特定技能に「企業単位の人数枠」は原則としてない
技能実習制度では、実習実施者の常勤職員数に応じた受入れ人数枠が細かく定められており、社員数が少ない企業ほど受け入れられる人数が絞られる設計になっていました。特定技能制度はこの点で発想が異なります。出入国在留管理庁の「特定技能制度に関するQ&A」は、企業が受け入れられる人数の上限を問う設問に対し、受入れ機関ごとの受入れ数の上限はないと明示しています。
もっとも、これは全分野に例外がないという意味ではありません。分野を所管する省庁は、分野別運用方針において「特定産業分野に特有の事情に鑑みて講じる措置」として上乗せの条件を設定でき、そのなかに人数の制限を置くことが認められています。令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針(別紙1から別紙19)を全分野について確認すると、受入れ機関または事業所単位で人数の上限を条件としているのは介護分野と建設分野の2分野に限られます。
第1層(企業・事業所単位):介護分野と建設分野のみ。1社・1事業所が同時に受け入れられる人数の上限。
第2層(分野単位):全19分野に共通。分野ごとの受入れ見込数が、その分野に在留できる外国人の上限数として運用される。企業側で制御できないため、募集時期の判断に影響します。
介護分野|事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限
介護分野の分野別運用方針は、特定技能所属機関に対して特に課す条件として、「事業所で受け入れることができる1号特定技能外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすること」と定めています。これを受けた告示(平成31年厚生労働省告示第66号)では、1号特定技能外国人の数が当該事業所の日本人等の常勤の介護職員の総数を超えないこと、という基準として規定されています。
実務上の要点は、判定単位が法人ではなく事業所である点にあります。複数の施設を運営する法人であっても、法人全体の職員数で判断することはできず、外国人が実際に業務を行う事業所ごとに充足を確認します。この関係で、在留諸申請では「介護分野における業務を行わせる事業所の概要書」(分野参考様式第1-2号)の提出が求められ、受入れ後に従事する事業所が変わる場合は特定技能雇用契約変更の届出とあわせて同様式の添付が必要になります。
本部や大規模施設に常勤介護職員が集中している法人で、小規模事業所へ複数名を配属するケースは注意が必要です。配属先の事業所単位で日本人等の常勤介護職員数を超えれば、基準を満たさないものとして扱われます。配属計画は事業所ごとの職員数を確認したうえで組み立ててください。
なお、受入れ事業所は、介護福祉士国家試験の受験資格の認定において実務経験として認められる介護等の業務に従事させることができる事業所でなければなりません。人数枠の議論に入る前に、そもそも対象施設に該当するかを先に確認する順序になります。
介護の人数枠に算入できる職員・できない職員
上限の分母となるのは「日本人等の常勤介護職員」であり、この「等」の範囲は告示と運用要領で具体的に示されています。国籍要件と職種要件の二段構えで絞り込む形になります。
| 区分 | 人数枠の分母への算入 |
|---|---|
| 日本人の常勤介護職員 | 算入できる |
| 介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士 | 算入できる |
| 在留資格「介護」により在留する者 | 算入できる |
| 永住者・日本人の配偶者等など身分・地位に基づく在留資格の者、特別永住者 | 算入できる |
| 技能実習生 | 算入できない |
| EPA介護福祉士候補者 | 算入できない |
| 留学生 | 算入できない |
| 1号特定技能外国人本人 | 算入できない |
職種の面では、算定基準に含まれる介護職員は「介護等を主たる業務として行う常勤職員」を指します。運用要領は具体例として、介護施設の事務職員、就労支援を行う職員、看護業務を行う看護師・准看護師はこれに含まれないとしています。一方で医療機関については、看護師や准看護師の指導の下に療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)を行う診療報酬上の看護補助者と、その看護補助者の指導を同一病棟で行っている看護師・准看護師は算定基準に含まれると整理されています。
