求人を出しているのに外国人からの応募が来ない、あるいは応募は来るが面接に来ない。この状態が続いているとき、原因を媒体や単価に求める前に見直す価値があるのが求人原稿そのものです。
日本人向けに長年使ってきたテンプレートを、対象だけ差し替えて流用しているケースは珍しくありません。しかしそのテンプレートには、外国人が応募するかどうかを判断するために必要な情報――毎月手元に残る金額、寮の自己負担額、残業の実際の時間、通勤方法、求められる日本語の中身、入社後の相談窓口――がほとんど書かれていないことが多いのです。
しかも求人原稿は広告文である前に、職業安定法5条の3が定める労働条件明示そのものです。2024年4月1日には明示事項が3つ追加され、書くべき項目そのものが変わりました。法令上の要求を満たしたうえで、読み手が判断できる原稿にする。この記事は、その両立を1本の原稿の中でどう実現するかを扱います。
求人原稿は広告ではなく「労働条件の明示」である
職業安定法5条の3第1項は、労働者の募集を行う者に対し、募集に応じて労働者になろうとする者へ「従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めています。求人サイトへの掲載も自社サイトの募集要項もこの第1項の明示にあたり、ハローワークや職業紹介事業者への求人申込みは同条第2項の明示義務の対象になります。
何を明示するかは職業安定法施行規則4条の2第3項(法5条の3第4項の委任規定)が11の事項を列挙しています。このうち派遣労働者として雇用しようとする旨は該当する場合に限られます。2024年4月1日施行の改正で、このうち「従事すべき業務の内容」には業務の変更の範囲が、「就業の場所」には就業の場所の変更の範囲が含まれることになり、有期労働契約については更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)が新たに加わりました。厚生労働省の資料では、変更の範囲を「雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、締結する労働契約の期間中における変更の範囲」と説明しています。
| 明示が必要な項目 | 記載例 | 外国人向け原稿で補うべき点 |
|---|---|---|
| 従事すべき業務の内容(変更の範囲を含む) | (雇入れ直後)惣菜の製造/(変更の範囲)当社の食品製造業務全般 | 在留資格で認められる活動の範囲に収まるか。「その他付随する業務」は中身を書く |
| 労働契約の期間 | 期間の定めあり(2026年10月1日から2027年9月30日まで) | 在留期間の満了日との関係は別に説明する |
| 試みの使用期間 | 試用期間あり(3か月) | 試用期間中と後で条件が違うなら両方を書く(施行規則4条の2第6項) |
| 有期労働契約を更新する場合の基準 | 有(契約期間満了時の業務量、勤務成績により判断)/通算契約期間の上限4年 | 「更新の可能性あり」だけでは基準を示したことにならない |
| 就業の場所(変更の範囲を含む) | (雇入れ直後)川崎工場/(変更の範囲)本社および全国の工場 | 寮からの距離と通勤方法をあわせて書く |
| 始業・終業の時刻、所定外労働の有無、休憩、休日 | 午前9時から午後6時まで/休憩60分/時間外労働あり(月平均20時間) | シフト制なら早番・遅番の実際の時刻を書く |
| 賃金の額 | 月給25万円(試用期間中は月給20万円) | 固定残業代がある場合は基本給・手当・時間数・超過分を分けて書く |
| 労働・社会保険の適用 | 雇用保険、労災保険、厚生年金保険、健康保険 | 保険料が給与から控除されるのは雇用保険・厚生年金保険・健康保険。労災保険料は全額を会社が負担し給与から引かれないことも書き添える |
| 募集者の氏名または名称 | 〇〇株式会社 | 会社名の読み方をローマ字ではなくカタカナで補う |
| 就業場所における受動喫煙を防止するための措置 | 屋内禁煙 | 喫煙室の有無まで書くと質問が減る |
明示の方法は書面の交付が原則で、相手が希望した場合にはファクシミリや電子メール等でも足ります(施行規則4条の2第4項)。求人広告の文字数が足りない場合には、厚生労働省の資料が「詳細は面談時にお伝えします」などと付したうえで一部を別のタイミングで明示する取扱いを認めていますが、その場合でも原則として求職者と最初に接触する時点までにすべての労働条件を明示する必要があります。
