外国人を雇用する際の労働法ガイド|給与・社会保険・有給休暇の実務ポイント

結論から言えば、外国人労働者にも労働基準法・最低賃金法・社会保険法は日本人と同等に適用されます。「外国人だから給与を低く設定できる」「社会保険は加入しなくていい」という誤解はいずれも法令違反であり、発覚すれば罰則だけでなく、在留資格の更新にも影響が生じます。

本記事では、外国人採用時に人事・労務担当者が押さえておくべき労働基準法・最低賃金・有給休暇・社会保険4種の加入義務、そして社会保障協定や脱退一時金といった外国人固有の制度まで、実務に即して整理します。

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外国人労働者にも労働基準法は全面適用される|国籍による差別は禁止

労働基準法第3条が定める「国籍による差別の禁止」とは

労働基準法第3条は次のように定めています。

「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」

この条文は、外国籍であることを理由とした給与の引き下げ・労働時間の延長・休暇の不付与をすべて禁じています。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法第119条)が科されます。

加えて、厚生労働省は「外国人を雇用しているすべての事業主」に対して、外国人雇用状況の届出を義務付けており(雇用対策法第28条)、未届けや虚偽届出は30万円以下の罰金の対象となります。詳細は厚生労働省「外国人雇用状況の届出」をご確認ください。

適用される主な労働関係法令の一覧

外国人労働者に適用される主な法令と、その内容および外国人固有の注意点を以下に整理します。

法律名主な内容外国人固有の注意点
労働基準法労働条件の最低基準(賃金・労働時間・休暇等)第3条で国籍差別を明示禁止
最低賃金法地域別・産業別最低賃金の遵守義務国籍・在留資格に関係なく適用
労働安全衛生法職場の安全・健康管理安全衛生教育は外国語での実施が望ましい
労災保険法業務上・通勤上の傷病への補償不法就労者にも適用される
雇用保険法失業給付・育児休業給付等一部在留資格(留学・ワーキングホリデー等)は適用除外
労働契約法労働契約の成立・変更・解除ルール日本語以外での契約書作成が推奨される
健康保険法・厚生年金保険法医療給付・老齢年金の加入義務社会保障協定により適用免除のケースあり

在留資格の確認:採用前に必ず行う2つのチェック

採用前に必ず確認すべき事項は2つです。第一に在留カードの有効期限、第二に就労が許可された在留資格かどうかです。在留カードは表面に在留資格と在留期間が記載されています。裏面の「資格外活動許可」欄も見落とさないようにしてください。

在留カードの確認は採用時だけでなく、更新のたびに繰り返す必要があります。在留期限切れのまま就労させることは不法就労助長罪に問われる可能性があります。

給与設定のルール|最低賃金・残業代・賞与は日本人と同基準

地域別最低賃金は国籍に関係なく適用される(違反: 50万円以下の罰金)

最低賃金法により、都道府県ごとに定められた地域別最低賃金は外国人労働者にも同様に適用されます。違反した場合、最低賃金法第40条により50万円以下の罰金が科されます。

特に注意が必要なのは、求人票や雇用契約書に記載した給与が最低賃金を下回っていないかの確認です。月給制の場合、時給換算して最低賃金を上回っているかを計算してください(月給 ÷ 月平均所定労働時間)。最新の各都道府県の最低賃金額は厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」でご確認ください。

時間外・休日・深夜の割増賃金率(36協定と外国人)

労働基準法第37条により、割増賃金率は以下のとおりです。外国人労働者への適用も同じです。

区分割増賃金率備考
時間外労働(法定超)25%以上月60時間超は50%以上
休日労働(法定休日)35%以上法定休日に就労させた場合
深夜労働(22時〜翌5時)25%以上時間外と重複する場合は合算

法定時間外労働・休日労働をさせるためには、36協定(時間外・休日労働に関する協定)の締結と労働基準監督署への届出が必要です。これは外国人を含む全従業員に共通する手続きです。36協定を締結せずに時間外労働をさせれば、外国人・日本人を問わず違法状態となります。

よくあるトラブル:「外国人だから安い給与でいい」は違法

「日本語が不自由だから低い給与でいい」「母国と比べれば十分な金額だ」という考えに基づく給与設定は、労基法第3条違反です。同じ職務・同等のスキルを持つ日本人従業員と比較して合理的な理由なく給与差を設けることは認められません。

特定技能外国人については、同等の業務に従事する日本人と同等以上の報酬額であることが在留資格の許可要件として入管法令上も明示されています(入管法第2条の5第2項)。賃金水準が低いと判断されると、在留資格の認定・更新・変更許可が下りない場合があります。

有給休暇・育児休業・育休取得|外国人社員への付与義務

6カ月継続勤務で10日の年次有給休暇が発生する

労働基準法第39条に基づく年次有給休暇は、雇入れから6カ月継続勤務かつ全労働日の8割以上出勤した場合に10日が付与されます。この権利は在留資格・国籍・雇用形態(正社員・パート・アルバイト)を問わず発生します。