特定技能2号の受入れ対象は、介護分野を除く分野に設定されています。介護については専門的・技術的分野の在留資格「介護」が既に存在するためで、介護福祉士の資格取得によりそちらへ移行する経路が想定されています。移行後は在留資格「介護」の職員として、人数枠の分母に算入できる側に回ります。
建設分野|1号特定技能外国人の総数が常勤職員の総数を超えないこと
建設分野の人数枠は、国土交通大臣が認定する「建設特定技能受入計画」の認定要件として組み込まれています。告示(平成31年国土交通省告示第357号)第3条第3項第7号は、1号特定技能外国人の総数が常勤の職員の総数を超えないことを求め、この常勤の職員には1号特定技能外国人および技能実習生を含めないと括弧書きで明記しています。
運用要領は、この基準を置いた理由として、建設技能者は一つの事業所だけで働くわけではなく様々な現場に出向いて働くことが想定されるため、支援を要する外国人を監督者が適切に指導し育成するには一定の常勤雇用者が必要である点を挙げています。単なる数合わせではなく、現場ごとの指導体制を担保するための基準という位置づけです。
計画申請では、常勤の職員の数を明らかにする文書として、社会保険の加入状況が分かる書類の添付が求められます。名簿上の人数ではなく、社会保険の実態と整合する常勤職員数で審査される点は押さえておくべきところです。
一つの特定技能所属機関が保有できる認定受入計画は1つに限られます。既に有効な計画を持つ企業が別個の計画を新たに申請すると、人数枠の基準について不正の手段により認定を受けたとみなされ、計画の認定が取り消される可能性があります。新たに1号特定技能外国人を追加する場合は、新規申請ではなく変更申請で処理してください。
人数枠の対象は1号特定技能外国人です。建設特定技能受入計画の認定が求められるのは1号についてであり、2号特定技能外国人については、建設業法第3条第1項の許可、建設キャリアアップシステムへの登録、特定技能外国人受入事業実施法人またはこれを構成する建設業者団体への所属といった基準が別に定められています。
令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針では、この人数枠の規定が更新されました。特定技能1号で受け入れる外国人の数が、常勤の職員(外国人技能実習生、育成就労外国人および1号特定技能外国人を除く)の総数を超えないこととしたうえで、優良な育成就労実施者に該当する特定技能所属機関はこの限りでない、という例外が加えられています。
建設分野では1号・2号とも直接雇用に限られ、労働者派遣や建設業務労働者の就業機会確保の対象とすることはできません。違反した場合、出入国に関する法令に関し不正または著しく不当な行為を行ったものとして、以後5年間は特定技能外国人の受入れができなくなります。
また、職業安定法第32条の11により、建設業務に就く職業は有料職業紹介事業の取扱い対象から除かれています。株式会社TreeGlobalPartnersの有料職業紹介(許可番号 13-ユ-317879)は建設分野を取り扱いません。建設分野の在留資格申請や届出に関する手続は、グループ内の行政書士法人Treeが対応します。
一般分野の考え方|企業枠はなくても分野の上限がある
介護・建設以外の分野には、受入れ機関単位の人数制限が設けられていません。ビルクリーニング、工業製品製造業、飲食料品製造業、宿泊、農業、漁業、外食業といった分野では、常勤職員が数名の企業が同時に複数名を受け入れることも制度上は可能です。判断材料になるのは支援体制と現場の受入れ能力であって、法令上の人数枠ではありません。
ただし無制限ではありません。特定技能制度及び育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針は、分野別運用方針において原則として5年ごとの受入れ見込数を示すこととし、受入れ見込数は外国人受入れの上限数として運用すると定めています。分野の総枠が事実上のキャップとして働く構造です。
| 分野 | 1号特定技能外国人の受入れ見込数 |
|---|---|
| 工業製品製造業 | 19万9,500人 |
| 飲食料品製造業 | 13万3,500人 |
| 介護 | 12万6,900人 |
| 建設 | 7万6,000人 |
| 農業 | 7万3,300人 |
| 外食業 | 5万人 |
| ビルクリーニング | 3万2,200人 |
| 造船・舶用工業 | 2万3,400人 |
| 自動車運送業 | 2万2,100人 |
| 宿泊 / 漁業 | 各1万4,800人 |