あわせて職業安定法5条の4は、求人情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じ、正確かつ最新の内容に保つことを求めています。募集を終えた条件が残っている、募集開始時の給与額が更新されていない、といった放置も対象になり得ます。原稿の更新日を管理する仕組みまで含めて、明示の一部と考えるのが安全です。
「額面」ではなく「手元に残る額」で比較されている
外国人の求職者が複数の求人を並べて比べるとき、基準になるのは月給の額面ではありません。社会保険料と税を引かれ、寮費と水道光熱費を引かれ、母国へ送金した後にいくら残るか。この計算ができない原稿は、比較の土俵にすら上がりません。
法令が明示を求めているのは「賃金の額に関する事項」までですが、外国人向けの原稿では控除の存在と内訳を任意で書き添えるだけで、問い合わせの質が変わります。「月給23万円/ここから雇用保険・厚生年金保険・健康保険・所得税・住民税と、寮費が引かれます」と書き、控除後のおおよその金額帯を示す。労災保険料は全額を会社が負担するため給与からは引かれませんので、控除項目に含めないよう注意してください。金額を断定しにくい場合でも、何が引かれるのかを列挙しておけば、面接で説明する時間を前倒しできます。なお、所得控除や年末調整の具体的な取扱いは税理士の業務領域ですので、個別の税額計算は税理士にご確認ください。
固定残業代は3点セットで書き分ける
時間外労働の有無にかかわらず一定の手当を支給する制度を採用している場合、厚生労働省は記載例として、(1)基本給(手当を除く額)、(2)手当の名称と「何時間分の時間外手当として何円を支給するか」、(3)その時間数を超える時間外労働分の割増賃金は追加で支給する旨、の3点を分けて示しています。「月給28万円(みなし残業代含む)」の一行では、額面は高く見えても、日本の給与制度に不慣れな読み手にはむしろ不信の材料になります。
昇給・賞与を「実績による」で終わらせない
昇給と賞与は、在留期間の更新を重ねて長く働く前提の人ほど強く見ています。「昇給あり(年1回)」で止めず、評価の時期と評価する要素を一つでも具体的に書く。賞与がないなら「賞与はありません」と書き切る。曖昧なまま入社した結果の期待外れは、早期離職に直結します。
特定技能1号で受け入れる場合、報酬額は日本人が同等の業務に従事する場合の額と同等額以上であることが求められます。同じ業務を担当する日本人がいない事業所では、賃金規程や近隣同業の水準から説明できる状態にしておく必要があります。求人原稿の段階で「当社の賃金規程に基づき、日本人と同一の基準で決定します」と明記しておくと、後の説明が一貫します。
寮は「完備」ではなく金額と広さで書く
住居は、賃金と並んで応募判断を左右します。それにもかかわらず「寮完備」「社宅あり」の4文字で終わっている原稿が非常に多く、これでは何も判断できません。少なくとも次の5点は数字で書きます。
- 寮の有無と形態(会社の借上げか、社宅か。個室か相部屋か)
- 毎月の自己負担額(家賃、共益費、水道光熱費をそれぞれ分けて書く)
- 入居時の初期費用(敷金・礼金の負担者、寝具や家電の用意の有無)
- 居室の広さ(何平方メートル、何人で使うのか)
- 職場までの距離と通勤の方法・所要時間
特定技能1号で受け入れる場合、住居に関する基準は出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」に定めがあります。居室の広さは1人当たり7.5平方メートル以上を満たすことが求められ、ルームシェアなど複数人が居住する場合は居室全体の面積を居住人数で除した面積が7.5平方メートル以上でなければなりません(技能実習2号等から特定技能1号へ変更する場合等で、受入れ機関がすでに確保している社宅等への居住を本人が希望する場合は例外となりますが、その場合でも寝室について1人当たり4.5平方メートル以上を満たす必要があります)。
徴収できる金額には上限がある