勤続年数に応じた付与日数の増加(2年6カ月経過後11日、以後1年ごとに1日増加、最大20日)も、外国人従業員に対して同様に適用されます。

年5日の時季指定義務も外国人に同等適用

2019年の労基法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員に対して、使用者は年5日の有給休暇を時季指定して取得させる義務が生じました(労基法第39条7項)。外国人従業員も対象です。

取得時期の把握と管理簿の整備は、日本人・外国人を問わず人事部門の必須業務です。年5日の義務を履行しなかった場合、従業員1人につき30万円以下の罰金(労基法第120条)が科されます。

育児・介護休業法の適用

育児休業・介護休業も、在留資格を問わず外国人労働者に適用されます。育児休業の取得要件は「雇用保険の被保険者であること(一定の場合)」ですが、有期契約の外国人労働者についても、雇用継続見込みがある場合は育児休業の申し出ができます。

なお、留学・ワーキングホリデー等で雇用保険の適用外となっている外国人は育児休業給付の対象外ですが、育児休業の取得権利自体は法律上認められています。育休取得を理由とした不利益な取り扱い(契約打切り・降格等)は禁止されています(育介法第10条)。

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社会保険の加入義務と外国人特有の制度

健康保険・厚生年金・労災・雇用保険の加入基準まとめ(表)

外国人労働者の社会保険加入基準は、基本的に日本人と同じです。日本年金機構「外国人を雇用したとき」でも詳細が案内されています。

保険の種類加入義務の概要適用除外・備考
健康保険 常時雇用の場合、強制加入(在留資格・国籍不問) 一定の短時間労働者(週20時間未満等)は市区町村の国民健康保険に加入
厚生年金保険 常時雇用の場合、強制加入(在留資格・国籍不問) 社会保障協定の対象国出身者は一定条件で免除の場合あり(後述)
労災保険 雇用形態・在留資格を問わず全員に適用。1名以上雇用で強制適用 不法就労者にも給付は行われる(事業主への追及あり)
雇用保険 週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば原則強制加入 留学(昼間学生)・ワーキングホリデーは適用除外。外交・公用は除外

在留資格別:雇用保険の適用除外となるケース

雇用保険は在留資格によって適用が異なります。以下の在留資格は適用除外または加入が難しいケースがあります。

  • 留学(昼間学生):学生の本分が学業であるため、適用除外(夜間学生・通信教育生は加入対象)
  • ワーキングホリデー:観光・就労が目的の混在した在留資格。雇用保険の適用除外
  • 外交・公用:国家公務に準ずるため、雇用保険の適用除外
  • 特定活動(一部):就労活動内容によって異なるため、個別の確認が必要

一方、特定技能・技術・人文知識・国際業務・技能・高度専門職など就労系の在留資格を持つ方は、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば雇用保険の加入が必要です。

社会保障協定と厚生年金の適用免除(23カ国との協定)

日本は現在23カ国と社会保障協定を締結しています(2026年3月時点)。締結国からの駐在員・短期派遣者の場合、相手国の年金制度にすでに加入中であれば、概ね5年以内の短期就労に限り、日本の厚生年金保険への加入が免除されるケースがあります。

この免除を受けるには、相手国の公的年金機関が発行する「適用証明書」を取得し、日本年金機構に提出する手続きが必要です。協定の有無・内容は二国間で異なるため、対象国の出身者を雇用する際は事前の確認が不可欠です。締結国一覧は日本年金機構「社会保障協定の概要」をご参照ください。

帰国時の脱退一時金|外国人社員への事前説明が重要

日本の厚生年金保険に6カ月以上加入した外国人が帰国した場合、出国後2年以内に「脱退一時金」を請求することで、支払った保険料の一部が払い戻されます。

ただし、社会保障協定締結国の出身者については、年金期間の通算が可能な場合は脱退一時金と年金通算のどちらかを選択することになります。いずれを選ぶかによって長期的な受取額が大きく変わるため、退職・帰国前に外国人社員へ丁寧な説明を行うことが、企業の信頼維持にもつながります。

脱退一時金の手続き詳細は日本年金機構「脱退一時金」でご確認ください。

在留資格と就労可能な業務の範囲|資格外活動の禁止

在留資格の4種類:就労制限あり・なしを整理する

就労の観点から在留資格を整理すると、以下の4つに分類されます。

分類代表的な在留資格就労への制限
就労が認められる在留資格 技術・人文知識・国際業務、特定技能、高度専門職、技能、介護 等 在留資格に定める活動範囲内でのみ就労可能
身分に基づく在留資格
(就労制限なし)
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 原則として業種・職種・時間の制限なし
就労不可だが資格外活動許可で可能 留学、家族滞在 資格外活動許可(週28時間以内等)を取得した場合に限り就労可能
就労不可 短期滞在、観光目的の特定活動 等 いかなる就労も禁止

資格外活動を許可した場合の雇用主リスク(罰則)