| 物流倉庫 | 1万1,400人 |
| 自動車整備 | 9,400人 |
| 航空 | 4,900人 |
| 木材産業 | 4,500人 |
| リネンサプライ | 4,300人 |
| 鉄道 | 2,900人 |
| 林業 / 資源循環 | 各900人 |
いずれも令和6年度から令和10年度末までの5年間の数値で、19分野の合計は80万5,700人になります。なお航空分野と自動車運送業分野は育成就労の対象分野ではないため、分野全体の受入れ見込数がそのまま特定技能の枠となります。分野ごとの残枠は在留者数の推移によって変わるため、採用計画では「自社の枠」だけでなく「分野の枠」も見ておく必要があります。
雇用形態にも分野差があります。労働者派遣の形態が認められているのは農業分野と漁業分野に限られ、介護分野・建設分野をはじめ他の分野は直接雇用に限られます。人数枠がない分野でも、雇用形態の制約は個別に確認してください。
見込数を超えるとどうなるか|外食業分野で起きたこと
分野別運用方針は、所管大臣が在留者数や有効求人倍率などの指標により人手不足の状況を把握し、受入れ見込数を超えることが見込まれる場合その他必要とされる人材が確保されたと認められる場合には、法務大臣に対し一時的に在留資格認定証明書の交付停止の措置を求めることを定めています。根拠は入管法第7条の2第3項および第4項です。
この措置は実際に発動されました。外食業分野の特定技能1号の在留者数が令和8年2月末現在で約4万6千人(速報値)となり、受入れ上限である5万人を同年5月頃に超えることが見込まれたため、農林水産省と出入国在留管理庁は令和8年3月27日に「受入れ上限の運用について」を公表し、令和8年4月13日から在留資格認定証明書交付申請の一時停止措置に踏み切りました。
- 4月13日以降に受理した外食業分野の在留資格認定証明書交付申請は不交付
- 同分野への在留資格変更許可申請も原則として不許可
- 4月13日前に受理された申請は、審査のうえ受入れ見込数の範囲内で許可
- 現に外食業分野で特定技能1号として在留する方の申請(転職等に伴うもの)は通常どおり審査
- 特定活動(特定技能1号移行準備)の許可を受けて外食業分野の特定技能1号へ移行する方、技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を修了して移行する方は、受入れ見込数の範囲内で順次許可
- 在留期間更新許可申請は通常どおり審査
停止措置の主たる対象は在留資格認定証明書の交付、つまり海外から新規に呼び寄せるルートです。国内在留者の転職や在留期間更新は通常審査が続くため、影響の出方が採用ルートによって大きく異なります。分野の充足が進んでいる局面では、国内在留者からの採用に軸足を移す判断が現実的な選択肢になります。
参考として、特定技能在留外国人数は令和7年12月末現在で39万296人(1号・2号の合計、速報値)です。分野別では飲食料品製造業9万5,644人、介護6万7,871人、工業製品製造業5万7,576人、建設5万1,122人、外食業4万4,925人、農業3万9,234人と続きます。見込数と実績の差が、その分野の残枠のおおよその目安になります。
育成就労制度の人数枠との関係
令和9年(2027年)4月1日に施行された育成就労制度では、特定技能とは逆に、受入れ機関の常勤職員数に応じた人数枠が制度の基本設計に組み込まれています。技能実習の1号・2号・3号という区分が廃止されたことに伴い、人数枠は1年目から3年目までの育成就労外国人の合計に対する上限として運用されます。
| 常勤職員の総数 | 基本人数枠(一般) | 優良な育成就労実施者 |
|---|---|---|
| 301人以上 | 常勤職員総数の20分の3(15%) | 10分の3(30%) |
| 201人以上300人以下 | 45人 | 90人 |
| 101人以上200人以下 | 30人 | 60人 |
| 51人以上100人以下 | 18人 | 36人 |
| 31人以上40人以下 | 12人 | 24人 |
| 9人以上30人以下 | 9人 | 18人 |
| 2人 | 6人 | 7人 |
| 1人 | 3人 | 4人 |
優良な監理支援機関の監理支援を受け、かつ指定区域(地方)に住所がある優良な育成就労実施者については、基本人数枠の3倍まで拡大されます。常勤職員数を数える際に育成就労外国人と技能実習生は含めませんが、特定技能など他の在留資格の外国人は含めます。この点は建設分野の特定技能の人数枠と扱いが逆になるため、両制度を併用する企業は取り違えに注意が必要です。