受入れ機関が自ら賃借人となって社宅等を貸与する場合、同要領は「社宅等を貸与することにより経済的利益を得てはならない」としています。徴収できる額は、借上物件であれば借上げに要する費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金等は含まない)を入居する特定技能外国人の人数で除した額以内。自己所有物件であれば、実際に建設・改築等に要した費用、物件の耐用年数、入居人数等を勘案して算出した合理的な額とされています。家賃債務保証業者を利用した場合の保証料は受入れ機関等の負担です。
つまり寮費は、求人原稿に書く数字と実際の運用が食い違いにくい項目でもあります。「家賃20,000円/共益費なし/水道光熱費は実費(月5,000円から8,000円程度)/2人で1部屋(居室18平方メートル)/工場まで自転車で10分」。ここまで書いてある原稿は、同じ賃金の他社より確実に選ばれやすくなります。
同要領は、住居について同等の業務を行う日本人と同等の処遇を確保する必要があるとも述べています。日本人従業員に社宅を提供しているなら同等に提供し、広さも同等を確保する。この点を原稿で明言できる会社は、それ自体が訴求になります。
残業・休日・通勤は「実態の数字」でしか伝わらない
時間外労働の欄が「あり」の一語で終わっている原稿は、読み手にとっては情報がゼロです。厚生労働省の記載例も「時間外労働 あり(月平均20時間)」と月平均時間数を示しています。繁忙期に幅がある業種なら「通常月は月10時間程度、7月から9月は月30時間程度」と幅ごと書きます。少ないことを売りにする必要はなく、実態と一致していることのほうが定着に効きます。
休日も同様で、「週休2日制」は曜日が固定かどうかで生活の設計がまったく変わります。年間休日日数、週の休み方、シフトの組み方、希望休の出し方までを短い文で並べる。シフト制なら、早番と遅番の実際の始業・終業時刻を書きます。夜勤が発生する可能性があるなら、それは前述の「就業の場所・業務の変更の範囲」とも連動しますので、変更の範囲の記載と矛盾しないよう突き合わせてください。
通勤手段は在留資格より先に確認される
最寄り駅からの距離、バスの本数、自転車通勤の可否と駐輪場の有無、送迎の有無。地方の事業所ほどここが応募の可否を決めます。書くべきは「交通機関」ではなく「駅から徒歩何分」「寮から自転車で何分」という移動そのものです。
自動車の運転を前提とする求人では、外国の運転免許から日本の運転免許への切替(外免切替)の制度変更に注意が必要です。2025年10月1日施行の改正道路交通法施行規則により、外国免許による運転免許試験の一部免除(外免切替)を受ける際は住民票の写しの提出が原則として必要になり、住民登録のない短期滞在中の申請は想定されない運用になりました。あわせて知識確認が10問から50問に、合格基準が正答率90%以上に厳格化され、技能確認の採点基準も強化されています。運転業務を含む求人では、「日本の運転免許をお持ちの方」なのか「外免切替が可能な方」なのかを応募要件として書き分けておくと、入社後の齟齬を避けられます。
通勤手当も、上限額と支給条件(公共交通機関のみか、自転車・自動車も対象か)を金額で書きます。「規定により支給」は、日本の求人慣行を知らない読み手にとっては未定と同じ意味に読まれます。
日本語レベルは「級」ではなく「場面」で書く
応募が集まらない原稿でしばしば見かけるのが、業務上の必要性を超えた日本語要件です。「日本語能力試験N2以上」と書けば安心感はありますが、母集団を大幅に削ります。
特定技能1号では、日本語能力の水準として国際交流基金日本語基礎テスト(A2相当)または日本語能力試験のN4以上への合格が原則として求められ、技能実習2号を良好に修了した方は免除されます。つまり制度が想定しているのは、日常的な場面の日本語がある程度理解できる水準です。この前提を無視した要件は、制度の入口と噛み合いません。ただし分野によって上乗せがあります。自動車運送業分野のタクシー区分・バス区分は日本語能力試験N3以上、介護分野は日本語試験に加えて介護日本語評価試験の合格が必要です。自社の分野の運用方針を確認したうえで要件を設定してください。
要件は業務の場面に分解する
「N3以上」と書く代わりに、実際に必要な行為を並べます。朝礼で当日の作業指示を聞いて理解できること。作業手順書(ふりがな付き)を読んで手順どおりに動けること。異常があったときに口頭で報告できること。電話応対は行わないこと。この形式なら、試験の級を持たない人でも自分が該当するかを判断でき、社内でも面接時の確認項目としてそのまま使えます。
