特定技能外国人の住居確保|企業の義務と支援3パターンを解説

「外国人が賃貸を借りられない」——特定技能外国人を受け入れた企業の担当者から最もよく聞く悩みの一つです。外国人というだけで入居審査に落ちる、保証人が見つからない、そもそも不動産会社の窓口で断られるという事例は今も多く報告されています。

しかし企業側の義務を正確に理解している担当者は少なく、「住居を用意しなければならない」という誤解と「何もしなくてよい」という放置、両極端の対応が混在しているのが実態です。正確には、企業には住居の「提供義務」はなく、「支援義務」があります。この区別が、法令違反リスクを左右する重要なポイントです。

本記事では、義務の根拠・支援の3パターン・費用ルール・外国人が賃貸を借りにくい理由と対策・住居確保後の行政手続きまで、実務に必要な情報を整理します。

特定技能の住居支援は「提供義務」ではなく「支援義務」——技能実習との違い

技能実習制度では、実習実施者が宿泊施設を確保して提供することが義務付けられていました。これに対して特定技能制度は設計思想が異なり、外国人を「単純労働者」ではなく一定の専門性・技能を持つ「特定の分野の労働力」として位置付けています。そのため住居についても、企業が直接提供するのではなく、外国人本人が自ら契約できるよう「支援する」という枠組みになっています。

支援計画10項目における「住居確保」の位置づけ(第3項)

特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(出入国管理及び難民認定法第2条の5に基づく)は、受入機関が特定技能1号外国人に対して実施しなければならない義務的支援を10項目定めています。その第3項が「住居確保・生活に必要な契約支援」です。

具体的には以下の支援が求められます。

  • 本人が求める場合、住居の確保に係る支援(物件の紹介・内見同行・家賃債務保証会社の紹介、連帯保証人引き受けなど)
  • 不動産賃貸借契約の締結に係る支援(外国語での説明、書類作成の補助など)
  • 銀行口座の開設・携帯電話契約などの生活に必要な契約手続きの補助

なお、「本人が求める場合」という条件はあくまでも本人の意向に配慮した表現であり、企業は支援体制を整えておく義務があります。外国人本人が「不要」と申し出た場合を除き、支援を怠ると法令違反となります。

支援計画への記載義務と不実施時のリスク

住居確保支援の内容は、在留資格申請時に提出する「1号特定技能外国人支援計画書」に具体的に記載しなければなりません。計画書に記載した支援を実施しない場合、または計画書に虚偽の内容を記載した場合は、受入機関の欠格事由に該当し、特定技能外国人の受入れが取り消されることがあります。

支援状況は年1回以上の定期届出(特定技能外国人に関する各種届出)で報告する義務もあります。記録の整備を怠ると指導・是正の対象になりますので注意が必要です。

企業が選べる住居支援の3パターン——メリット・費用・向いている企業規模

実務上、企業が取り得る住居支援の方法は主に3つです。それぞれに異なる費用構造とリスクがあります。

パターン①自社寮・社宅の提供

企業が所有または長期賃貸している物件を「社宅・寮」として特定技能外国人に提供するパターンです。既存の社宅設備がある製造業・食品加工業・農業法人などに多く見られます。

家賃は実費の範囲内で本人から徴収できますが、後述する7.5㎡以上の基準を満たしていることが前提です。築年数が古く面積基準を満たせない物件は使用できません。また外国人本人に対して過大な家賃を請求することは禁止されています。

パターン②企業が借り上げて提供(借り上げ社宅)

企業が不動産会社と賃貸借契約を結び、その物件を特定技能外国人に転貸するパターンです。外国人が賃貸を借りにくい問題を根本的に回避できるため、住居確保の確実性が最も高い方法です。

費用は「月額賃料+管理費・共益費」を入居者数で割った額が、本人から徴収できる上限です。敷金・礼金・保証料・仲介手数料はすべて企業負担となります。

パターン③本人契約のサポート(情報提供・保証引き受け)

外国人本人が自ら賃貸契約を結ぶことを支援するパターンです。企業は物件情報の提供、内見同行、書類の翻訳補助、連帯保証人の引き受けなどを行います。外国人本人が直接契約者となるため、家賃は本人が全額負担します。

ただし、外国人であることを理由に審査を断られるリスクがあるため、後述する多言語対応保証会社の活用が事実上必須になります。

パターン メリット 企業の費用負担 向いている企業規模
①自社寮・社宅の提供 管理が一元化しやすい。既存設備を活用できる 設備維持費・修繕費。家賃は実費回収可 大手・中堅(既存寮あり)
②借り上げ社宅 賃貸審査の問題を回避できる。柔軟に物件を選べる 敷金・礼金・保証料・仲介手数料(全額)。家賃は実費÷人数まで回収可 中小〜中堅(寮なし)
③本人契約サポート 家賃は本人全額負担。企業の初期費用が最小 保証人引き受けに伴うリスク。内見同行等の工数 小規模・1〜2名採用

