特定技能と身分系在留資格|永住・定住者採用との比較

外国人採用の選択肢は特定技能だけではありません。永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者という「身分系」の在留資格をもつ人材は、厚生労働省の集計で外国人労働者の約4分の1を占めており、就労できる業務に入管法上の制限がないという点で特定技能とは性質が大きく異なります。本記事では、両者の就労範囲・在留期間・企業側の義務がどこで分かれるのか、身分系人材を採用する際に企業が押さえるべき在留管理の勘所、そして特定技能から身分系へ移行する現実的な道筋までを、出入国在留管理庁および厚生労働省の公表資料に基づいて整理します。

「身分系在留資格」が指す4つの在留資格

入管法(出入国管理及び難民認定法)の在留資格は、大きく2つの系統に分かれます。別表第一に掲げられた在留資格は「本邦において行うことができる活動」によって定義され、特定技能、技術・人文知識・国際業務、技能実習などがここに含まれます。これに対して別表第二の在留資格は「本邦において有する身分又は地位」によって定義され、実務では身分系在留資格と呼ばれます。

出入国在留管理庁が公表する在留資格一覧表では、別表第二の4つが「身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)」として区分され、それぞれ次の該当例が示されています。

在留資格該当例(出入国在留管理庁の在留資格一覧表)
永住者永住許可を受けた者
日本人の配偶者等日本人の配偶者・実子・特別養子
永住者の配偶者等永住者・特別永住者の配偶者、我が国で出生し引き続き在留している実子
定住者日系3世、外国人配偶者の連れ子等

規模も無視できません。厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」(令和8年1月30日公表)によると、令和7年10月末時点の外国人労働者数2,571,037人のうち、「身分に基づく在留資格」は645,590人で全体の25.1%を占めます。同じ時点で「専門的・技術的分野の在留資格」は865,588人(33.7%)、そのうち特定技能は286,225人(前年比79,230人・38.3%増)でした。

統計から読み取れること

特定技能は前年比38.3%増と伸び幅が大きい一方、実数では身分系のほうがなお2倍以上の規模があります。人手不足の職場で「外国人採用=特定技能」と考えがちですが、母集団としては身分系のほうが厚い分野も少なくありません。

就労できる範囲がどこで分かれるか

両者の最大の違いは、従事できる業務の範囲です。

特定技能は分野と業務区分で縛られる

特定技能は、人材確保が困難な産業分野に限って即戦力を受け入れる仕組みとして平成31年4月に創設されました。従事できるのは特定産業分野に属する業務に限られ、分野の中でもさらに業務区分が定められています。令和8年1月23日の閣議決定を経た時点の特定産業分野は、介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環の19分野です(物流倉庫と資源循環の受入れは、上乗せ基準告示の公布・施行後に開始される予定とされています)。

個々の外国人がどの分野・どの業務区分で就労できるかは、法務大臣が交付する指定書によって特定されます。分野をまたぐ配置転換や、業務区分の外にある作業への恒常的な従事は、在留資格該当性の問題に直結します。

身分系は入管法上の職種制限がない

身分系在留資格について、出入国在留管理庁の制度概要資料は「これらの在留資格は在留中の活動に制限がないため、様々な分野で報酬を受ける活動が可能」と説明しています。製造ラインでも、事務でも、接客でも、入管法を理由に配置を制限される場面はありません。専門的・技術的分野に該当しない業務にも就けるため、特定技能の対象外である業種・業務でも採用の選択肢になります。

配置転換の扱いに要注意

特定技能外国人を、繁忙を理由に別分野の業務へ継続的に回すことは制度上想定されていません。同じ職場に身分系と特定技能の従業員が混在する場合、シフト設計の段階で業務区分の線引きを明確にしておく必要があります。