読む力と話す力は分けて書くのが実務的です。製造や食品加工の現場では読む力の比重が高く、接客では聞く力と話す力の比重が高くなります。両方をまとめて「日本語ができる方」と書くと、必要以上に高い要求として受け取られます。
入社後の学習支援も要件の一部
入社時点の日本語水準を下げるかわりに、入社後の学習機会を用意する設計であれば、それも原稿に書きます。特定技能1号では日本語学習の機会の提供が義務的支援の一つに位置づけられており、教材の情報提供や日本語教室の入学案内などが想定されています。「就業時間内に週1回の日本語学習の時間を設けています」「日本語教室の受講料を会社が負担します」といった記述は、長く働く前提の応募者に強く届きます。
なお、日本語能力の要件は、あくまで業務遂行に必要な範囲で設定するものです。国籍や出身地による選別の代替として使えば、次章で扱う公正な採用選考の考え方に反することになります。
支援体制を書くと応募の質が変わる
来日して働く人が最も強く気にするのは、困ったときに誰に相談できるかです。賃金と住居の次に、支援体制が比較対象になります。
特定技能1号を受け入れる場合、受入れ機関は1号特定技能外国人支援計画を作成し、これに基づく支援を行う義務があります。出入国在留管理庁が示す義務的支援は次の10項目です。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
運用要領は、事前ガイダンスについて情報提供する事項を十分に理解するためには3時間程度行うことが必要と考えられるとし、生活オリエンテーションについては少なくとも8時間以上行うことが必要と考えられるとしています。いずれも本人が十分に理解できる言語で実施することが前提です。支援の全部を登録支援機関に委託した場合には、受入れ機関が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされます。委託する場合の月額支援委託費は平均約2万円から3万円程度が目安です。
求人原稿に書くべきは、支援計画の全文ではありません。「相談窓口があること」「対応言語」「対応できる曜日と時間」「支援担当者が社内にいるのか委託先なのか」の4点で十分に伝わります。生活面でどこまで手伝ってもらえるのか(銀行口座の開設、携帯電話の契約、住民登録の同行)を具体的に列挙すると、初来日の応募者からの反応が変わります。
自社で書ける範囲と、書いてはいけない範囲
株式会社TreeGlobalPartnersが行うのは外国人の有料職業紹介です(有料職業紹介事業許可番号 13-ユ-317879)。在留資格の申請取次や1号特定技能外国人支援の受託は、グループ内の行政書士法人Tree(登録支援機関)が対応します。求人原稿でも、紹介する側の役割と、在留資格や支援を担う側の役割は分けて書いてください。なお、社会保険や労働保険の手続そのものは社会保険労務士の業務領域ですので、実務の詳細は社会保険労務士にご確認ください。
あわせて注意が必要なのが業務の種類です。職業安定法32条の11第1項により、有料職業紹介事業者は建設業務に就く職業および港湾運送業務に就く職業を求職者に紹介することができません。土木・建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業、またはこれらの準備の作業に係る業務が対象です。これらの業務については、有料職業紹介による人材のご紹介はできませんので、募集の設計段階で切り分けてください。
やさしい日本語と機械翻訳を前提に文章を設計する
原稿の中身が整っても、日本語のまま伝わらなければ意味がありません。出入国在留管理庁と文化庁は2020年8月に「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を公表し、書き言葉に焦点をあてた作り方を3つのステップで示しています。
- ステップ1:文書を日本語ネイティブにわかりやすい文章にする(情報を整理する/文をわかりやすくする/外来語に気を付ける)
- ステップ2:言葉をやさしく書き換え、漢字にふりがなをつけるなどして、日本語能力がまだ高くない人にもわかりやすくする(言葉に気を付ける/表記に気を付ける)
- ステップ3:作った文案を日本語教師や外国人に確認してもらい、伝わるかどうかを確かめる
