外国人採用で最も混乱しやすいのが、届出先が複数機関にまたがる点です。ハローワーク・出入国在留管理庁・日本年金機構・労働基準監督署——それぞれ提出期限も様式も異なり、「どこに何をいつまでに出すのか」を正確に把握できていない企業は少なくありません。
本記事では、外国人を雇い入れた際に必要な届出を機関別に整理し、提出期限・様式・罰則の有無まで一覧でまとめます。2025年4月施行の特定技能定期届出の年1回化も含め、最新の制度状況をもとに解説します。
届出手続きの確認だけでなく、外国人採用計画の全体設計から相談したい方は、株式会社TreeGlobalPartnersへ費用シミュレーションをご依頼ください。
届出義務の法的根拠とリスク
届出義務化の背景(雇用対策法の改正経緯)
外国人労働者の雇用状況届出は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)第28条に根拠を置いています。旧称「雇用対策法」から2018年に改称されたこの法律により、すべての事業主は外国人の雇入れ・離職の際にハローワークへの届出が義務付けられています(2007年10月施行)。
届出制度の目的は、外国人労働者の雇用実態を国が把握し、適切な雇用管理の推進と労働市場の透明化を図ることです。厚生労働省は届出データをもとに「外国人雇用状況の届出状況まとめ」を毎年公表しており、外国人雇用政策の基礎データとして活用されています。
無届・虚偽届出のリスク(30万円以下の罰金)
届出を怠った場合、または虚偽の届出を行った場合は、労働施策総合推進法の規定により30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、特定技能外国人に関する入管法上の届出義務違反については別途罰則が設けられており、受入機関の許可取消しや外国人本人の在留資格への影響が生じる可能性もあります。
届出漏れは意図的なものでなくても制裁の対象となりえます。雇入れ・離職のたびに届出チェックを運用フローに組み込むことが重要です。
ハローワークへの届出|外国人雇用状況届出(必須・義務)
外国人を雇用するすべての事業主は、雇入れ時と離職時の両方でハローワークへの届出が必要です。この届出は国籍・在留資格を問わず対象となりますが、一部対象外の在留資格があります。
対象となる外国人と対象外(特別永住者・外交・公用)
以下の在留資格を持つ外国人は届出の対象外です。
- 特別永住者(在日韓国・朝鮮人等)
- 外交の在留資格を持つ者
- 公用の在留資格を持つ者
上記以外のすべての外国人労働者が届出の対象です。永住者・定住者・日本人の配偶者等の身分系在留資格も対象に含まれます。
雇用保険被保険者か否かで異なる提出期限と様式
届出の方法と期限は、雇用する外国人が雇用保険の被保険者になるかどうかによって異なります。
| 区分 | 提出タイミング・期限 | 様式・方法 |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者の外国人 (週20時間以上・31日以上の雇用見込み等) |
翌月10日まで (雇入れ月の翌月10日) |
雇用保険被保険者資格取得届に外国人情報欄を記入して届出(兼用) |
| 雇用保険非被保険者の外国人 (週20時間未満・短期雇用等) |
翌月末日まで | 様式第3号(外国人雇用状況届出書)を別途提出 |
離職時も同様に、雇用保険被保険者の場合は被保険者資格喪失届の外国人情報欄への記載、非被保険者の場合は様式第3号で届け出ます。雇入れ・離職の双方で届出が必要な点に注意してください。
オンライン届出(e-Gov/外国人雇用状況届出システム)の使い分け
ハローワークへの届出はオンラインでも可能です。主な方法は以下の2つです。
- e-Gov電子申請: 雇用保険の電子申請(雇用保険被保険者資格取得届等)と一体で処理する方法。e-Govアカウントと電子証明書が必要。
- 外国人雇用状況届出システム: 雇用保険被保険者でない外国人について、様式第3号相当の届出をオンラインで完結できるシステム。厚生労働省が提供。
届出様式や手続きの最新情報は、厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」で確認してください。
入管への届出|努力義務と法的義務の区別を正確に把握する
外国人を受け入れる企業(受入機関)の入管への届出は、在留資格の種類によって「努力義務」と「法的義務」に分かれます。この区別を混同すると、義務を果たさないまま放置するリスクがあります。
一般就労系(技人国・高度専門職等):受入機関の届出は努力義務(入管法第19条の17)
技術・人文知識・国際業務(技人国)、高度専門職、企業内転勤などの就労系在留資格を持つ外国人を受け入れる機関は、入管法第19条の17に基づき、以下の事由が生じた場合に14日以内に地方出入国在留管理局へ届け出るよう努める義務が課されています。
- 外国人の雇入れ・離職
- 受入機関の名称・所在地の変更
- 受入機関の事業の廃止・休止
「努力義務」であるため直接的な罰則はありませんが、届出を怠ることで在留資格更新・変更の審査に影響する可能性があります。外国人本人にも「所属機関に関する届出」(入管法第19条の16)の届出義務があり、企業側の届出と混同しないよう注意が必要です(後述)。
