して支援の質を継続的に改善しています。支援内容のフィードバックを受入機関と共有し、外国人社員の困りごとを早期発見・解決する仕組みが整っています。

登録支援機関を活用した定着支援の仕組みづくり

10項目の義務的支援が定着率に与える影響

特定技能1号を受け入れる企業(受入機関)は、以下10項目の義務的支援を実施しなければなりません。自社で対応困難な場合は、登録支援機関に全部委託することが認められています。

支援項目定着への影響
①事前ガイダンス(入国前)入社後ミスマッチの予防
②出入国に係る支援来日直後の不安軽減
③住居確保の支援生活基盤の安定(定着率に直結)
④生活オリエンテーション日本の生活ルール・手続き理解
⑤公的手続等への同行支援行政手続きの障壁除去
⑥日本語学習機会の提供職場コミュニケーション改善(長期定着)
⑦相談・苦情への対応問題の早期発見・解決
⑧日本人との交流促進職場への帰属意識の醸成
⑨転職支援(非自発的離職時)—(離職後の支援)
⑩定期的な面談・当局報告問題の早期把握・行政への報告

③住居確保、⑥日本語学習、⑦相談対応、⑩定期面談の4項目は、定着率に特に強い影響を持つ支援です。これらを実質的に機能させることが、制度上の義務を超えた定着支援の本質です。

登録支援機関選びで失敗しない3つのチェックポイント

登録支援機関への月額支援委託費の相場は平均約2〜3万円程度/人です。費用の安さだけで選ぶと、面談が月1回の形式的なビデオ通話だけで実質的なサポートがない、多言語対応ができない、といった問題が起きます。以下の3点を確認してください。

  1. 支援担当者の多言語対応力: 外国人社員の母国語または通用言語(英語・ベトナム語・インドネシア語等)で相談対応できるか
  2. 支援実績と分野の専門性: 自社の受入分野(農業・製造・介護等)での支援実績が豊富かどうか
  3. 受入機関との情報共有体制: 面談で把握した課題を受入機関にフィードバックする仕組みがあるか

グループ内の行政書士法人Treeは登録支援機関として、月額9,800円(税抜)/人〜(行政書士法人Treeのサービス価格)で支援業務を提供しています。TreeGlobalPartnersによる人材紹介と組み合わせることで、採用から定着まで一貫したサポートが可能です。

2027年「育成就労制度」施行後の定着支援はどう変わるか

転籍の解禁が失踪を減らす——制度改正の本質

2027年4月1日に育成就労制度が施行される予定です(2026年施行ではありません)。育成就労は技能実習制度を発展的に解消し、「人材育成を通じた即戦力外国人材の確保」を正面から認める新しい在留資格です。

現行の技能実習制度では原則として転籍が認められておらず、劣悪な環境からの唯一の出口として「失踪」が選ばれてきました。育成就労では一定条件下での転籍が合法化されるため、失踪リスクが大幅に低下し、労働市場内での健全な移動へと移行することが期待されています。

受入機関にとっては、転籍解禁により「人材を繋ぎ止める」ための待遇・環境改善のインセンティブが高まります。定着施策への投資は、育成就労制度施行後はより一層重要になると言えます。

日本語教育のロードマップ義務化(入国時A1→就労後A2)

育成就労制度では、日本語教育のロードマップが義務化される方向で議論されています。入国時にJLPT N5相当(A1レベル)の日本語力を有し、就労中にA2レベル(JFT-Basic合格相当)を目指すという段階的な目標設定が導入される見込みです。

これにより、入国時点での最低限の日本語力が担保されるため、職場でのコミュニケーション問題が現行制度より改善されることが期待されます。受入機関・登録支援機関は、A1→A2へのステップアップを支援する日本語教育プログラムの整備が求められます。

育成就労の対象は技能実習に相当する在留資格であり、特定技能に移行するための育成期間(原則3年)が設定されます。特定技能での定着施策と育成就労での育成支援を連続したキャリア設計として組み合わせることが、今後の外国人材活用の標準モデルになると考えられます。

よくある質問

Q. 外国人労働者の離職率は日本人と比べてどのくらい高いですか?

A. 特定技能外国人の3年半累計離職率は16.1%(出入国在留管理庁データ)です。日本人の自己都合離職率(約10.1%・厚生労働省「雇用動向調査」2020年)と比較すると高い傾向にありますが、分野・企業の受入れ体制によって大きな差があります。宿泊分野では32.8%に達する一方、自動車整備では8.9%と約4倍の開きがあります。

Q. 特定技能外国人が離職する一番の理由は何ですか?

A. 主な原因は、採用時の条件と実態のギャップ(給与・業務内容)、コミュニケーション不全による孤立感、キャリアの見通し不足です。なお、法務省調査で技能実習生の失踪動機「低賃金」が67.2%を占めるというデータがありますが、これは技能実習生を対象とした調査であり、特定技能のデータではありません。特定技能では転籍が一定条件下で可能なため、失踪リスクは技能実習と比較すると低くなっています。

Q. 外国人社員を定着させるために最も効果的な施策は何ですか?

A. 入社前から始める住居・生活立ち上げ支援と、明確なキャリアパス(特定技能1号→2号への移行計画)の提示が特に効果的とされています。また、日本語学習の機会提供(特定技能では義務的支援)と月1回以上の定期面談を組み合わせると、早期離職を大幅に抑制できます。

Q. 育成就労制度(2027年施行)は定着率にどう影響しますか?

A. 転籍の合法化により、劣悪な環境からの「失踪」が減少し、制度内での転職へ移行することが期待されています。また日本語教育の義務化(入国時A1相当→就労後A2相当)によりコミュニケーション力が向上し、長期定着を後押しすることが期待されています。施行は2027年4月1日です(2026年施行ではありません)。

外国人材の採用から定着まで、ワンストップでサポート

株式会社TreeGlobalPartnersは中間手数料なしの有料職業紹介(許可番号 13-ユ-317879)で優良な特定技能外国人材をご紹介します。グループ内の行政書士法人Treeが登録支援機関として定着支援も担うため、採用後の離職リスクを最小化できます。まずはお気軽にご相談ください。

TreeGlobalPartnersに相談してみる
グループ企業のご紹介

行政書士法人Tree

入管業務専門|登録支援機関

TreeGlobalPartnersのグループ企業である行政書士法人Treeは、特定技能外国人の在留資格申請の代行登録支援機関としての定着支援業務を提供しています。月額9,800円(税抜)/人〜の登録支援委託から就労ビザの申請代行まで、グループ一体で外国人材の受入れをサポートします。

就労ビザ・登録支援の詳細を見る →

※ 本記事の内容は2026年3月時点の入管法令・統計データに基づきます。制度・統計は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁および厚生労働省でご確認ください。
※ 本記事中の外国人労働者全体の年間離職率(44.5%)は民間集計値であり、公的機関による公式統計ではありません。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。