特定技能と身分系の制度要件を並べて比較する

制度上の要件を項目ごとに並べると、両者の性格の違いがはっきりします。

項目特定技能1号特定技能2号身分系(永住者・定住者等)
就労できる業務特定産業分野の指定された業務区分特定産業分野の熟練技能を要する業務入管法上の制限なし
在留期間3年を超えない範囲で法務大臣が指定する期間ごとの更新、通算上限5年(相当の理由がある場合は6年)3年・2年・1年・6か月ごとの更新(更新回数に制限なし)永住者は無期限。定住者は5年・3年・1年・6月等、日本人の配偶者等は5年・3年・1年・6月
技能・日本語の要件技能試験と日本語試験(A2.2相当以上)に合格。技能実習2号を良好に修了した者は免除特定技能2号評価試験等。日本語はB1相当以上(当該日本語能力水準に係る省令は令和9年4月1日施行)制度上の要件なし(個人差が大きい)
家族の帯同基本的に認めない要件を満たせば配偶者・子の帯同が可能身分関係に応じた在留資格で帯同可能
支援計画受入れ機関または登録支援機関による支援の対象支援の対象外制度上の支援義務なし
入管への届出随時届出・定期届出あり随時届出・定期届出あり特定技能固有の届出なし
受入れ見込数の上限分野ごとに設定(全分野で805,700人・令和11年3月末まで)設定なし設定なし

特定技能1号の在留者数は404,527人、2号は12,420人(いずれも令和8年3月末現在の速報値)で、2号への移行は限定的です。5年という通算上限をどう乗り越えるかは、特定技能で採用した人材を長期戦力化するうえで避けて通れない論点になります。

受入企業に発生する管理業務の差

採用後に企業側が負う手続の量も、両者ではかなり違います。

特定技能所属機関に課される義務

特定技能で外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、雇用契約の内容が適切であること、機関自体が適切であること、支援体制と支援計画が適切であることという基準を満たす必要があります。報酬額が日本人と同等以上であることは、雇用契約の基準の代表例です。受入れ後も次のような対応が続きます。

届出の不履行や虚偽の届出は罰則の対象とされ、指導・改善命令の対象にもなります。支援の全部を外部委託する場合、委託先は登録支援機関に限られます。

身分系採用で必要になる手続

身分系在留資格の人材については、これらの特定技能固有の義務は生じません。企業が行うのは、採用時の在留カード確認と、労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出が中心です。届出の対象は特別永住者と在留資格「外交」「公用」の方を除くすべての外国人労働者で、雇入れ時と離職時にハローワークへ提出します。この届出を行った場合、出入国在留管理庁への届出は不要です。

身分系人材を採用するときの注意点

手続が軽い分、別の論点が浮かび上がります。

在留期限の管理は永住者でも必要

永住者の在留期間は無期限ですが、在留カードそのものには有効期間があります。2026年6月13日までに交付された永住者・高度専門職2号の在留カードの有効期間は、交付の日から7年(16歳未満の方は16歳の誕生日まで)とされています。定住者や日本人の配偶者等は在留期間の更新が必要で、身分関係が変動した場合には従前の在留資格での更新が認められないこともあります。採用時点だけでなく、定期的な確認をルール化しておくと取りこぼしを防げます。

技能・日本語の水準は個別に見極める

特定技能では技能試験と日本語試験による水準確認が制度に組み込まれていますが、身分系在留資格にはそうした仕組みがありません。日本生まれ・日本育ちで日本語に不自由がない人材から、来日間もない人材まで幅が広いため、選考段階での実務的な見極めと、入社後の教育設計が重要になります。

就労制限がないことは定着面では両刃

職種の制約がないということは、本人にとって転職先の選択肢も広いということです。特定技能のような分野・業務区分の制約が働かないため、処遇や職場環境の改善、キャリアパスの提示といった一般的な人事施策がそのまま定着率に響きます。

令和6年改正入管法による永住許可制度の適正化

令和6年6月21日公布の改正入管法(法律第60号)では、永住許可の要件が一層明確化され、その基準を満たさなくなった場合等が在留資格の取消事由として追加されました。出入国在留管理庁のQ&Aによれば、対象となるのは入管法上の義務を遵守しない場合、故意に公租公課の支払をしない場合、窃盗・詐欺・恐喝・殺人などの一定の重大な刑罰法令違反があった場合とされ、うっかりした軽微な違反や、病気・失業による支払困難は対象外と説明されています。取消事由に該当しても直ちに強制的な出国となるわけではなく、多くの場合は「定住者」など別の在留資格への変更が想定されています。

特定技能から身分系へ移る道筋

特定技能で受け入れた人材を長く戦力にしたいと考えるとき、身分系在留資格への移行は現実的な選択肢のひとつです。ただし、制度の設計を正確に理解しておく必要があります。

永住許可の要件と特定技能1号の扱い

永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)は、入管法上の要件として、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることを挙げています。3つ目の国益適合要件の中で、在留期間について次のように定められています。