在留資格で認められていない活動(資格外活動)をさせた場合、不法就労助長罪として、雇用主は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(入管法第73条の2)に問われます。「知らなかった」という言い訳は、在留カード確認の義務を尽くしていない場合には通用しません。

また、雇用した外国人が就労制限違反(資格外活動)を行った場合でも、雇用主が在留カードの確認を適切に行っていたことを証明できなければ、不法就労助長の責任を免れない可能性があります。採用時の在留カードコピー保管と、更新時の定期確認が実務上のリスク回避につながります。

育成就労制度(2027年施行)が労働管理に与える変化

技能実習から育成就労へ:「実習」から「労働」への転換

2027年4月1日、育成就労制度が施行される予定です。技能実習制度を廃止し、外国人が日本で技能・知識を習得しながら就労するための新たな在留資格「育成就労」を創設するものです。

育成就労の最大の特徴は、制度の目的が「実習(実習先企業への奉仕)」から「労働(労働者としての権利保護)」に転換する点です。受入れ企業は、育成就労者を一般の労働者と同等に扱い、労働基準法・最低賃金法をはじめとする労働関係法令を遵守することが一層厳格に求められます。

転籍が一定条件下で可能になる実務上の影響

育成就労では、現行の技能実習制度では原則禁止されていた転籍(他の企業への移籍)が、一定条件のもとで認められるようになります。具体的には、同一分野内での転籍が、就労開始から1〜2年の期間経過後に可能になる見通しです(制度詳細は法案審議の中で確定)。

これは雇用主にとって、労働条件・職場環境の改善が人材定着の直接的な手段となることを意味します。転籍を防ごうとして劣悪な条件で働かせることは、育成就労制度の趣旨に反するだけでなく、労働関係法令違反にもなりかねません。育成就労制度の施行に向けて、今から労働条件の整備と外国人社員の定着支援の強化を進めておくことが重要です。

よくある違反事例とリスク管理

最低賃金違反・残業代未払いの実例と罰則

外国人雇用における労働法違反で労働基準監督署が把握しているケースの多くは、最低賃金違反と残業代未払いです。特に多いパターンは以下のとおりです。

  • 「研修期間中だから」として最低賃金を下回る給与を設定する(違法)
  • 宿舎費・食費を控除して実質的な手取りが最低賃金を下回る(労基法24条違反の可能性)
  • 36協定未締結のまま時間外労働をさせ、割増賃金を支払わない
  • 月給制にして残業代が「込み」だと説明するが、固定残業代の計算根拠を示さない

最低賃金違反の罰則は50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)、残業代未払いは30万円以下の罰金(労基法第120条)です。悪質な場合は是正勧告・公表の対象にもなります。

雇用保険・社会保険未加入が招く在留資格への影響

社会保険未加入状態が発覚した場合のリスクは罰則にとどまりません。入管当局は、在留資格の更新・変更の審査において、社会保険・雇用保険への適正な加入状況を確認します。未加入が判明した場合、在留資格の更新が不許可になるケースがあります。

社会保険未加入が発覚した場合の経済的リスクとしては、最大2年分の未納保険料の遡及徴収(追徴金)があります。従業員数が多いほど追徴額も膨らみ、経営上の深刻なダメージにつながります。外国人採用を機に、全従業員の社会保険加入状況を点検することをお勧めします。

よくある質問

Q. 外国人労働者にも労働基準法は適用されますか?

A. はい、在留資格や国籍に関係なく、日本で就労するすべての外国人労働者に労働基準法が適用されます(労基法第3条:国籍による差別的取扱の禁止)。最低賃金・残業代・有給休暇も日本人と全く同じ基準が適用されます。

Q. 外国人に有給休暇を与える義務はありますか?

A. はい。雇入れから6カ月継続勤務かつ全労働日の8割以上出勤した場合、在留資格に関係なく10日の年次有給休暇が発生します。また年10日以上付与される従業員には年5日の時季指定義務も課されます。

Q. 外国人の社会保険加入は義務ですか?

A. 常時雇用の外国人は、在留資格を問わず健康保険・厚生年金への加入が義務付けられています。労災保険は雇用形態・在留資格を問わず全員に適用されます。雇用保険は週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば原則強制加入ですが、留学(昼間学生)等の一部在留資格は適用除外です。

Q. 外国人が帰国する際の厚生年金はどうなりますか?

A. 日本を出国した後2年以内に「脱退一時金」を請求することで、支払った年金保険料の一部を払い戻すことができます。ただし、日本と社会保障協定を締結している国(現在23カ国)の出身者は、年金期間の通算が可能な場合は脱退一時金との選択になります。帰国前に退職する際は、本人への事前説明を心がけてください。

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※ 本記事の内容は2026年3月時点の労働関係法令・入管法令に基づきます。制度・罰則・社会保険料率は変更される場合があります。最新情報は厚生労働省「外国人雇用」および日本年金機構「外国人を雇用したとき」でご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。