実務では①と②を組み合わせるケースが多く、既存の社宅に空きがある場合は①、ない場合は②を選択するという運用が一般的です。

知らないと違反になる住居の基準と費用ルール

居室の広さは1人あたり7.5㎡以上——ロフト・収納は算入不可

企業が住居を提供または紹介する場合、1人あたりの居室面積が7.5㎡以上であることが省令で定められています。この面積はロフト・収納スペース・廊下・浴室・トイレを含みません。実際に生活する居室部分のみで7.5㎡を確保する必要があります。

なお、技能実習制度では1人あたり4.5㎡以上とされていたため、同じ物件でも特定技能では基準を満たさないケースがあります。既存の社宅・寮を流用する際は、必ず面積を再確認してください。

家賃の徴収上限——「実費÷人数」以内が絶対ルール

企業が外国人本人から徴収できる家賃には明確な上限があります。

  • 借り上げ物件の場合: (月額賃料+管理費・共益費)÷ 入居する特定技能外国人の人数 以内の額
  • 自社保有の場合: 近隣の同等物件と比較して不当に高くない額(実費の範囲内)
  • 水道光熱費・Wi-Fi料金: 実費。ただし事前に書面(雇用条件書等)で本人の同意を得ることが必要

「光熱費込みで少し高めに設定する」といった運用は、実費を超えた部分が過大徴収として問題になります。書面による明示と同意取得を徹底してください。

敷金・礼金・保証料は企業負担——外国人への請求は禁止

借り上げ物件の場合、以下の費用はすべて企業負担となり、特定技能外国人本人への請求は禁止されています。

費用項目 本人への請求 備考
敷金・保証金 禁止 全額企業負担
礼金 禁止 全額企業負担
家賃保証会社の保証料 禁止 全額企業負担
仲介手数料 禁止 全額企業負担
月額家賃(実費÷人数以内) 請求可 上限を超えた部分は請求不可
水道光熱費・Wi-Fi(実費) 請求可 書面による事前同意が必要

「敷金・礼金は後から本人負担にする」「保証料を給与から天引きする」といった対応は、法令違反に当たるだけでなく、外国人労働者からの不信感・離職リスクにも直結します。

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外国人が賃貸を借りにくい理由と企業が取るべき対策

入居拒否・言語バリア・保証人問題の実態

外国人が賃貸住宅を探す際に直面する主な障壁は以下の5点です。

  • 入居拒否: 外国人であることのみを理由とした入居拒否は住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律、2025年10月改正施行)では禁止の方向で整備が進んでいますが、実態として断られるケースは依然として少なくありません
  • 言語バリア: 重要事項説明・賃貸借契約書が日本語のみで、外国人が内容を理解できないまま署名させられるトラブルが起きています
  • 保証人の確保困難: 日本国内に保証人となれる親族・知人がいないケースがほとんどです
  • 書類準備の困難: 在留カードの提示義務・収入証明の形式が日本人と異なり、不動産会社が対応を知らないことがあります
  • 初期費用の高さ: 敷金・礼金・保証料・仲介手数料を一括で負担できない場合があります(特定技能の場合は前述のとおり企業負担が原則)

多言語対応保証会社の活用(国土交通省の登録リスト)

国土交通省は、外国人の言語対応サポートを行っている登録家賃債務保証業者の一覧を公開しています。多言語での対応が可能な保証会社を通じることで、外国人入居者の審査通過率が大幅に改善されます。

一覧は国土交通省「家賃債務保証業者登録制度」のページで確認できます。登録業者の中から多言語対応欄に「〇」がついている業者を選ぶことで、外国人入居に伴う言語面の障壁を軽減できます。

企業が連帯保証人を引き受ける場合の注意点

パターン③(本人契約サポート)を選択し、企業が連帯保証人を引き受ける場合は、以下の点に注意が必要です。

  • 民法上の責任: 連帯保証人は主債務者(特定技能外国人本人)と同等の責任を負います。家賃滞納・原状回復費用が発生した場合、企業が全額負担を求められる可能性があります
  • 退職・帰国後のリスク: 本人が離職・帰国しても、賃貸借契約の残存期間中は連帯保証責任が続く場合があります。契約解除条項を事前に不動産会社と調整しておくことが重要です
  • 保証の上限額設定: 2020年施行の改正民法(民法465条の2)により、個人が連帯保証人となる場合は契約書に「極度額」を明記しなければ無効となります。企業が法人として保証する場合は適用外ですが、契約内容の確認は必要です