ここで押さえるべきは、特定技能1号の在留期間は5年要件に算入されないという点です。一方、特定技能2号は除外されておらず、在留期間更新の回数にも制限がないため、永住を視野に入れるなら2号への移行が軸になります。なお、日本人の配偶者・永住者の配偶者については、実体を伴う婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上本邦に在留していることという特例が示されています。

実際の移行状況

出入国在留管理庁は、制度初期に特定技能1号を許可された人の追跡データを公表しています。令和2年に初めて特定技能1号を許可された14,366人について令和8年1月23日現在の在留状況を見ると、特定技能2号が2,056人(14.3%)、特定技能1号が463人(3.2%)、不法残留が88人(0.6%)で、「その他の在留資格」の内訳には居住資格432人が含まれています。令和元年に許可された1,625人でも、出国等が1,177人(72.4%)と最も大きく、特定技能2号は185人(11.4%)にとどまりました。

実務上の含意

身分系への移行は制度的に閉ざされてはいないものの、割合としては限定的です。特定技能で採用した人材の定着を図るなら、2号への移行可否を分野・業務区分の段階から逆算して設計するほうが確実性が高くなります。工業製品製造業分野では、機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の区分のみが2号へ移行できる点にも注意が必要です。

在留カードの確認と不法就労のリスク

身分系人材の採用は手続が軽い反面、確認を省略してよいという意味ではありません。出入国在留管理庁は、外国人を雇用する際に在留カードの記載を確認するよう求めています。

確認の起点は、在留カード表面の「就労制限の有無」欄です。記載は「就労制限なし」「就労不可」「一部就労制限あり」のいずれかで、身分系在留資格の方は「就労制限なし」と表示されます。「一部就労制限あり」の場合は、①在留資格に基づく就労活動のみ可、②指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可(在留資格「技能実習」)、③指定書により指定された就労活動のみ可(在留資格「特定活動」)のいずれかが記載され、②③では法務大臣が個々に指定した活動が記載された指定書の確認が必要です。「就労不可」の場合でも、裏面の資格外活動許可欄に許可の記載があれば、時間や場所の制限の範囲内で就労できます。

偽造在留カードへの対策として、出入国在留管理庁は在留カード等番号失効情報照会のページを設けています。ただし照会結果は在留カード等の有効性を証明するものではないため、券面の偽変造防止対策のポイントもあわせて確認することが求められています。

確認を怠った場合の責任

不法就労させたり不法就労をあっせんした者には、入管法第73条の2の不法就労助長罪が適用されます。当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れないとされています。令和6年の改正入管法では、この罰則が拘禁刑3年以下または罰金300万円以下から、5年以下または500万円以下(併科可)へ引き上げられました。また、ハローワークへの外国人雇用状況の届出を怠ったり虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金の対象となります。

2027年以降の制度環境と使い分けの考え方

2027年は外国人雇用の制度環境が大きく動く年です。令和6年6月21日公布の改正法(法律第60号)により、育成就労制度が令和9年(2027年)4月1日から運用開始となり、技能実習の在留資格は廃止されました。育成就労産業分野は、特定産業分野から自動車運送業および航空を除いたものと整理されています。施行日より前に認定を受けた技能実習計画に基づいて技能実習を行っている人は、施行日以降も引き続き「技能実習」の在留資格のまま技能実習を継続できる経過措置が設けられています。

この環境で、特定技能と身分系をどう使い分けるかは、募集ポジションの性質から逆算するのが実務的です。

CASE 01
特定技能が向く場面

特定産業分野に該当し、業務区分が明確で、一定の技能水準を担保したうえで計画的に複数名を確保したい場合。海外からの直接採用や、育成就労からの移行を前提とした人材パイプラインを組みたい場合。

CASE 02
身分系が向く場面

特定産業分野に該当しない業務、複数業務を横断する役割、将来的な管理職登用を視野に入れたポジション。分野・業務区分の制約を受けずに配置したい場合。

CASE 03
併用する場面

現場の中核を身分系人材が担い、増員部分を特定技能で補う構成。両者で適用ルールが異なるため、就業規則・シフト設計・在留管理の運用を分けて整理しておく必要があります。

グループ体制について

株式会社TreeGlobalPartnersは、外国人の有料職業紹介(許可番号 13-ユ-317879)を担っています。在留資格の申請取次や1号特定技能外国人支援などの手続面は、グループ内の行政書士法人Treeが対応します。採用と手続を分けずに、受入れ計画の段階から一体で設計できる体制です。