特定技能:受入機関の届出は法的義務(入管法第19条の18)、定期届出は年1回(2025年4月改正)
特定技能外国人の受入機関は、入管法第19条の18に基づき届出が法的義務です。届出の種類は以下の3つに分かれます。
| 届出の種類 | 提出タイミング | 主な内容 |
|---|---|---|
| 随時届出(雇入れ・離職時) | 事由発生から14日以内 | 特定技能外国人の氏名・国籍・在留カード番号、雇用契約の内容等 |
| 随時届出(支援計画変更等) | 事由発生から14日以内 | 支援計画の変更、登録支援機関との委託契約の変更等 |
| 定期届出 | 年1回(2025年4月改正後) | 受入状況、活動状況、支援実施状況等 |
2025年4月1日施行の制度改正により、定期届出の提出頻度が四半期(年4回)から年1回に変更されました。初回の提出対象期間は2025年4月〜2026年3月で、提出期間は2026年4月1日から5月31日です。改正前に四半期ごとの届出に慣れていた担当者は、変更後の運用を確認してください。
外国人本人側の「所属機関に関する届出」との混同注意
入管法第19条の16に基づき、就労系在留資格(特定技能含む)を持つ外国人本人も、転職・所属機関の変更等の事由が生じた場合に14日以内に地方出入国在留管理局へ届け出る義務があります。これは受入機関(企業)の届出とは別個の手続きです。
企業が採用時に外国人本人への説明と届出のサポートをすることで、在留管理上のトラブルを未然に防ぐことができます。
外国人採用の費用シミュレーションを依頼する
届出手続きの複雑さに加え、採用コスト全体の把握も重要です。株式会社TreeGlobalPartnersは中間手数料なしの有料職業紹介で、コストを抑えた外国人採用をサポートします。グループ内の行政書士法人Treeによるビザ申請・登録支援もワンストップで対応可能です。
外国人採用の費用シミュレーションを依頼する社会保険・労働保険の加入手続き一覧
外国人労働者も、国籍を問わず日本の社会保険・労働保険の適用対象です(一部例外あり)。雇入れ時の加入手続きを期限内に完了させる必要があります。
健康保険・厚生年金(日本年金機構)
法人に勤務する外国人(週の所定労働時間・月の所定労働日数が一定以上)は、健康保険・厚生年金保険の強制加入対象です。手続きは雇入れから5日以内に日本年金機構(管轄の年金事務所)へ被保険者資格取得届を提出します。
外国人が帰国する際には、国民年金・厚生年金の保険料納付済み期間に応じた脱退一時金を請求できます(最短6ヶ月の加入期間が必要)。採用時に外国人本人へ説明しておくと、退職時のトラブルが減ります。
なお、日本と社会保障協定を締結している国(ドイツ・韓国・アメリカ等)の出身者については、協定の内容に応じて二重加入の免除措置が適用される場合があります。詳細は日本年金機構「社会保障協定」を参照してください。
雇用保険(ハローワーク)加入条件と外国人固有の記入欄
週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある外国人は、雇用保険の加入対象です。手続きは被保険者資格取得届をハローワークに提出します(雇用保険の取得届に外国人情報欄があるため、ハローワークへの外国人雇用状況届出と兼用)。
外国人固有の記入欄として、在留資格・在留期間・国籍・氏名(ローマ字)・在留カード番号の記載が求められます。在留カードの記載内容と一致させる必要があるため、採用時に在留カードのコピーを取得しておくことが実務上の基本です。
労災保険(1人雇用から強制加入)
労災保険は、1人でも労働者を使用する事業所に強制適用されます(農林水産の一部を除く)。外国人も在留資格・雇用形態を問わず適用対象で、不法就労者も労災保険の保護を受けます。
雇入れ時の個別の加入手続きは不要ですが、事業所単位で労働保険の保険関係成立届を労働基準監督署へ提出し、労働保険料の申告・納付を行う必要があります。外国人を初めて雇い入れる際、事業所として既に労働保険に加入しているかを確認してください。
| 保険種別 | 提出先 | 期限 | 主な書類 |
|---|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 日本年金機構(年金事務所) | 雇入れから5日以内 | 被保険者資格取得届 |
| 雇用保険 | ハローワーク | 翌月10日まで(被保険者の場合) | 被保険者資格取得届(外国人情報欄あり) |
| 労災保険 | 労働基準監督署 | 事業所単位で加入(個別届出不要) | 保険関係成立届(初回のみ) |
その他の手続き|住民登録・税務署・業種別追加義務
社会保険・入管・ハローワーク以外にも、外国人雇用に関連する手続きが複数存在します。
住民登録(市区町村): 中長期在留者(3ヶ月超の在留期間を持つ外国人)は、在留カードを受け取ったうえで、住居地の市区町村窓口に住民登録を行う義務があります。これは外国人本人が行う手続きですが、入社後14日以内が期限であり、企業がオンボーディングの一環として確認・サポートすることが実務上有効です。