ガイドラインが挙げる個別のルールは、そのまま求人原稿の校正基準として使えます。一文は短くし、一文に言いたいことは1つだけにする。3つ以上のことを言うときは箇条書きにする。二重否定を使わない。受身形や使役表現をできる限り使わない。尊敬語と謙譲語は使わず、敬語は丁寧語だけにして文末を「です」「ます」で統一する。曖昧な表現や略語、外来語、ローマ字は避ける。元号ではなく西暦を使い、時刻は午前・午後を明記する。範囲を示す「〜」は誤解を生むため使わず、「○○から△△まで」と書く。
| よくある表記 | 書き換え例 | 理由 |
|---|---|---|
| 9:00〜18:00 | 午前9時から午後6時まで | 「〜」は誤解を生むため使わない |
| 令和8年10月1日 | 2026年10月1日 | 元号は使わず西暦を使う |
| 社保完備 | 雇用保険、労災保険、厚生年金保険、健康保険に入ります | 略語は使わない |
| 残業がないわけではありません | 残業があります。1か月に平均20時間です | 二重否定は使わない |
| 経験者優遇 | 工場で1年以上働いた人は、時給を50円高くします | 抽象的な言葉を具体的な条件に置き換える |
| 応相談 | 面接のときに話し合って決めます | 曖昧な表現を避ける |
| ご応募いただけますようお願い申し上げます | 応募してください | 敬語は丁寧語だけにする |
| アットホームな職場です | (削除する、または具体的な事実に置き換える) | 翻訳しても意味が伝わらない |
機械翻訳にかけられる前提で組み立てる
求人原稿の多くは、ブラウザの翻訳機能や翻訳アプリを通して読まれます。ガイドライン自身も「機械翻訳にかける可能性に配慮して、インターネットで発信する際には、ふりがなをつけない文書をできる限り同時に用意する」と述べています。漢字の直後に括弧書きでふりがなを入れた文は、翻訳エンジンにかけると読みが本文として訳出され、文意が崩れます。掲載時には、ふりがな付きの版と、ふりがなを外した版を分けて用意してください。
翻訳に強い原稿には共通点があります。主語を省略しない。一文を40字程度までに抑え、係り受けを短くする。数字と単位は半角で統一する。条件や金額を画像の中に入れない(画像内の文字は翻訳されません)。社内用語や制度用語を残す必要がある場合は、ガイドラインが示す「重要な言葉はそのまま使い、後ろに説明を加える」書き方を使い、「有給休暇<=会社を休んでも給料がもらえる日>」のように補います。
最後にステップ3を省かないことです。書き上げた原稿を、社内で働いている外国人従業員に読んでもらい、わからない語に印をつけてもらう。この一手間が、掲載後の問い合わせ件数を最も大きく動かします。
国籍を要件にせず、適法に絞り込む
外国人を採用したいという意図から、つい「外国人採用」「〇〇国籍の方歓迎」と書きたくなりますが、ここは慎重に扱う必要があります。
厚生労働省は公正な採用選考の基本として、応募者が求人職種の職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうかという基準で選考を行うべきこと、本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項、宗教や支持政党など本来自由であるべき事項を採用基準にしないことを求めています。そのうえで、日本国籍でないこと、外国人であることのみを理由に応募を拒否することは公正な採用選考の観点から適切ではないとしています。この考え方は裏返しても同じで、職務遂行能力と関係のない国籍で応募者を区切ることは、募集の段階から適切とはいえません。
採用後の労働条件についても、労働基準法3条が国籍を理由とする賃金その他の労働条件の差別的取扱いを禁じています。日本人と外国人で異なる賃金テーブルを持ち、それを前提に求人を出すという設計は成り立ちません。
では何で絞るのか
実務上必要な絞り込みは、次の3つでほぼ足ります。第一に、就労が認められる在留資格。「特定技能1号(飲食料品製造業)の在留資格で就労できる方」「就労に制限のない在留資格をお持ちの方」といった書き方であれば、業務の適法性に直結する要件として説明がつきます。第二に、業務遂行に必要な技能・資格・実務経験。第三に、前章で扱った業務の場面ごとの日本語要件です。