よくある質問

永住者や定住者を採用する場合、出入国在留管理庁への届出は必要ですか。
身分系在留資格の外国人を雇用する場合、特定技能所属機関に課される随時届出・定期届出のような出入国在留管理庁への届出義務はありません。一方で、労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出は、特別永住者および在留資格「外交」「公用」の方を除くすべての外国人労働者が対象です。雇入れ時と離職時にハローワークへ届け出る必要があり、届出を怠ったり虚偽の届出をした場合は罰則の対象となります。
身分系在留資格の人に、特定技能の対象分野以外の仕事をさせても問題ありませんか。
問題ありません。出入国在留管理庁は、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者を「身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)」と整理しており、これらの在留資格は在留中の活動に制限がないため、様々な分野で報酬を受ける活動が可能とされています。特定技能のような分野・業務区分の縛りはなく、配置転換や職種変更も入管法上の制約を受けません。ただし労働基準法をはじめとする労働関係法令は当然に適用されます。
特定技能1号で5年間働いた外国人は、そのまま永住許可を申請できますか。
永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)では、原則として引き続き10年以上日本に在留し、そのうち就労資格または居住資格をもって引き続き5年以上在留していることが求められます。この就労資格から「技能実習」および「特定技能1号」は除かれているため、特定技能1号の在留期間は5年要件には算入されません。特定技能2号は除外されておらず、在留期間更新の回数に制限もないため、永住を視野に入れる場合は2号への移行が現実的な選択肢となります。
永住者には在留期限がないので、在留カードの管理は不要ですか。
在留期間は無期限ですが、在留カード自体には有効期間があります。2026年6月13日までに交付された永住者・高度専門職2号の在留カードの有効期間は、交付の日から7年(16歳未満の方は16歳の誕生日まで)です。有効期間の更新申請は本人の義務であり、企業側も採用時と定期確認の際に有効期間満了日を把握しておくことが実務上重要です。定住者や日本人の配偶者等には5年・3年・1年・6月などの在留期間があり、更新手続が必要です。
特定技能と身分系在留資格では、企業側の制度対応コストはどう違いますか。
特定技能1号では、支援計画の作成・実施、分野別協議会への加入、定期届出および随時届出、市区町村への協力確認書の提出といった制度固有の対応が必要です。支援を外部委託する場合、委託先は登録支援機関に限られます。身分系在留資格ではこれらの義務は生じず、在留カードの確認と外国人雇用状況の届出が中心となります。一方で身分系は募集母集団の確保や、就労制限がないことを前提とした定着施策が課題になります。

まとめ

身分系在留資格は入管法別表第二の4資格——永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者を指します。出入国在留管理庁は「活動制限なし」と整理しており、特定技能のような分野・業務区分の縛りを受けずに配置できる点が最大の特徴です。厚生労働省の集計では令和7年10月末時点で645,590人、外国人労働者全体の25.1%を占めます。

企業側の管理負担は明確に異なります。特定技能1号では支援計画の実施、随時・定期の届出、分野別協議会への加入、協力確認書の提出が必要で、届出違反は罰則の対象です。身分系ではこれらの義務が生じず、在留カード確認と外国人雇用状況の届出が中心になります。ただし在留カードの確認義務は共通で、確認を怠れば不法就労助長罪のリスクが残ります。

特定技能から身分系への移行は制度上可能ですが、道のりは平坦ではありません。永住許可ガイドラインの5年要件から特定技能1号が除外されているため、長期戦力化を狙うなら特定技能2号への移行可否を分野・業務区分の選定段階から織り込んでおく必要があります。制度初期の追跡データでも、身分系(居住資格)への移行は限定的な水準にとどまっています。

2027年4月からは育成就労制度が動き出しました。技能実習の在留資格は廃止され、育成就労から特定技能1号、さらに2号へという育成ルートが制度の中心線になります。特定技能で計画的に人材を育てるのか、身分系で職種を限定せず配置するのか、両者を併用するのか——募集ポジションの性質から逆算して設計することが、受入れ計画の出発点になります。

※ 本記事は、出入国在留管理庁および厚生労働省が公表する資料に基づき、特定技能と身分系在留資格の違いについて一般的な情報を整理したものです(統計値・改訂日は本文中に記載した時点のものです)。制度・運用・統計は改正や更新により変わる場合があり、個別事案への適用は条件により異なります。最新かつ正確な取扱いは出入国在留管理庁の公表資料および専門家にご確認ください。