税務署への給与支払い手続き: 外国人を雇用した際、給与から所得税の源泉徴収を行い、税務署に納付する義務は日本人と同様です。ただし、年末調整の取り扱いや租税条約の適用(一部の国では免税措置がある)については、外国人固有の注意点があります。初めて外国人を採用する場合は税理士への確認を推奨します。
業種別の追加義務(特定技能・技能実習): 特定技能外国人を特定の分野で受け入れる場合、所管省庁への報告や認定が別途必要なケースがあります。例として、建設分野では国土交通大臣による「建設特定技能受入計画」の認定取得が必須です。建設業界で特定技能外国人の受入れを検討している場合は、業界団体(一般財団法人国際建設技術協会等)の窓口も確認してください。
届出チェックリストと2025〜2027年の制度変更まとめ
雇入れ時・離職時別チェックリスト(表形式)
| タイミング | 届出先 | 手続き内容 | 期限 | 義務/努力義務 |
|---|---|---|---|---|
| 雇入れ時 | ハローワーク | 外国人雇用状況届出(雇入れ) | 翌月10日(被保険者)/ 翌月末日(非被保険者) | 義務(罰則あり) |
| 入管(一般就労系) | 受入機関の届出 | 14日以内 | 努力義務 | |
| 入管(特定技能) | 随時届出(雇入れ) | 14日以内 | 義務(罰則あり) | |
| 日本年金機構 | 健康保険・厚生年金 被保険者資格取得届 | 5日以内 | 義務 | |
| ハローワーク | 雇用保険 被保険者資格取得届 | 翌月10日まで | 義務(被保険者の場合) | |
| 離職時 | ハローワーク | 外国人雇用状況届出(離職) | 翌月10日(被保険者)/ 翌月末日(非被保険者) | 義務(罰則あり) |
| 入管(特定技能) | 随時届出(離職) | 14日以内 | 義務(罰則あり) | |
| 日本年金機構 | 健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届 | 5日以内 | 義務 | |
| 定期 | 入管(特定技能) | 定期届出(受入状況・支援実施状況等) | 年1回(2025年4月〜) | 義務(罰則あり) |
特定技能定期届出の年1回化(2025年4月〜)
2025年4月1日施行の出入国管理及び難民認定法施行規則等の改正により、特定技能受入機関の定期届出の提出頻度が四半期(年4回)から年1回に変更されました。これは受入機関の事務負担軽減を目的とした改正です。
変更後のスケジュールは以下のとおりです。
- 初回提出対象期間: 2025年4月1日〜2026年3月31日
- 初回提出期間: 2026年4月1日〜2026年5月31日
- 次回以降: 毎年4〜5月が提出期間(対象期間は前年4月〜当年3月)
2025年3月以前の四半期届出分については従前の規則が適用されます。届出システムは出入国在留管理庁の在留申請オンラインシステムから提出可能です。
育成就労制度移行(2027年4月〜)で何が変わるか
2027年4月1日施行予定の育成就労制度により、技能実習制度は発展的に廃止され、新たな在留資格「育成就労」が創設される予定です。育成就労は特定技能への移行を前提とした制度設計であり、受入機関の義務(届出・支援等)の枠組みも特定技能に近いものとなります。
制度移行後は届出義務の体系も変わる可能性があります。技能実習生を受け入れている企業は、2027年4月に向けて制度移行計画を立てておくことが重要です(施行は2026年ではなく2027年4月1日である点に注意)。
よくある質問
Q. ハローワークへの外国人雇用届出はいつまでに出す必要がありますか?
A. 雇用保険の被保険者になる外国人は翌月10日まで、被保険者にならない外国人は翌月末日までです(様式第3号を別途提出)。離職時も同じ期限で届出が必要です。
Q. 外国人雇用の届出を怠ると罰則はありますか?
A. 労働施策総合推進法第28条に基づくハローワーク届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。また虚偽の届出も同様の対象です。
Q. 入管への届出は義務ですか、努力義務ですか?
A. 在留資格によって異なります。一般就労系(技術・人文知識・国際業務等)の受入機関の届出は努力義務(入管法第19条の17)です。ただし特定技能の受入機関は法的義務(入管法第19条の18)であり、違反すると罰則があります。
Q. 特定技能の定期届出が年1回に変わったと聞きましたが、いつからですか?
A. 2025年4月1日施行の制度改正により、それまで四半期ごと(年4回)だった定期届出が年1回に変更されました。初回の提出対象期間は2025年4月〜2026年3月で、提出期間は2026年4月〜5月末です。
外国人採用の費用シミュレーションを依頼する
株式会社TreeGlobalPartnersは中間手数料なしの有料職業紹介(許可番号 13-ユ-317879)で外国人材をご紹介します。グループ内の行政書士法人Treeがビザ申請・登録支援機関としての定着支援もワンストップで対応。届出手続きの対応フローも含め、採用計画の全体像をご相談ください。
外国人採用の費用シミュレーションを依頼する※ 本記事の内容は2026年3月時点の入管法令に基づきます。制度・手数料は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。