在留資格の確認そのものは適法であり、むしろ義務です。労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律28条は、事業主が外国人を雇い入れた場合と離職した場合に、氏名、在留資格、在留期間その他の事項を確認して厚生労働大臣に届け出ることを義務づけています。求人原稿には「採用時に在留カードを確認します」と一行入れておくと、確認の場面で不信を招きません。
年齢と、書いてはいけない表現
年齢についても、同法9条が募集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています。年齢制限を設けられるのは厚生労働省令が定める例外に該当する場合に限られますので、「20代の方」「若い方歓迎」といった記載は原則として使えません。
最後に、原稿から外すべき表現を挙げておきます。「日本人限定」「日本語ネイティブのみ」「〇〇国籍の方は応募できません」。求職者の写真の提出を必須にする運用や、応募フォームに本籍地・家族構成を入力させる設計も見直しの対象です。求人原稿は社外に公開される文書であり、そこに書かれた要件は、そのまま自社の採用方針として読まれます。
よくある質問
Q. 求人票に「日本語能力試験N2以上」と書くのは違法ですか。
A. 日本語能力を応募要件にすること自体が直ちに違法になるわけではありません。ただし、業務遂行上の必要性を超えた水準を設定すれば、応募母集団を大きく削ることになります。特定技能1号では国際交流基金日本語基礎テスト(A2相当)または日本語能力試験N4以上が原則の水準ですので、この制度で受け入れる前提の求人にN2以上を課すと、制度の入口と噛み合いません。ただし分野によって上乗せの要件があり、自動車運送業分野のタクシー区分・バス区分は日本語能力試験N3以上、介護分野は日本語試験に加えて介護日本語評価試験の合格が必要です。自社の分野の運用方針を確認したうえで要件を設定してください。そのうえで、試験の級ではなく「朝礼の作業指示が聞き取れること」「ふりがな付きの手順書が読めること」のように、業務の場面に分解して書くことをおすすめします。なお、日本語要件を国籍による選別の代替として使うことは、公正な採用選考の考え方に反します。
Q. 「就業場所・業務の変更の範囲」はどこまで書けばよいですか。
A. 雇入れ直後の内容と、契約期間中に変更があり得る範囲の両方を書きます。厚生労働省の資料では「(雇入れ直後)大阪支社/(変更の範囲)本社および全国の支社、営業所」のような記載例が示されています。有期契約の更新基準についても、「諸般の事情を総合的に考慮したうえで判断する」といった抽象的な書き方ではなく、「勤務成績、態度により判断する」「会社の経営状況により判断する」のように具体的に記載することが望ましいとされています。一方、他部署への一時的な応援や出張、研修などによる一時的な変更は、明示が必要な変更の範囲には含まれません。在籍出向を命じることがあり、出向先での就業場所や業務が出向元の変更の範囲を超える場合には、その旨を明示してください。
Q. 寮費は毎月いくらまで徴収できますか。
A. 特定技能1号で受入れ機関が自ら賃借人となって社宅等を貸与する場合、出入国在留管理庁の運用要領は、貸与により経済的利益を得てはならないとしています。徴収できるのは、借上物件であれば借上げに要する費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金等は含まない)を入居する特定技能外国人の人数で除した額以内、自己所有物件であれば実際に建設・改築等に要した費用、物件の耐用年数、入居人数等を勘案して算出した合理的な額です。求人原稿には、この範囲内で決めた毎月の自己負担額を、家賃・共益費・水道光熱費に分けて数字で記載してください。
Q. 求人広告のスペースに全部の労働条件が書ききれません。どうすればよいですか。
A. 厚生労働省の資料は、求人広告のスペースが足りない等のやむを得ない場合には「詳細は面談時にお伝えします」などと付したうえで、労働条件の一部を別のタイミングで明示することも可能としています。ただしこの場合でも、原則として求職者と最初に接触する時点までにすべての労働条件を明示する必要があります。省略してよいのは掲載面での表示であって、明示義務そのものが免除されるわけではありません。自社サイトに詳細版の募集要項ページを用意し、広告からそこへ誘導する形にしておくと、面談前の明示を確実に行えます。