これらのリスクを考慮すると、本人契約サポートよりも借り上げ社宅方式(パターン②)の方が企業にとってコントロールしやすい場合も多くあります。

住居確保後に必要な行政手続き

転入届(住民登録)は入居から14日以内

特定技能外国人が新居に入居した後、入居日から14日以内に市区町村役場への転入届(住民基本台帳法に基づく住民登録)が必要です。この期限を過ぎると、住民基本台帳法第52条により5万円以下の過料の対象となります(2025年改正で20万円以下の罰金規定に変更予定という議論もありますので最新情報を確認してください)。

外国人本人が手続きの意味を理解していないケースがあるため、受入機関が入居日・手続き先・持参書類(在留カード・パスポート)を事前に案内しておくことが重要です。この案内も義務的支援の一環として支援計画に記載しておくとよいでしょう。

在留カード記載事項変更届の提出

住所が変わった場合、外国人本人は転居後14日以内に市区町村へ転入届を行うと同時に、在留カードの住所欄も更新されます(市区町村での転入届手続きと連動)。ただし、旧住所から新住所へ移る際に「転出届」→「転入届」の流れを正確に踏んでいない場合、在留カード記載の住所と実際の住所がずれるトラブルが起こります。

在留カードの住所と住民票の住所に不一致が生じると、在留資格更新申請や各種行政手続きに支障をきたす場合があります。企業の担当者は本人の手続き完了を確認し、必要に応じて同行サポートを行ってください。

詳細な手続き案内は出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領・各種様式等」でも確認できます。

住居支援を登録支援機関に委託するメリットと費用相場

委託できる業務の範囲

受入機関(企業)は、義務的支援10項目の全部または一部を登録支援機関に委託できます。住居確保支援に関しては、以下の業務を委託することが可能です。

  • 物件の探索・紹介・内見同行
  • 賃貸借契約書の翻訳・説明補助
  • 家賃債務保証会社の選定・申込み補助
  • 転入届・住民登録手続きへの同行
  • 生活オリエンテーション(住居ルール・ごみ出しの説明等)

なお、登録支援機関に「支援の全部」を委託した場合は、受入機関自身が義務的支援の基準を満たす体制を持っていなくても受入れが可能になります。担当者の工数を大幅に削減できるという点で、初めて特定技能を受け入れる中小企業には特に有効です。

委託費用の相場(月額平均2〜3万円程度)

登録支援機関への支援委託費用は、月額平均約2〜3万円程度が相場です(特定技能外国人1人あたり)。価格帯は機関によって異なりますが、支援内容・対応言語・緊急時対応の有無で費用は変わります。

グループ内の行政書士法人Treeでは、登録支援機関として月額9,800円(税抜)/人〜で支援業務を受託しています。在留資格申請との一体対応が可能な点もメリットです。

なお、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース、厚生労働省)では、住居の賃貸借契約締結支援や多言語対応の費用を含む就労環境整備にかかった費用の最大2/3(上限72万円)が助成される制度があります。活用を検討する価値があります。

よくある質問

Q. 特定技能外国人の住居確保は企業の義務ですか?

A. 「住居そのものを提供する義務」はありませんが、住居確保の「支援義務」があります。義務的支援計画の第3項「住居確保・生活に必要な契約支援」として、企業(または委託先の登録支援機関)が不動産紹介・内見同行・保証人引き受けなどの支援を行うことが法令上義務付けられています。支援を実施しない場合は在留資格の取り消しリスクがあります。

Q. 特定技能外国人の住居は何平方メートル以上必要ですか?

A. 1人あたり7.5㎡以上の居室面積が必要です。ロフトや収納部分は面積に算入できません。技能実習制度(旧: 1人4.5㎡以上)と比べて広い基準が設けられているため、既存の社宅・寮を流用する際は必ず再確認が必要です。

Q. 特定技能外国人に住居を提供する場合、家賃はいくらまで請求できますか?

A. 企業が借り上げた物件の場合、「月額賃料+管理費・共益費の合計を入居者数で除した額」以内が上限です。敷金・礼金・保証料・仲介手数料は全額企業負担となり、外国人本人への請求は禁止されています。水道光熱費・Wi-Fi料金は実費を請求できますが、書面による事前同意が必要です。

Q. 外国人が賃貸契約できないときはどうすればよいですか?

A. 企業が賃貸借契約の契約者となり転貸する「借り上げ社宅方式」が最も確実です。入居者が外国人であることを理由に拒否されにくくなります。また国土交通省が公開している「外国人の言語対応サポートを行っている登録家賃債務保証業者一覧」を活用することで、多言語対応の保証会社を通じた審査通過率が向上します。

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※ 本記事の内容は2026年3月時点の入管法令・住宅関連法規に基づきます。制度・基準は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。