介護分野と建設分野では、育成就労にも分野固有の上乗せ条件が課されます。介護分野は、事業所で受け入れることができる育成就労外国人を事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を上限とし、ケアの質の担保や適切な指導体制を確保できる人数にすることとされています。建設分野は、育成就労で受け入れる外国人の数が常勤の職員の総数を超えないこととし、主務省令の基準を満たす優良な育成就労実施者を例外としています。
受入企業が押さえる実務ポイント
採用計画を立てる段階でのチェック項目を整理します。人数の議論は、分野の確定と対象施設・許可要件の確認が済んでから行うのが手戻りの少ない順序です。
- 自社の分野に企業枠があるか確認する。介護分野と建設分野のみ受入れ機関・事業所単位の上限があり、他の17分野には設定されていません。
- 介護は事業所ごとに数える。配属先の事業所における日本人等の常勤介護職員の総数が上限で、法人全体の職員数では判断できません。
- 介護の分母は職種で絞られる。介護等を主たる業務として行う常勤職員に限られ、事務職員・就労支援職員・看護師・准看護師は含まれません。
- 建設は認定受入計画で管理する。常勤職員数は社会保険の加入状況が分かる書類で確認され、増員は変更申請で処理します。計画の重複申請は取消しリスクを伴います。
- 分野の残枠を意識する。受入れ見込数は分野ごとの上限として運用され、超過が見込まれれば在留資格認定証明書の交付が一時停止されます。
- 採用ルートを分散させる。交付停止措置が出ても、国内在留者の転職や在留期間更新は通常審査が続く扱いが取られています。
- 育成就労との併用は数え方が異なる。育成就労の人数枠では特定技能の外国人を常勤職員数に含めますが、建設分野の特定技能の人数枠では1号特定技能外国人を常勤職員から除きます。
在留資格の申請、支援計画の作成、建設特定技能受入計画の認定申請といった専門的手続は、TGPと連携する行政書士法人Treeが対応します。出入国在留管理庁への申請取次を含む行政書士業務は行政書士法人Treeが担うもので、株式会社TreeGlobalPartners自体が行うものではありません。人数枠の判定は在留諸申請の可否に直結するため、配属計画の段階から専門家と確認しながら進めることをおすすめします。
よくある質問
まとめ
特定技能には受入れ機関ごとの人数上限が原則として存在しません。出入国在留管理庁のQ&Aが明示するとおり、技能実習のような常勤職員数連動の枠は制度の基本設計に置かれておらず、判断材料は支援体制と現場の受入れ能力になります。
例外は介護分野と建設分野の2分野です。介護分野は事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限となり、分母に算入できるのは介護等を主たる業務として行う常勤職員に限られます。建設分野は建設特定技能受入計画の認定要件として、1号特定技能外国人の総数が常勤職員(1号特定技能外国人と技能実習生を除く)の総数を超えないことが求められます。
企業単位の枠がない分野でも、分野ごとの受入れ見込数が上限数として運用される点は共通です。基本方針は受入れ見込数を外国人受入れの上限数として運用すると定めており、超過が見込まれれば在留資格認定証明書の交付が一時停止されます。外食業分野で2026年4月13日から実施された措置が具体例です。
2027年4月に施行された育成就労制度では常勤職員数に応じた人数枠が設けられ、常勤職員数に特定技能の外国人を含める一方、育成就労外国人と技能実習生は含めません。建設分野の特定技能の枠とは数え方が逆になるため、両制度を併用する企業は算定を分けて管理する必要があります。
在留資格の申請、支援計画の作成、建設特定技能受入計画の認定申請といった手続は、グループ内の行政書士法人Treeが対応します。人数枠の判定は申請の可否に直結するため、配属先と配属人数を確定させる前の段階でご相談ください。
本記事は現時点(2027年6月)の出入国在留管理庁、厚生労働省および国土交通省の公表資料、令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針等に基づき、特定技能の受入れ人数枠について一般的な情報を整理したものです。制度・基準・運用は改正される場合があり、分野別の受入れ見込数や受入れ停止措置の状況は時点により変動します。最新かつ正確な取扱いは出入国在留管理庁の公表資料および専門家にご確認ください。