Q. 面接の過程で当初の条件が変わった場合はどうすればよいですか。
A. 当初明示した労働条件を変更する場合には、その変更内容を明示する必要があり、この明示は速やかに行うこととされています。職業安定法5条の3第3項および職業安定法施行規則4条の2第1項・第2項では、変更のほか、当初明示した範囲内で内容を特定する場合、明示した事項を削除する場合、新たに追加する場合も明示の対象とされています。例えば「就業場所:東京本社または大阪支社」と明示していたものを「東京本社」に確定させる場合も、特定した内容を明示することになります。外国人が相手の場合は、変更前と変更後を対照できる書面を用意し、本人が理解できる言語ややさしい日本語で説明したうえで、確認の記録を残しておくと安全です。
まとめ
求人原稿は広告文である前に、職業安定法5条の3が求める労働条件明示そのものです。自社サイトや求人サイトへの掲載は同条第1項、ハローワークや職業紹介事業者への求人申込みは同条第2項が根拠になります。明示事項は同法施行規則4条の2第3項に11の事項として列挙されており、2024年4月1日施行の改正で、業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間・更新回数の上限を含む)が加わりました。まずはこの項目を漏れなく埋めることが出発点になります。
外国人が判断に使うのは額面の月給ではなく、控除後に手元に残る金額です。給与から引かれるのは雇用保険・厚生年金保険・健康保険と税であり、労災保険料は全額を会社が負担します。固定残業代は基本給・手当の時間数と金額・超過分の扱いの3点に分け、寮は毎月の自己負担額と居室の広さを数字で書く。特定技能1号であれば、居室は1人当たり7.5平方メートル以上(技能実習からの移行等で例外に当たる場合でも寝室について1人当たり4.5平方メートル以上が必要)、徴収額は借上げ費用を入居人数で除した額以内という基準が運用要領に定められています。
残業と通勤は実態の数字でしか伝わりません。時間外労働は月平均時間数と繁忙期の幅で示し、シフト制なら実際の始業・終業時刻を書く。自動車の運転を含む求人では、2025年10月1日施行の改正道路交通法施行規則による外免切替の厳格化(住民票の写しの提出、知識確認50問・正答率90%以上)を踏まえ、免許取得済みか切替可能かを応募要件として書き分けておくと入社後の齟齬を防げます。
日本語要件は試験の級ではなく業務の場面で書き、支援体制は相談窓口の対応言語と時間まで具体化する。ただし自動車運送業分野のタクシー区分・バス区分はN3以上、介護分野は介護日本語評価試験の合格が必要といった分野別の上乗せがあるため、自社の分野の要件を先に確認します。そのうえで原稿全体を、やさしい日本語ガイドラインの3つのステップ(整理する、やさしく書き換える、確認してもらう)で見直します。掲載時にはふりがな付きの版とふりがなを外した版を分け、機械翻訳で読まれることを前提に一文を短く保ちます。
絞り込みは国籍ではなく、就労が認められる在留資格、業務に必要な技能・経験、業務の場面ごとの日本語要件の3つで行います。国籍のみを理由とした応募拒否は公正な採用選考の観点から適切ではなく、労働基準法3条は国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いを禁じています。年齢についても、募集・採用では年齢にかかわりない均等な機会の確保が原則です。
※ 本記事は2026年8月時点の法令および公表資料にもとづく一般的な情報提供であり、個別の求人内容や採用方針についての判断を保証するものではありません。労働条件の明示、賃金・労働時間の設定、寮費の徴収方法などは、事業所の実情や適用される在留資格・分野により取扱いが異なります。税務に関する事項は税理士、社会保険・労働保険の手続に関する事項は社会保険労務士へご確認ください。株式会社TreeGlobalPartnersが行うのは外国人の有料職業紹介(有料職業紹介事業許可番号 13-ユ-317879)であり、在留資格の申請取次および1号特定技能外国人支援は、グループ内の行政書士法人Tree(登録支援機関)が対応します。なお、職業安定法32条の11第1項により、建設業務および港湾運送業務に就く職業については有料職業紹介を行うことができません。最新の情報は、厚生労働省・出入国在留管理庁・警察庁の公表資料をご確認ください。